殻付き牡蠣の市場拡大を 新たな産地も誕生 SEAPAジャパン 吉本剛宏社長に聞く

現在、主流のむき身から、殻付き牡蠣の市場拡大を視野に、オーストラリアのシングルシード養殖法を日本国内に広げる狙いで3年前に設立されたSEAPAジャパン(大阪市)。コロナ禍で飲食店の苦戦が続く一方、殻付き牡蠣の消費は多様化が進み、輸出市場の拡大も見込まれる。生産者にとっても効率的かつ、差別化の図られる牡蠣が生産できる同養殖法への関心は高まっており、新たに生産を始める若手も増えている。「これまで産地でなかったところが、今後新たな産地になる可能性は大きい」と語る吉本剛宏社長に話を聞いた。

――コロナ禍は牡蠣の養殖産業にどのような影響を及ぼしましたか。

吉本 飲食業に大きな打撃を与え、生産者にも多大な影響が及んだ。飲食店だけでなく観光関連の得意先を持つ生産者も多く、現在も厳しい状況が続いている。

その中で、クラウドファンディングの支援を受け飲食などに卸せなかった産物を販売したり、オンラインを利用し消費者に直接提供したりと、何とかして苦境を乗り越える動きもあった。

また、アフターコロナを見据え、差別化ができる品質のものを効率的に生産していきたいと考える生産者が増えた。厳しい環境ではあるが、シングルシード養殖への関心が高まっているのを感じる。若い人たちを中心に新しく始めようとする動きも見られる。

――殻付き牡蠣の需要動向はどのようになっていますか。

吉本 2015年頃、オイスターバーの店数がピークを迎え成熟期に移行すると、その後は裾野が広がり一般の居酒屋、イタリアンレストランなどへ向け殻付きが広がってきていた。

消費者にもただ大きいだけでなく、小さくても味が良く凝縮され、一口で食べられるものを楽しむ動きが、特に牡蠣好きと言われる人たちの間で広がってきた。専門店ではシングルシード養殖の認知度が増し、明確にそれで生産した牡蠣を求める声も強まっている。

――消費志向の変化がシングルシードの牡蠣にとって、追い風になっているということですね。

6月に開催したオンライン交流会(SEAPAジャパン)
6月に開催したオンライン交流会(SEAPAジャパン)

吉本 それだけでなく生産上のメリットも大きい。従来の養殖法は手間と人手がかかり、現場では人員不足が大きな課題となっている。その解決策の一つとして、シングルシード養殖があると考えている。

もう一つ挙げられるのが、輸出を伸ばしたいと考える生産者が増えていることだ。シングルシードの牡蠣は育成中、鍛えられて強くなるので、従来のものより生存期間が長く、海外への輸送に耐えることができる。香港やベトナム、タイなど東南アジアのほか、ロシアなどでも日本のシングルシードの牡蠣を求める市場が広がり始めた。日本は世界第4位の牡蠣生産量を誇る。現在、殻付きの割合は2割程度と推測され、シングルシード養殖の伸びしろはまだまだ大きい。

初めて牡蠣を養殖するという漁業者もいる。海の環境が変わり、従来の産物を生産するのが困難なケースが出ており、リスクヘッジの新しい柱として牡蠣に興味を持つ人が増えている。インフラが軽微で初期投資が抑えられ、エサもやらなくてよいので、ほかの魚介類に比べ手間がかからない。これまで牡蠣の産地ではなかったところが、今後産地になる可能性も大きい。

――現状では、飲食業界はコロナ禍により苦戦が続いています。新たな市場開拓の見通しは。

吉本 この10年で殻付き牡蠣の消費は広がり、多様化している。良い品質のものを作れば、それが市場を形成すると考えている。当社を設立し最初から取り組んでいるのは、生産者同士のつながりを作ること。一次産業で新しいことに挑戦する時、生産者が孤独になりうるので、全国レベルでの仲間づくりが大事だと考えた。「シングルシード牡蠣ネットワーク」として継続している。単に資材を売るのではなく、生産者の知識や経験、悩みなどを共有する場を提供していく。

当社としては水産を進化させようとする生産者にとって何が有効かを見極め、ほかの先端の養殖資材を輸入・提供したり、他分野の企業と組んでマーケティングなどのコンサルサービスを提供したりと、新しいことも含めサポートし続けていきたい。

殻付き牡蠣の市場拡大を 新たな産地も誕生 SEAPAジャパン 吉本剛宏社長に聞くは食品新聞 WEB版(食品新聞社)で公開された投稿です。

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