森林とコーヒー生産量拡大へ UCCのサステナビリティ活動 品質コンテストなど通じ生産国と協働
2021年10月15日 12時05分食品新聞
次世代教育でも脚光
UCCグループは、専門部隊がコーヒー生産国に現地入りして、環境と調和した持続可能なコーヒー生産に取り組んでいる。取材に応じたUCCホールディングス執行役員サステナビリティ推進室長兼UCC上島珈琲取締役副社長の里見陵氏は、ユニークな活動の一つである「生産国との協働」の好例として、JICA(国際協力機構)とともに活動している「ベレテ・ゲラ・フォレスト森林保全プロジェクト」を挙げる。
UCCによると近年、エチオピアでは急激な人口増や森林伐採などで森林地帯が国土の35%から11%程度まで減少して危機的状況にある。JICAは森林生態系保全のため03年に同プロジェクトを立ち上げ、UCCはJICAからの依頼を受けて11年から現地で技術指導に当たっている。

「コーヒーの源流であるエチオピアで、森林保全と生産者が収入を得られることの両方を紐付けて、UCC上島珈琲の農事調査室の専門部隊が深く関わり、森林の保全にまで取り組んでいる」と里見氏は説明する。
活動の効果は如実に現れ、ベレテ・ゲラ保護区の年間森林減少率の改善や農家の収入改善に寄与している。これに伴いコーヒー生産量も増加し、日本でもレインフォレスト・アライアンス認証の「エチオピアモカワイルド ベレテ・ゲラ」の製品名で出回っている。

「生産国の課題を解決して消費国で製品として販売する。まさに持続可能な取り組みということで、JICA様からも森林保全に非常に効果が高いとのご評価をいただいている」と語る。
生産国との協働と並ぶサステナビリティのユニークな活動としては「コーヒーの価値創造」があり、コーヒーアドバイザーの資格を持つ社員らを通じて国内で消費者啓発を行っている。
近年引き合いが強まっているのが、中学生・高校生・大学生を対象としたオンラインセミナーによる次世代教育。コーヒーから気候変動をはじめとするSDGsの課題を考えてもらう内容となっており、好評を博しているという。
引き合いが強まっている理由については「SDGsを伝えるのにコーヒーが分かりやすいというお声をいただいている。当社のHPをご覧になられてご連絡いただいているほか、国連食料システムサミットへの参画など関連省庁との連携も大きい」とみている。受講者数は20年の224人から21年は倍増する見通しとなっている。

環境面の喫緊の課題として、気候変動・社会問題・サステナビリティの意識の低さ――の3つを挙げ、その改善に貢献すべく取り組んでいく。「HPに掲げている定性的な目標に加えて、「温室効果ガスをいつまでにどれくらい減らすのか」「いつカーボンニュートラルを達成するのか」といった定量的な目標を盛り込んだビジョンを21年内に発表できるように策定している。ビジョンでは、気候変動対策と責任ある調達を柱に基本的にコーヒーで世の中にポジティブな変化を生み出す内容を考えている」との考えを明らかにする。
UCCホールディングスは、20年1月にサステナビリティ推進室を新設。これにより、各事業会社が行っているサステナビリティ活動の情報を一元管理。社外からも積極的に情報収集を行い、サステナビリティ活動全般の方向づけや推進役を担っている。
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