「ワクチンパスポート」26日から受け付け開始 「経済活動再開の第一歩」「差別につながる」と賛否渦巻く

新型コロナウイルスワクチンの接種歴を公的に証明する「ワクチンパスポート」の申請受け付けが2021年7月26日、全国の市町村で始まる。

海外渡航に必要な場合に限って申請が認められる。海外での事業が欠かせないビジネスマンらの利便性が高まり、経済活動再開の第一歩ともなりそうだ。しかし、接種しない人への差別につながらないかなどの懸念も広がっており、ワクチン接種が進んでいる米国では州ごとに対応が割れるなど混乱も生じている。

■EUは6月に一部導入、国境超える行き来に隔離措置なし

ワクチンパスポートはワクチン接種を受けたことを示す証明書で、国によっては入国時に提示すれば、隔離期間を短くするなど防疫措置が緩和される。世界各地で導入の動きが広がりつつあり、欧州連合(EU)では6月から一部導入が始まった。ワクチンパスポートを持っている人はEU内で国境を越えて行き来する場合、隔離措置が免除される。

コロナ禍で冷え切った経済を立て直すために有効な手段とみられているおり、ワクチン接種で世界に先駆けるイスラエルでは国内でも活用が進んでいる。ワクチンパスポートを提示すれば、レストランや映画館にも自由に入ることができる。

日本でも、日本経済団体連合会が6月に「萎縮した地域経済や各業界の活性化が期待される」などとして、イベントの入場制限の緩和や飲食店の割引サービスなどに活用するよう政府に提言した。ワクチンパスポートの活用が広く認められるようになれば、停滞する国内観光が動き出す可能性もある。

ただ、問題も少なくない。日本では海外渡航に必要な場合に限って申請が認められるとするが、それはイベントの入場制限緩和などにまで活用を広げてしまえば、何らかの事情でワクチンを接種ができない人などに対する差別につながりかねないからだ。

■自国製ワクチンの接種者だけが入国できる中国

ワクチン接種が進んでいる米国でも州によって対応は分かれている。ニューヨーク州ではすでに3月から事実上のワクチンパスポートが導入されている一方で、ジョージア州など南部の各州では制度の導入を禁じている。こうした保守的な州では、自分自身で接種するかしないかを決める自由を重視する考えが強い。

ワクチン接種を推進する米連邦政府も、ワクチンパスポートの導入に関しては主体的に取り組んでいない。

また、国によって承認しているワクチンが異なるという複雑な事情も混乱を招きかねない。たとえば、日本では米ファイザー社製など米英3製品のみのワクチンを承認しており、中国製やロシア製などは承認していない。

他方、中国では中国製ワクチンの接種者だけに入国を認めるとの方針を示している。日本で発行するワクチンパスポートが、他国でどう扱われるかなど不明な点は多い。

ワクチンパスポートを導入するには、さまざまな観点からの慎重な検討が求められそうだ。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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