トルコリラ、下落リスク再燃か!? エルドアン大統領の「利下げ圧力」に耐えるTCMB総裁の頑張り(志摩力男)

2019年7月にチェティンカヤ総裁、2020年11月にはウイサル総裁、そして2021年3月にアーバル総裁と、トルコのエルドアン大統領は毎年のようにトルコ中央銀行(TCMB)総裁を解任してきました。

現TCMB総裁はカブジュオール氏ですが、エルドアン大統領が据えた人なので、おそらく緩和的な金融政策を採るのではないかと見られていました。

ところが、カブジュオール総裁は結構、頑張りました。就任以来、一度も利下げしていません。

■カブジュオール総裁は「利下げせず」に頑張っている!

TCMBのカブジュオール総裁は利下げをせず、そして金融政策目標として

(1) インフレ率が持続的に低下するまで、引き締めスタンスを断固維持する
(2) 政策金利はインフレ率を上回る水準に設定する

この2つを掲げました。

こうしたカブジュオール総裁の姿勢が好感され、このところのトルコリラは6月の安値12.30円から反発して一時13円台を回復するなど、堅調に推移しています。

しかし、エルドアン大統領からの圧力がなくなったわけではありません。

大統領は2021年8月4日にも「金利を下げれば、インフレ率は下がる」という独自の謎理論を繰り返し、「トルコのインフレ率は8月以降低下し始め、金利も下がるだろう」と再度圧力をかけ始めています。

エルドアン大統領の期待に反し、トルコのCPI(消費者物価指数)は上昇を続けています。そして先日発表された8月のCPIはついに19.25%と現在の政策金利19.0%を上回ってきたのです。

これはまずいことになりました。上記に掲げた、カブジュオール総裁の目標の一つ、「政策金利はインフレ率を上回る水準に設定する」との約束に照らし合わせれば、「利上げ」が必要になります。その一方、大統領は利下げ圧力をかけ続けます。カブジュオール総裁は、自ら掲げた理念と権力者の間で、板挟みにあって苦しんでいる状況と言えるでしょう。

事実、9月2日に行われた電話でのコンファレンスコールで、カブジュオール総裁は、重要な2つ政策目標に言及しなかったと伝わってきます。つまり、インフレ率は上回ってきたが、利上げはできないということなのでしょう。

そして9月8日、カブジュオール総裁は「新型コロナウィルスのパンデミック(世界的大流行)など例外的状況で、コアインフレ指標の重要性が増した」と発言しました。

■ついに利下げか! 9月23日、注目のTCMB理事会

コアインフレ率とは、インフレ率から価格変動の激しい食品やエネルギーなどの品目を除いたものです。現在、トルコのコアインフレ率は前月の17.22%から低下し16.76%、政策金利19.0%よりかなり低いところにあります。

9月8日のカブジュオール総裁の発言で、TCMBは今後コアインフレ率を重視していくので、利下げの可能性が高まったと見られています。この日、トルコリラ円は13.2円前後から12.9円前後へと急落しました。

前回のコラムで、高インフレをまねき「史上最低のFRB議長」といわれたアーサー・バーンズ氏を紹介しましたが、コアインフレという概念を生み出したのも彼です。通常、普通のインフレ率よりもコアインフレ率はかなり低くなります。

9月23日に、次のTCMB理事会が開かれます。コアインフレ率を重視するならば、ついに利下げすることになります。エルドアン大統領は喜ばれるでしょう。しかし、圧力を受けて、インフレに対する見方を意図的に緩めたことになります。

高インフレに負けない姿勢を取っていたから、トルコリラは反発していました。エルドアン大統領の介入があからさまに影響を与えたとなれば、投資家の目線は厳しくなるでしょう。再度のトルコリラダウンサイドリスクに注意です。(志摩力男)

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