部下の仕事ぶりがわからない! リモートワークでのマネジメントのコツとは?〈前編〉(前川孝雄)

パワハラやセクハラなどハラスメント防止の法整備が進んでいますが、企業では貴重な人材の採用・定着・育成のためにこそ、ハラスメントが起きにくい組織風土創りが求められます。

多くの上司層は悪気がないにも関わらずハラスメント・リスクを冒しがちです。またハラスメント・リスクを恐れて部下とのコミュニケーションが希薄になる職場も増えつつあります。こうした背景を踏まえて、本連載では管理職や経営者など上司層に向けてハラスメントを予防する上司力について解説します。

「ハラスメントが起きにくい職場を創る」シリーズの第13回と14回では、コロナ禍で急速に普及したリモートワークでのハラスメント・リスクを取り上げます。

■CASE 「ちゃんと真面目に仕事してるのか!?」

【A課長】定例のオンライン・ミーティングを始めよう。まず、各自の業務進捗を報告してもらおうか。
【Bさん】じつはE社様との商談が、その後進展していません。担当者がご多忙で、コロナ禍の影響も大きく、なかなか検討の時間がもてないとのことです。あまり重ねてお願いするのも、かえって逆効果ですので......。
【A課長】何、まだ進んでないのか! 心配で君には何度もメールで指示してるから、もうとっくに済んでいると思っていた。だいたい、ちゃんと真面目に仕事してるのか? 在宅勤務で気が緩んでるんじゃないか。
【Bさん】(そんな、ひどい!)先方には何度かおうかがいしていますが、なかなか反応がないのです。
【A課長】そもそも、画面に映る君の部屋の様子も雑然としていて、オンラインで商談してもお客様から軽視されてるんじゃないか。さっきから子どもの声も聞こえていて、何だか緊張感がないしな。
【Bさん】あっ、失礼しました。きょうは学校が半日授業だったものですから。(家の様子まで監視されるなんて...)
【A課長】今度、君の奥さんを紹介してもらって、僕からも少し協力して貰えるように頼んでみるか。
【Bさん】えっ!(...そんなことまで介入されるなんて...とても耐えられない!)

【解説】
この会社では、コロナ禍の影響で急きょ在宅勤務を採り入れました。A課長は、部下たちを定例のオンライン・ミーティングに招集し、各自の業務進捗の報告から始めました。
そこで、部下のBさんがE社との商談の遅れを報告したところ、A課長はBさんにメールで何度も指示を出していることや、遅れの原因はリモートワーク下のBさんの仕事振りや家庭環境にあるのではと、注意し始めましたが...。

◆ ハラスメント・リスク
今回のテーマは、コロナ禍以降注目されているリモート(遠隔の)ハラスメント=リモ・ハラです。急増した在宅勤務のもとでは、上司と部下の遠隔コミュニケーションが増えました。しかし、上司からのメールやチャットなど文字による一方通行の業務連絡や指示は、強圧的な印象を与えがちです。
また、ZoomやTeamsなどのオンライン・ミーティングでは、背景に自室が映ったり部下の私服姿を見るなど、プライバシーに触れがちです。A課長のメンバーBさんへの発言は、「精神的な攻撃」(名誉棄損、侮辱)や「個への侵害」(私的なことへの過渡な関与)のハラスメント・リスクを孕むものです。

■上司のアンコンシャスバイアス(固定観念、無意識の偏見)

在宅勤務で上司が部下に抱きがちなのが、「ちゃんと仕事をしているのか?」との疑念です。職場なら常に部下の仕事振りを観察し、直接報告を求め、指示することも容易です。

しかし、在宅勤務では部下の仕事ぶりが見えません。部下に指示連絡をしても即反応がなく報告や相談が疎遠に感じると、自分の意向が軽んじられているのではと疑心暗鬼に陥ります。そこで、上司が不安や苛立ちから部下への指示を強め、執拗に報告を求めると、部下にとってはプレッシャーとなり、ハラスメントと受け取られるリスクも高まるのです。

次回の「後編」では、このケースをもとに、部下の思いを正しく捉えハラスメント予防につなげるための心構えと方法を解説します。(前川孝雄)

※ 職場のハラスメント予防についてさらに詳しく学びたい方、また職場での研修導入を検討される方は、弊社FeelWorksが開発した「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」をご参照ください。

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