塩野義製薬株が上場来高値、ベトナム政府とコロナ感染症対策で基本合意を歓迎 「捕らぬ狸」もオミクロン株に効くとなると......

塩野義製薬の株価が2021年11月25日に上場来高値を更新した。19日から4営業日連続の更新で、全体として下げ相場のなか、逆行高を演じた。

4日目の25日の決め手となった材料は同日朝に発表した、新型コロナウイルスを含む感染症対策についてのベトナム政府との基本合意だ。塩野義は新型コロナウイルス向けのワクチンや経口治療薬を開発中で、ベトナムでこれらの臨床試験を進める計画。ワクチンの製造技術移管についても具体的な協議に入るとしている。ワクチン、経口治療薬ともに実用化へ前進するとの期待が投資家のあいだに高まっている。

■国産ワクチンの「先頭バッター」

新型コロナウイルス対策で日本が後れをとっている印象が否めないのは、何と言っても国産ワクチンの開発が大幅に遅れていることだ。しかし、ここへきてようやく光明が見え始めており、その先頭バッターと目されているのが塩野義だ。そのことが足元の株価上昇を支えている。

塩野義は近年、抗HIV薬の「テビケイ」「トリーメク」、抗インフル薬の「ゾフルーザ」といった対感染症に有力な薬を発売してきている。新型コロナウイルス向けのワクチンや経口治療薬についても、研究員を大量投入して開発に取り組んできた。

その結果、ワクチンについては治験が最終段階に入っており、2022年3月までの実用化を目指すところまできている。国産ワクチンはこのほか、明治ホールディングス傘下のKMバイオロジクス(熊本市)などが続いている。

経口治療薬についてはワクチンほどには遅れておらず、欧米の製薬メーカーに伍すると言えなくもない開発スピードとなっている。塩野義の新薬候補「S−217622」は9月に最終段階の治験に入り、年内に厚生労働省に製造販売の承認申請を出す方針だ。2022年3月までに100万人分を生産する計画を持っている。

海外勢では米メルクの「モルヌピラビル」が11月4日に英国で承認され、米国では緊急使用許可を申請、日本政府とは160万人分の供給契約を結んだ。米ファイザーの新薬候補は治験の最終段階にあり、米国で緊急使用許可を申請している。こうしたファイザーの動向は塩野義の株価にも影響している。

■ワクチンと治療薬が塩野義製薬株を左右する

前置きが長くなってしまったが、このような状況下で発表された塩野義とベトナム政府の合意である。じつは、日本では今秋に感染者が激減した影響で、国内だけで治験者を確保するのは困難と見られていた。

一方、ベトナムはワクチン接種の遅れもあって感染者数が高水準で推移し続ており、日本の製造業の生産拠点の操業にも影響している。ベトナム政府との合意は塩野義にとってはワクチンや治療薬の開発の前進につながるとの期待を投資家に抱かせるのに十分だった。

それは経済安全保障の強化を目指す日本政府とも連携し、海外で買ってもらう足がかりになろうという連想も働いたようだ。

ここへきて南アフリカ発の変異株「オミクロン株」の脅威から、日本政府が外国人の入国を原則禁止するなど、ベトナムとの協働にあたっての不安材料は出ている。他方、仮にオミクロン株にも効果があるとなれば、塩野義の株価はさらに上値を追う可能性もある。

いずれにせよ、新型コロナウイルス向けのワクチンと治療薬の動向が塩野義の今後の株価を左右することになりそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)

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