米テスラを追い越せるか!? 日産EV巻き返しへ全力 次世代「全固体電池」の実用化急ぐ

日産自動車が、自動車の電動化に今後5年間で約2兆円を投資し、2030年度までに世界の販売車種に占める電気自動車(EV)とハイブリッド車(HV)の合計比率を50%以上に高める方針を打ち出した。

日産は2010年に世界初の量産EV「リーフ」を発売したものの、経営の混乱などもあって販売が低迷するあいだに、後発の米テスラなどに抜かれ、後塵を拝している。

今後のEVの争いを大きく左右する次世代の「全固体電池」の実用化を急ぎ、巻き返しを狙う。

■2030年度までに電動車23車種を投入

「他社に先駆けてEVの普及に取り組んできた経験を生かし、期待を超える新しい価値を提供する」

内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は2021年11月29日、EV戦略を柱とする「長期ビジョン」の発表会見(オンライン)で、こうアピールした。

計画では、2030年度までに新たにEV 15車種を含む電動車(ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車など)23車種を投入する。その皮切りは22年1月に発売するスポーツ多目的車(SUV)の「アリア」になる。

車種に占める電動車の比率は現在の10%強から、26年度に40%以上、30年度に50%以上に引き上げる。これに向け、市場の事情を考慮して、それぞれ目指す電動車の販売比率も示し、欧州が26年度までに75%以上、日本は55%以上、中国は40%以上、米国は30年度までにEVのみで40%以上とした。

こうした目標達成にむけ投じる2兆円は設備投資も含むもので、研究開発投資が半分を超えるとみられる。そこで特に重視するのが、航続距離などEVの基本性能を左右し、EVの原価の3分の1を占める電池、とりわけ次世代の「全固体電池」だ。

現在、EVやHVはリチウムイオン電池が主に使われている。電解質に液体を使い、漏れると発熱や発火の恐れがある。全固体電池は文字どおり電解質に固体を使用する。リチウムイオン電池に比べ、急速充電が可能で、劣化しにくく、液漏れが起こらないため安全性も高いとされる。

さらに低温や高温でも電池の性能が低下せず、理想の電池とされるが、電解液と同等以上の伝導性をもつ材料の開発など、解決すべき課題が多く、企業や大学が研究開発を急いでいる。

日産はエネルギー密度をリチウムイオン電池の2倍、充電時間を3分の1にすることをめざす。2022年にはパイロット工場の建設を開始し、24年に試作を始め、28年には大量生産を目指すという。この挑戦が成功すれば、日産はEV技術で失地を回復できる可能性があるとみられている。

■日産のEV技術、失地回復への「壁」

ただ、全固体電池の開発は大半のメーカーが競っており、たとえばトヨタは2020年代前半の実用化を目指すと表明している(当初はEVではなくHVへの搭載を予定)。日産の「2028年、量産開始」という目標は、決して早いとはいえない。

いずれにせよ、全個体電池の実用化まであと数年。電動化に向け、国内外の大手メーカーの投資競争にすでに火がついており、トヨタが電池だけで30年まで1.5兆円を投じ、EVと、水素で発電しながら走る燃料電池車(FCV)を30年に200万台販売する目標を掲げるほか、ホンダは今後6年間に研究開発に全体で5兆円を充て、40年にはすべてをEVかFCVにすることを打ち出している。

海外でも、独フォルクスワーゲン(VW)は30年に5割をEVにするとして、そのために25年までに350億ユーロ(約4.5兆円)を投資。米ゼネラル・モータース(GM)は自動運転などを含め25年までに350億ドル(約4兆円)を投じ、35年にエンジン車の販売を終了する目標を掲げている。

内外メーカーがEVを中心に投資競争、開発競争を繰り広げる世界の自動車業界。そこでの優劣を全固体電池が大きく左右するのは疑いない。

内田社長兼CEOは今回の長期ビジョン発表会見で、

「私たちが今、全固体電池の自社開発を自信をもって発表できるのは、この30年間の経験と、初代日産リーフ発売から11年間、市場に安全な電池を送り出してきた実績があるからだ」

と胸を張った。

日産が約30年前に車載用リチウムイオン電池の自社開発に着手し、基礎的な研究を重ね、内製による量産化に成功した実績への自信だ。

日産が思い描くように全固体電池の自社開発は順当に進むのか――。実用化まであと数年といわれる全固体電池の開発をめぐり、日産はじめ国内外の大手メーカーの開発競争が激しさを増す。(ジャーナリスト 済田経夫)

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