希望退職2年連続1万5000人超! コロナ禍で「赤字の肩たたき」と「未来への飛躍」...二極化進む

「希望という名のあなたをたずねて 遠い国へとまた汽車に乗る...」という歌があったが、「希望退職募集」という名前のリストラが相次いでいる。

東京商工リサーチが2020年1月20日に発表した「2021年上場企業『早期・希望退職』募集状況」によると、上場企業が2021年に募った希望退職数は2年連続で1万5000人を超えた。

新型コロナウイルスの直撃を受けたためだが、オミクロン株の急拡大で今年もさらに高水準になりそうだという。

■日本たばこ3000人、ホンダ2000人...

2021年に早期・希望退職募集を開示した上場企業は84社だ。前年(2020年)の93社から9社減少したが、2年連続で80社を超えた。2年連続の80社超は、リーマン・ショック後の2009年(191社)・2010年(85社)以来11年ぶり。新型コロナ感染拡大の影響が長引く業種を中心に、募集企業の数は高水準で推移している=図表参照。

(図表)早期・希望退職者募集の企業数と人数の推移(東京商工リサーチ作成)

募集人数は、人数を公表した69社で1万5892人に達した。前年の1万8635人から減少したが、2年連続で1万5000人を超えた。2年連続の1万5000人超は、IT(情報技術)バブル崩壊後の2002年(3万9732人)・2003年(1万6833人)以来18年ぶりだ。

業種別にみると、新型コロナの影響が長引くアパレル・繊維製品が三陽商会、ワールドなど11社で最多に。次いで、パナソニックなど電気機器が10社だ。

このほか、やはり新型コロナの直撃を受けた観光関連では、近畿日本ツーリストを傘下に持つKNT‐CTホールディングスなど4社が、11年ぶりに募集を行った。また、移動制限の影響を受けた近鉄グループホールディングスなどの鉄道、ANAホールディングスなどの航空を含む交通インフラ(6社)も8年ぶりの募集となった。

一方、昨年(2020年)にそれぞれ7社だった外食と小売は、2021年はともに4社に減少した。とくに、外食は緊急事態宣言が全面解除された10月以降、募集はなかった。これは、時短営業や休業の補償として自治体から出される協力金に一定の効果があったからとみられる。

募集人数をみると、紙巻きたばこの需要減により一部工場を閉鎖する日本たばこ産業の2950人が最多だ。次いで、電気自動車(EV)や自動運転車へのシフトのため世代交代を進めるホンダ(約2000人)、観光需要減のKNT-CTホールディングス(1376人)と続く。

募集人数が1000人以上の企業は5社だった。これは小泉純一郎政権が「聖域なき構造改革」を打ち出し、郵政民営化や公共事業削減などを進めたため、年末に完全失業率5.4%を記録した2001年の6社に次ぐものだ。統計開始(2000年)以降で2番目の高水準となった。

■「赤字のリストラ」と「黒字の未来型投資」の違いは

ただし、面白いことに、5社のうち新型コロナが経営を直撃した観光業のKNT-CTホールディングスをのぞく4社は、いずれも募集直近の通期決算が黒字だった。経営に「余力」があるうちに人員を再配置する「構造改革」を進めようというわけだ。

日本たばこ産業では、国内たばこ事業などの46歳以上の社員を中心に1000人規模の希望退職者を募集、パート従業員1600人を含めると、たばこ事業の約2割を削減する計画だ。ホンダも55歳以上を対象に募集すると、国内正社員の約5%にあたる2000人超が応募した。

事実上の「肩たたき」で首を切られる人も(写真はイメージ)

2021年に「早期・希望退職」を行った企業は、「赤字企業による小・中規模募集」と、「黒字企業による大型・先行型の募集」の二極化が進んでいるという。

2021年に募集した84社のうち、半数以上の47社(56.0%)は直近本決算で赤字を計上したが、黒字決算は44.6%で、全体的に人数が多い傾向にある。この「二極化」がコロナ禍で加速した格好となった。

そのうえ、オミクロン株の感染急拡大によって、先行きがさらに不透明になっている。

コロナ禍で業績不振が長引く企業を中心に、拠点や事業所、部門の廃止など、事業見直しを迫られた小規模実施が後を絶たない。今年(2022年)に入ってからも、すでに1月19日段階で9社の募集実施が判明している。パチンコの大手メーカー平和(約250人)、福島県いわき市で温泉施設を営む常磐興産(約50人)などだ。

東京商工リサーチでは、

「製造業を中心に、先行きが不透明なコロナ禍にあっても社員の『年齢構成是正』や、デジタル分野の強化などの流れは続いている。国内の早期・希望退職は2022年も黒字企業による大型募集、コロナ直撃による小・中規模募集の二極化は継続するとみられる。募集企業数は2021年と同等か、それを上回る可能性も現実味を帯びている」

と分析している。

なお、調査は早期・希望退職者募集の実施を開示し、具体的な内容を確認できた上場企業を対象とした。実施期間が2021年1月1日以降、あるいは応募社員の退職日が2021年12月末までの募集とした。

(福田和郎)

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