ガソリン価格高騰に「奥の手」使わない岸田政権...「雀の涙」補助金よりも、根本解決に「トリガー条項」凍結解除を

レギュラーガソリンが、1リットルあたり平均170円を超えた。政府はガソリンや灯油などの価格高騰に歯止めをかるために、1リットルあたり3円程度の補助金を出すことを決めた。

果たして効果があるのか。メディアの多くが「末端のガソリンスタンドに吸収されるだけ」と疑問視する。エコノミストたちは、日本政府はガソリン価格を引き下げる「伝家の宝刀」を抜くべきだという。いったい、どんな「切り札」なのか――。

■GS店主「補助金もらいっぱなしが多いでしょう」

報道によると、萩生田光一経済産業相は1月25日、ガソリンなどの燃油価格の高騰を抑える価格抑制策を初めて発動すると発表した。24日時点のレギュラーガソリンの全国平均小売価格が1リットル当たり170.2円となり、発動条件の170円を超えたからだ。ガソリン、軽油、灯油、重油を対象に、各1リットル当たり3.4円の補助金を1月27日から石油元売り会社に支給して、小売価格の上昇に歯止めをかける。

ただ、実際に店頭での価格を決めるのは、ガソリンスタンド(GS)だ。果たして補助金の額を価格に反映させるかどうか、メディアの多くが効果を疑問視している。

毎日新聞(1月26日付)「小売価格反映不透明 GSの経営判断次第」は、九州地方のガソリンスタンド経営者の声として、新型コロナウイルスの影響で、GSも消費者も痛めつけられているため「(卸価格の抑制分を)小売価格に反映せずにもらいっぱなしの経営者も多いんじゃないかないか」と取り上げた。また、佐賀県内のガソリンスタンド経営者は、「周りの店舗が小売価格に反映するかどうか、様子見です」などと話したという。

こうした末端のGSの動きを見越して、補助金の支給がかえってお客と店のトラブルを呼び込むのではないか、と心配する意見もある。朝日新聞(1月26日付)「ガソリン補助金、効果不透明」では、店頭価格が下がると誤解した消費者から、「なぜ値下がりしないのかと苦情を受ける恐れがある」(長崎県石油商業組合 上野一茂・専務理事)との懸念の声を伝えていた。

■「ガソリン税安くする」奥の手を使わない政府

実際、石油元売りの石油連盟の杉森務会長(ENEOSホールディングス会長)は1月24日の定例記者会見で、「(補助金は、ガソリンの店頭価格が)上がることを緩和するための措置であり、下げるためではないことをしっかり説明することが大事だ」と、政府に注文した。

「安くなると誤解されると困る」というわけだが、今回の政府の措置を専門家たちはどう見ているのだろうか。

野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は、朝日新聞(1月26日付)の取材で、「なぜガソリンなどの燃料だけを支援するのか明確ではない。燃料以外にも原材料は高騰し、食品業界などでは零細企業がコストを転嫁できずに収益が悪化している」。同紙で米投資情報会社プライス・フューチャーズ・グループのフィル・フリン氏も、「(補助金には)短絡的な効果しかない。むしろ、消費者の節約意欲をそいで需要を維持してしまう可能性もある」と、それぞれ懸念を示していた。

一方、こうした付け焼刃的な補助金給付の措置ではなく、「トリガー条項」を解除して、根本的な解決を図るべきという意見も見られる。

トリガー条項を使いたがらない岸田文雄首相

「トリガー条項」とは、定められた条件を満たすと発動される条項。ここでは、ガソリンにかかっている高い税金の一部を免除することを意味する。正式には、租税特別措置法第89条の「揮発油価格高騰時における揮発油税及び地方揮発油税の税率の特例規定の適用停止」のことを指す。内容を簡単に説明すると、こうだ。

「レギュラーガソリン1リットルあたりの価格が3か月連続して160円を超えた場合、財務大臣は翌月からガソリン税の上乗せ分(旧暫定税率)25.1円の課税を停止し、その分だけ価格を下げる」

トリガー条項は、ガソリンにかかる税金が高すぎるという批判を受け、旧民主党政権下の2010年4月に成立した。しかし、翌年3月に東日本大震災が起こったため、復興財源を確保するという名目で運用が凍結されたままだった。

日本のガソリンにかかる税金は諸外国に比べて複雑なうえ、高すぎるという批判が根強くある。

ガソリンには、1リットルあたり「ガソリン税」が53.8円、「石油税」(石油石炭税)が2.8円それぞれかかる。「石油税」に最近、「地球温暖化対策のための税」が上乗せされた。こうした税のうえにさらに「消費税」がかかってくるから厄介だ。ちなみに、これに関しては税金がかかっているうえ、さらに消費税を課す「二重課税」だとして問題視する意見もあるほどだ。

ガソリンにかかる税金は諸外国に比べて複雑

もうすでに1リットル当たり160円の基準を超えている。この際、「トリガー条項」を適用すれば、約3円程度の補助金ではなく、約25円も安くできる、というわけだ。

野党各党はトリガー条項の凍結解除を求めている。しかし、それには法改正が必要なうえ、年間3兆2000億円程度あるガソリン税など税収が減るため、政府は難色を示しているのだ。

■トリガー条項を発動するタイミングなのか?

ヤフーニュースのヤフコメ欄でも「トリガー条項」を適用すべき、とするエコノミストが目立つ。

日本総合研究所調査部マクロ経済研究センター所長の石川智久氏は「今回はその発動を検討してもよいタイミングです。ウクライナ情勢次第では、原油はさらに高騰するリスクもあります。世界的なインフレ傾向で不景気下のインフレというスタグフレーションリスクもあるなか、様々な対応を検討すべきでしょう」と指摘した。

第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏も、「政府が取り組むべきは、原油価格上昇に伴うエネルギー価格の負担をいかに抑えるかです。幅広く国民生活に影響する原油価格の高止まりの早期解消は望みにくい状況にありますので、原油高や円安による輸入インフレが家計の懐をむしばむ今、凍結されているトリガー条項の発動などにより原油高のショックをやわらげるべきでしょう。そうしなければ、再びデフレに戻ってしまいかねないと思います」と、訴えたのだった。

(福田和郎)

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