DX研修の「肝」はココ! あなたの会社はどう「進化」したい? どんなIT人材を求めているの? プロイノベーションの久原健司社長に聞く(後編)

ITは日進月歩。日々新しい技術が登場しては、さまざまな手間を省いてくれる。その一方で、いろいろなサービスが乱立して、なにをどうすれば効率化に資するのか、わかりづらくなっている。

最近話題のIT人材、DX(Digital Transformation=デジタルトランスフォーメーション)人材が不足している中小企業はなおさらだ。まして社内に、ITに明るい人材が必ずいるとは限らない。そんな中小企業のために、DX研修を行っている株式会社プロイノベーションの代表取締役、久原健司さんにDXの「入口」について、聞いた。

■チャットツールを上手に使うには「具体的に」「明確に」

<DX研修の「肝」はココ! あなたの会社はどう「進化」したい? どんなIT人材を求めているの? プロイノベーションの久原健司社長に聞く(前編)>の続きです。

――「コロナ禍のリモートワークではチャットツールを使う場面が増えた」という前回のお話の続きとなりますが、チャットツールを上手に使う工夫を教えてください。

久原さん「チャットツールの上手な使い方のポイントは、コミュニケーションの仕方にあります。これは今に始まった話ではないのですが、『すいません質問です。これどうしたらいいですか?』と、漠然と聞かれてしまうと、聞かれた相手も『どうしたらいいのか』と考える時間がものすごく長くなってしまいます。
そこで、『これどうしたらいいですか』ではなくて、具体的に質問する。たとえば、『○○で迷っていて、ネットで調べたらAとBとCがありました。ボクはBだと思うんですけど、どう思いますか?』と。このような質問であれば、聞かれた相手も一瞬で『Bでいいんじゃないかな』『システム情報だったらDっていうのがあるんだけど』みたいに、かなり短い思考時間で明確に答えられるようになります。相手の手間を減らしてあげる気遣いや工夫がチャットツールを上手に使いこなすうえで重要だと思います」

――ちなみに、チャットツールなどを使いこなせない人はどうすれば......。

久原さん「それは、使いこなせるようになってもらうしかないですね。表現の少しキツイですが、置いていかれる人が出てきても仕方がないと思っています。たとえば、自転車で旅行に行くときに、自転車乗れない人が1人いて、『それなら歩いて行きましょう』とはなりませんよね。ですから、対応できない人は、違うコミュニケーションで、それこそ出社して対面でやっていただくしかないのではないでしょうか。
江戸時代から明治時代にかけて、武士が取り残されましたね。それでも武士は生きていくために変わっていきました。これはちょっと極端ですが、やはりその変化に対応してことは、企業にとっても人にとっても重要。変化を恐れず、対応できる人になることが残された選択肢だと思います。とはいえ、現代は変化のスピードも急激なので、たくさんの人が置き去りにならないように、『やさしい』アプローチを用意しながら、粘り強く進めていくことが必要だと思います」

――今おっしゃった「やさしい」アプローチとはどのようなものでしょうか。

久原さん「(研修を受ける)受講者側が変化していくことはもちろんですが、ITやDXを推進する会社側もやっぱり変化していくことが重要だと思います。両方が変わっていかないといけません。つまり、レベルに合わせてどう育てていくかということです。
たとえば、当社の例では、チャットツールが使えないという話が出て、動画を用意しました。教える側はどうしても言葉や文字が多くなって、教わる側はイメージしづらくなってしまいます。そこで、動画を用意したのです。映像など目で見えるものは記憶に定着しやすいのがメリットです。
そこで、色や形でイメージできるように工夫しました。たとえば、『赤い』ボタンを押すとか、『リング』の形を用いるとか、パッとイメージできるようにしました。また、動画の場合、受講者が自分のペースで進められるので、動画のテーマはできるだけ細分化して、動画を多く用意しておく。すると、学習のスピードやわからないところに応じた閲覧ができるようになります。
1回で覚える人もいれば、3回かかる人もいます。でも、それぞれ自分の都合のいい時間帯に何度も見直せばよいのです。レベルに応じた研修ができれば、取り残された人たちの架け橋になります。リモートワークで集合研修がしづらくなってきている今、動画での研修は、ITやDXで取り残された人への有効な『やさしい』アプローチになりうると思います」

■社員採用、広がる「できる人材」を雇うアメリカ型

――コロナ禍が3年目に入り、DX人材を育てていくうえでのポイントは何でしょうか。

久原さん「コロナ禍とリモートワークによって、OJTのような日頃の営業活動で先輩から学ぶ育成がやりづらくなって、よりスキルのある人、できる人を採用するようになったのではないでしょうか。しかし、求める人材は、そんなに変わっていないように感じます。
人材のタイプでいうと、何か質問してくれる人がいいですね。聞きたいと思う人であることが重要だと思います。興味を持って『これってどうなっているのですか』と、質問できる人は非常にポイントが高いです。質問できる・できないは、その人の性格によるものも大きいので、会社からも質問しやすいように質問タイムを設けるなど、時間を作る工夫も必要だと思います。また、質問を受けた先輩や上司にとっても、受けた質問をあらためて調べて、新しい知識を得る場合もあるでしょう。『質問することはとてもいいことなんだ』ということを会社としても教えていきたいですね」

久原健司さんは「アメリカでは個人が個人のためにスキルを身につける」と話す

――ところで、テレワーク中心の米国では、研修や社員育成はどのように進めているのでしょうか?

久原さん「コロナ禍によるリモートワークの普及は、テレワークが中心の米国型の仕事の仕方に近づいているとも言えます。米国では80%以上がテレワークを導入しており、その中で株価も上昇し成長を遂げています。それならば、米国ではさぞかし研修や社員育成に力を入れているのだろうと思われますが、じつはその逆。そもそも一般的には新入社員向けの研修は行われていません。米国では、基本的に仕事ができる人を採用して回しているので、研修や育成に力を入れる必要がないのです。
もっと言うと、日本の場合は、大学を卒業後の若くてまだ仕事ができない子たちを採用して育てていく流れがあります。ところが、米国では、個人が個人のためのスキルをしっかり身につけたうえで、就職先を探します。つまり、新卒の若手でも『教わっていないから、仕事ができない』などと言ったら、その時点で雇いません。仕事の仕方が米国型に近づくにつれて、社員の採用や育成の仕方も米国型に変わっていく可能性が十分考えられるのではないでしょうか」

――米国と日本では雇用の仕方の状況も異なるわけですね。

久原さん「日本も将来的には、『できる人』を採用する手法をとることで、社員育成や研修をしなくても仕事が回るようにする会社が増えていくのかもしれません。とくにテレワークの場合では、OJTや帯同営業の必要はないといえるでしょう。少なくとも米国ではうまくいっているわけですから。米国型のシステムを導入するのは一つの手段になると思います。リモートワークで研修も育成も難しいとなると、そもそものやり方変えてしまおうと考える企業が出てもおかしくはありません。そうなると、新卒採用も減り、スキルが高くて優秀な人材が職を得ていくようになり、取り残される人々も増えていく......。もしかしたらコロナ禍が、日本の雇用形態をも変えるきっかけになるのかもしれません」

――なるほど日本も、働く人も企業もスキルは自ら身に着けていく時代になりそうです。

久原さん「そうですね。では、どのようにスキルアップさせていくのか? できないことは専門家に聞くのが近道ですが、専門家が身近にいないときは、国が無料でサポートしてくれる仕組みを利用する方法もあります。たとえば、厚労省のテレワーク相談センターでは、テレワークの仕方やZoomの使い方、テレワークでの研修の仕方から機器の選定など、さまざまなことを教えてくれます。みなさん、無料で利用できる情報があっても、ご存じでないことが多いのです。テレワークもできる人に聞けばいいのです。そのために、私たちがいるのですから(笑)」

久原健司さんは「会社のDX化は無料ツールではじめられます」と話す

――会社のDX化は、どうすればカンタンに始められますか?

久原さん「まずは無料ツールで始めてみてはいかがでしょうか。会社をDX化していく方法は、企業によって違いますが、最近とっかかりとしてお話しているのは、googleなどの無料ツールは組み合わせることによって、何倍もの便利さが出せるのです。
たとえば、GoogleカレンダーとZoomは連携できます。予定が決まると、ZoomのURLを発行し、その予定をGoogleカレンダーに登録してくれる。前日になると教えてくれて、まるで秘書みたいな動きをしてくれるのです。無料のツールもうまく組み合わせると、2×2×2の8倍ぐらいに使いやすくなるので、そういったものをまず試していただきたいと思います。
DXも研修も、結局は困っていることに対して問題が解決されないと、意味がないんですね。いいツールを持っていても、その人のためにならなくては、宝の持ち腐れ。困りごとを解決していくことにこそ、意義があると思います」

――ありがとうございました。

(聞き手:牛田肇)

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