円安の善と悪とは何か?...ダイヤモンド「円安」、東洋経済「物流危機」、エコノミスト「相続&登記」を特集

「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

■「円安最強説のウソ」暴く

「週刊ダイヤモンド」(2022年5月21日号)
「週刊ダイヤモンド」(2022年5月21日号)

「週刊ダイヤモンド」(2022年5月21日号)は、「円安の善と悪」と題した特集を組んでいる。これまで円安は日本経済への恩恵が大きいとされてきたが、足元では「悪い円安」が強く意識されているというのだ。

20年ぶりに1ドル=130円となったことへのショックが広がっている。「円安=輸出企業に恩恵」とされてきたが、むしろ原材料・資源高を助長し企業の業績悪化を招きかねないとして、「円安最強説のウソ」を暴いている。

トヨタ自動車など自動車3社で、楽観、中立、悲観の3つのシナリオで試算したところ、いずれのシナリオでも製品の値上げは避けられない、厳しい結果となった。

自動車メーカーは主要国の近くに生産拠点をシフトさせており、原材料を輸入して付加価値を持たせた製品を輸出する、という製造業の「輸出加工型」モデルはとっくに崩れ去っている、と指摘している。

日本円の下落が止まらないのは、日本の国力低下の結果であるとして、為替の専門家が「悪い円安」を招いた元凶と円安のデメリットを解説している。

◆日銀の「円安政策」が生んだ3つの弊害

みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部経済調査チーム上席主任エコノミストの酒井才介氏が独自試算したところ、「10%の円安で20業種中15業種はマイナス影響」だったという。全体としては約1.8兆円の為替差損が発生すると予測している。

円安そのものを政府・日銀が直接コントロールするのは難しいため、緊急経済対策は円安そのものではなく、その副作用である「物価高」への対応が現実的で、低所得者に的を絞った支援が重要だ、としている。

日銀の「円安政策」が3つの弊害を生んだ、と指摘するのはBNPパリバ証券経済調査本部長チーフエコノミストの河野龍太郎氏だ。

円安が景気循環の振幅を大きくし、資源配分をゆがめ、潜在成長率を低下させたという。景気循環にかかわらず、ゼロ金利政策や超円安政策を固定した結果、長期的に日本人を貧しくしたと説明する。

物価で調整した実質実効円レートを見ると、すでに1970年代初頭の水準まで低下している、とも指摘。生産性の低い弱い企業が生き残り、生産性が上昇せず、実質賃金が上がらないのは当然だというのだ。

特集後半では、今後の日本経済について専門家32人が総予測。為替に関しては、円安ピークが「5月」という説と「12月」説が拮抗した。ドルの最高値予想は年内に「138円」というものだった。

日本株は年度内に3万円台を回復すると見るのが、8人中6人だった。23年3月末に3万7000円という最も高い予想をしているマネックス証券チーフストラテジストの広木隆氏は、ウクライナ危機の早期終結、コロナ禍の緩やかな収束を織り込み、米国株も含めて株価は上昇する、と予測している。

■トラックドライバーの「2024年問題」

「週刊東洋経済」(2022年5月21日号)
「週刊東洋経済」(2022年5月21日号)

「週刊東洋経済」(2022年5月21日号)の特集は、「崖っぷちの物流」だ。このままではドライバーが消え、日本の物流は崩壊しかねない、と強い危機感を表している。冒頭のある長距離ドライバーの給与明細が衝撃的だ。

2年前まで長距離ドライバーだったAさん(40代男性)の2018年6月の勤務の実態は過酷だった。関東―関西を9往復した。労働時間は月間で約268時間。休憩時間も含めた高速時間は410時間を超えていた。

総支給金額は約32万円だったが、基本給はわずか7万5000円。これは珍しいことではなく、運送会社による「定額働かせ放題」が横行している、と労働組合関係者は指摘している。「どれだけ働いても月給は30万円程度で上がらなかった」として、長距離ドライバーを辞め、近距離ドライバーになった。

業界の構造として、国内の運送会社の99%が中小・小規模企業で、宅配大手や物流大手など元請けを頂点としたピラミッド構造の中でしのぎを削っている。

1990年に施行された物流2法を機に、新規参入する運送会社が1.5倍まで増加。その結果、運賃のダンピングが横行し、そのシワ寄せがドライバーの給与を抑えることにつながった。

行政は長時間労働の是正に動き、24年4月からはドライバーにも年960時間を上限とする残業規制が適用される。その場合、今までと同じドライバー数では対応できる荷物量が減るため、「2024年問題」と呼ばれている。

50代以上の就業者が全体の約46%を占め、29歳以下はわずか12%にとどまる。このままではドライバーが27年には24万人が不足、30年には物流の供給不足が36%に達するという予想もあるらしい。

これまで運賃を買いたたいてきた荷主の責任も大きい。

船井総研ロジの赤峰誠司取締役は「今後2〜3年間でおよそ3〜4割の運賃値上げを荷主は覚悟すべきだろう」と話している。

また、過酷なドライバーの労働環境についてのリポートを見ると、運転だけではなく、待機の強要や手作業での荷下ろし、商品陳列まで理不尽な要求が行われていることにも驚いた。

残業規制は運送業界に大きな影響を与えそうだ。

長距離の運行もリレー形式でドライバーを交代させる必要も出てくるものと見られる。福山通運の小丸成洋社長は、ダブル連結トラックの拡大や専用貨物列車の活用が避けられない、と話している。

◆安い配達料のシワ寄せなのか?

一方、ネット通販の拡大によって増える宅配便。元請けの下に複数の事業者がぶら下がっている実態にふれている。

「ほとんどの配送案件では3次請けまで存在しており、ひどい場合は7次請けまで出てくる」というから驚きだ。複数の事業者が中間搾取するため、末端のドライバーの報酬は当然少なくなる。

ある例を示している。大手EC事業者が示したのは日当4万円という好条件だったが、元請けと2時請けが手数料を抜き取った結果、実際に運送会社(3次請け)が得た運賃は2万8000円、ドライバーが手にしたのは2万3000円だった。

トラックやドライバーを一切抱えない「水屋」という仲介だけをなりわいとする業者も多いという。

「もはやひとごとではない」と荷主主導で進む現場改革も紹介。コンビニ大手のローソンではAIが最適なトラックのダイヤグラム(運行表)を作成、これを配送会社に提供し、店舗配送ルートの効率化に取り組み始めた。

また、フードデリバリ―大手のウーバーイーツは、ローソンからの商品の配送を受託。自転車で届ける「爆速EC」が伸びているという。

安い配達料のシワ寄せがドライバーの負担になっていることを消費者は知る必要があるだろう。ネットで注文すれば商品が届くシステムはいつか崩壊するかもしれないのだ。

■24年4月には相続登記が義務化

「週刊エコノミスト」(2022年5月24日号)
「週刊エコノミスト」(2022年5月24日号)

「週刊エコノミスト」(2022年5月24日号)の特集は、「待ったなし! 相続&登記」。来春から新ルールへと変わる相続と登記への対応を解説している。

2023年4月に民法が改正され、24年4月には相続登記が義務化される。相続により不動産を取得した相続人は、所定の期間(3年間)内に、相続登記を申請しなければならない。正当な理由がないのに申請しないと、10万円以下の過料に処せられることになるので、注意しなければならない。

この法改正の背景には、相続登記が行われず、所有者不明の土地が増え、社会問題化していたからだ。放置された空き家物件問題の解決が期待される。

一方では、自治体が「現に所有する者」を市町村の裁量で特定し、固定資産税の納税を求めるため、突然巨額の支払いを強いられ、親族間のトラブルの原因になることも予想される。

また、所有者不明土地の利用・処分を促す制度も新設された。

たとえば、隣家が空き家となり、今にも倒壊しそうなケース。隣家の不動産登記簿や住民票に記載されている住所などを調査したにもかかわらず、名義人の所在が分からなかったり、名義人が死亡し相続人が判明しなかったりした場合、裁判所に所有者不明建物管理人の選任を申し立てることになる。その管理人には、弁護士や司法書士が就くことが予想される。

これとは別に、所有者不明土地の利用を促す特別措置法の改正法が4月に成立。再生可能エネルギー発電設備や災害備蓄倉庫も塩漬け土地での建設が可能になった。未利用地を公共性の高い用途に使う制度の使い勝手が高まる、と期待されている。

(渡辺淳悦)

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