日本でも「通年採用」「ジョブ型雇用」が一気に進む!? ニューノーマル時代のキャリアと働き方

日本でも「通年採用」「ジョブ型雇用」が一気に進む!? ニューノーマル時代のキャリアと働き方

コロナ禍で私たちのキャリアや働き方はどのように変化していくのか。ニューノーマルを考えるために役立つキーワードを取り上げ、2021年に起きうる変化に注目する。


■2021年はニューノーマルを模索する一年となる
新しい年は、コロナ禍の感染者数がオーバーシュートしたニュースで始まった。感染者数の推移をニュースで追うことや、どこに行くにもマスク着用で、小まめに手指の消毒をして外出時間を極力短くするなど、私たちがコロナ禍で日常生活を送ることに慣れてきた矢先のことである。

リモートワークが進み、全ての社員が同じビルの中で“すし詰め”になって同じ時間や空間で共に仕事をしなくても、オンライン会議などを有効に使えば協働は可能であり、工夫すれば生産性を下げることなく日々の仕事は十分にできることが分かってきた職場は多いことだろう。

企業にとって、事業活動の何にお金をかけるべきか、そして人件費や雇用のあり方も含めて、コスト構造を抜本的に見直す機会にもなっている。東京都港区にある広告業で国内最大手の電通が、本社ビルを売却することを検討しているというニュースが流れたが、これはその象徴的な出来事ではないだろうか。

既得権益をめぐる攻防が世の中の非合理や不条理を作り、どうしようもないというあきらめに繋がることがある。新型コロナウイルスの世界規模の感染拡大という想定外の出来事が起き、この状態がいつ終わるのか、そして今後さらに何がどのように変わるのか、誰にも先が見通せない。

これから当面の間、私たちはニューノーマルを模索することになるが、いわゆる“新しい常識”が生まれるチャンスが到来しているといえるのかもしれない。

確かに先行きが分からない不安はある。しかし、働き方の慣習一つをとっても、日本人はとかく働きすぎで気持ちにゆとりがないといわれ続けてきただけに、このトンネルの先には、新しい日本人ビジネスパーソン象が生まれる期待を持てないだろうか。

日本の常識が世界の非常識ではなくなり、世界の常識に近づいていくことを見届ける日が来るかもしれないのである。今、世界で起きていることの多くは、さまざまな既得権益を打ち壊すチャンスととらえてもいい。

本稿ではキャリアと働き方のトピックに絞り、ニューノーマルを考えるために役立つキーワードを取り上げて、2021年に起きうる変化に注目する。まだしばらく続きそうなコロナ禍において、2021年度の会社生活を有意義に過ごすためのヒント、そして将来のキャリアや自らの生き方を考えるきっかけになれるように論じていきたい。


■「通年採用」が一気に進む
世界では見られない日本の不思議な現象の一つが、4月入社の新卒採用である。世界の大学に合わせて日本の大学の入学時期を9月入学へ移行させることが検討されたときも、その実現の障壁となった理由の一つが、新卒が4月に一斉入社をすることであった。

なぜ企業が新卒採用で4月にこだわるのかといえば、学校年度が4月から3月であること、そして大学が一斉入学、一斉卒業の方式を採用しているからである。

採用活動を一元化できることで業務の効率化やコスト削減につながるメリットも加わり、現在の新卒採用のスケジュールが確立した。

一方、優秀な人材を獲得するために、多くの企業は学生の青田買いをする。長年にわたり、経団連は会員企業を対象に独自の就活ルールを設定し、企業の青田買いがエスカレートしすぎないようブレーキをかけてきたが、その就活ルールも、今後はなくなる方向にある。

まして、コロナ禍で大学授業のオンライン化が進み、多くの学生が出席して行われる学校行事もほぼキャンセルとなった。今後は4月一斉入学だけでなく、9月入学をはじめ、入学時期の多様化が進む可能性もある。

実際、海外の大学の中には年間6回の入学時期を設けている大学もある。入学する学生の多様化(年齢、国籍、社会人学生等)を考えれば、入学時期は複数ある方がいいという結論になるからだ。

現状、企業の中には、既に新卒採用は4月入社と10月入社の年2回と設定している会社も増えつつある。外資系企業などを中心に、新卒の入社も中途採用と同様、「通年採用」としている企業もある。この傾向は、コロナ禍で雇用環境のニューノーマルが模索されていく中で、さらに加速していくかもしれない。


■日本でも新卒の「ジョブ型雇用」が増加するか
新卒一斉採用の慣習が減っていけば、日本でも「ジョブ型雇用」の増加が加速する可能性がある。ジョブ型雇用とは、職務を特定したうえで採用することであり、中途採用では一般的である。現在の新卒採用は、就職というよりも就社といったほうがより正確であり、ジョブ型雇用に対して、メンバーシップ雇用という言葉を用いて説明されることがある。

多くの新卒採用は、入社時に特定の職務を本人に約束した形で採用はしておらず、本人の希望を事前に聞くことはあるものの、配属でそれが反映される保証はない。入社後は一定期間ごとにジョブローテーションがあるのが、日本の職場では一般的である。社員本人の育成計画もあるが、社員を異動させる理由は、会社都合が優先されることも多いのが現実である。

さまざまな異なる分野の仕事を経験することで、その会社で働く人材としては最適化されていくのである。しかし、その結果、転職市場で売れにくい経歴になることもある。

例えば経理や営業、企画などの多様な職歴を積んだ人物は、多彩な業務経験を積んだこと以上に、必要不可欠な社内人脈を築けたことで、バランスの取れたゼネラリストとして将来会社を経営面で支えることが期待される。一方、転職市場では、スペシャリストが評価される傾向があるため、ゼネラリストの多彩な経験のどれもが中途半端な経験とみなされることもある。

転職社会が定着している現代において、雇用の流動性と親和性の高いジョブ型雇用は、会社にとって効率的な経営が実現できる。そして社員個人にとっても、将来にわたり柔軟なキャリア選択(社外も含む)がしやすくなる可能性がある。

以上のように、新卒採用と中途採用のどちらにおいても、今後はジョブ型雇用が主流になる時代になるだろう。

コロナ禍で在宅勤務が増えたことで、上司や先輩社員の監督がなくても、きっちりと一人で仕事を仕上げることができるスペシャリスト人材が重宝されていることも追い風になる。実際、世界の雇用の現場では、ずっと以前からジョブ型雇用が主流であることを見れば、日本がそうなるのも時間の問題かもしれない。


■「スマートデバイス」で効率的に「在宅勤務」「副業」もOK!?
昨年来のコロナ禍で、働き方やキャリアと関係が深くて最も注目される商品はズバリ、「スマートデバイス」であるだろう。職場や外出先、そして家の中でさえも、周りを見渡してみれば、あらゆる商品がスマートデバイスへと進化を遂げていることが分かる。

スマートデバイスとは、スマートフォンなどの多機能端末が代表例だが、基本的にはインターネットとつながり、通信や通話ができるもの全般を指す。軽量化とコンパクト化が進み、簡単に携帯できるようにもなり、操作性もタッチパネルで直感的に行うことができる。

まずはスマートフォン、ノートパソコン、タブレットなどが思いつくが、考えてみればテレビ、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、エアコン、電子レンジなどの家電でも操作性は大きく向上しており、車に乗っていても家でデスクに向かってパソコンを操作しているのと同じような作業ができる場合もある。

コロナ禍になって「在宅勤務」(似たように使われる言葉:リモートワーク、テレワークなど)で毎日を過ごす人が増え、あらためて世の中の何もかもがスマートデバイス化していることを実感した人も多かったのではないだろうか。

もちろん技術が進んだからといって、全ての人の生活空間がスマートデバイスであふれかえっているわけでもないだろうから、世の中の変化を実感するにしても感じ方に個人差があることは否めない。

しかし、多くの会社では在宅勤務に切り替える中で、社員にノートパソコンを持たせるようになり、リモートワークで仕事をするようになった人は、コロナ禍で日本中に一気に広がったことだろう。それによって通勤電車は、以前ほどの混雑がなくなった。

朝早くから通勤ラッシュに巻き込まれなくなった分、ビジネスパーソンは余計なストレスからも解放されたに違いない。この変化を歓迎している人は、少なくはないのではないだろうか。

会議もオンライン化したことで、本当に必要な会議のみが実施されるようになれば、職場の生産性はむしろ上がる。会議後の議事録や報告書を作る必要もなくなり、残業時間が減った人もいるかもしれない。

もちろん、何でもオンライン化することで、気軽なコミュニケーションが阻害されていることを指摘する意見もある。確かにデメリットもいくつかあるが、長年にわたり長時間労働の悪習を改善できなかった日本の職場が、ある意味、強制的に新しい働き方にシフトしたことは確かである。

いずれコロナ禍が収まった後に、以前のようなワークスタイルに戻す必要性を感じない人が職場に増えれば、コロナ禍がもたらした数少ないプラス材料として、日本の会社において「働き方の最適化」が進むかもしれない。

具体的には、スマートデバイスでステイホームが実現しやすくなり、通勤の負担もないから体力が温存できて、ストレスフリーとなる。うまく隙間時間を利用すれば、平日の昼間でも家庭の仕事を手伝うこともできる。

例えば家族とランチをし、家族を最寄り駅まで車で送迎するなど、家族メンバーとのコミュニケーションも増えて家族円満につながるかもしれない(逆に喧嘩が増えて、家族の仲が悪くならないよう注意は必要だが)。

オンライン会議で生産性の高い働き方を実現し、雑務のような仕事が減少すれば、一日の仕事も早く終わる。残業という考え方はなくなり、結果を出すために最適な働き方を設計できる裁量労働制の考え方で、誰もが仕事を自由に組み立てられれば、仕事の自由度や生産性、創造性は増すかもしれない。

もちろん裁量労働制に対するネガティブな見方(例えば社員間の業務量の偏りが助長されるなど)もあるため、社員間(上司・部下間を筆頭に)のコミュニケーションやマネジメントの重要性は一層高まる。

平日の働き方に変化が生まれれば、これまで以上に週末の過ごし方が楽しくなるだろう。時間をうまく使えば「副業」もできるようになるかもしれず、会社の給料が上がらないことを不満に感じるよりも、「足りない稼ぎの分は副業で補う」という発想が定着するかもしれない。

「副業があるおかげで、安心して本業に打ち込める」という見方もできる。日本では、長年にわたり雇用主が社員の副業をネガティブにとらえてきた(本業をおろそかにしかねないなど)。しかし、終身雇用や年功序列の慣習が薄まる中、さらに会社の雇用や働き方の多様化が進めば、「社員の副業は会社にとってプラスに働く」という考え方がもっと広まっていくかもしれない。


■「ESG経営」と「ソーシャルワーク」に注目が集まる
さて米国では政権交代が実現し、その初日にバイデン大統領は地球温暖化対策のパリ協定への復帰を決める大統領令に署名した。環境破壊を伴う経済発展を見過ごす国際社会はないという意思表示の席に、ようやく世界の大国が戻ってきたのはグッドニュースである。

今の時代、世界中の企業はESG(頭文字のEは「Environment」、Sは「Social」、Gは「Governance」)に配慮した経営スタイルを目指すようになった(「ESG経営」という)。つまり、ESGに真摯に取り組んでいるかどうか、それが企業価値を判断する重要な材料となっているのだ。

ESG経営に注目が集まるきっかけとなったのは、国連が2015年に定めたSDGs(Sustainable Development Goals)であり、今では小学校の授業でも生徒間で議論するくらいであるから、その認知度はあらゆる世代に広まっている。

企業の大小に関わらず、今の時代、「品質は良くて当たり前」「値段も手ごろ」「安心して安全に使える」「ブラック企業ではない」など、世の中に提供される商品やサービス、提供する会社に対する消費者の期待は高く、ESG経営は、企業の安定性、持続性にとってなくてはならい指標である。

これは、モノづくり、サービス業、そのほか、あらゆる産業に共通した目標である。企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility, CSR)の一環として、ESG経営は今後ますます注目されていくだろう。

この流れは、人々の会社生活、いわゆる就労観や職業観にも大きな影響をもたらしている。社会起業家(ソーシャル・アントレプルナー)が注目されている。

社会にある課題について事業を起こすことによって解決する事業家をさした言葉だが、もっと広義でとらえれば、社員一人ひとりが起業までしなくても、誰もが日々の仕事を通して社会貢献を実現することが「ソーシャルワーク」である。会社にとってのCSRやESGが個人にとっては何に相当するか、そう考えれば分かりやすいはずだ。

本来、ソーシャルワークを狭義で言えば、困っている人、生活に不安を抱えている人、社会的に阻害されている人との良好な関係を構築して、専門的なアプローチで問題解決を図る対人援助を意味している。例えばコロナ禍の中で、逼迫する医療現場で患者やその家族が、安心して治療を進められるように相談に乗る医療ソーシャルワーカーが注目を集めている。

ソーシャルワークの本質は、弱者の救済や社会復帰に寄り添うことである。ソーシャルワークに取り組めるのは、専門職として成り立つソーシャルワーカーに限らない。

社会のあらゆる場所で社会参加している人にとって、自らの仕事がどのように社会に役立っているか、どのような社会問題を解決できるか、それを一人ひとりが個別に考えることが、仕事のやりがいとなり、それがまさにソーシャルワークであるのだ。

ソーシャルワークは、金銭的な報酬とは異なる報酬体系であるととらえることも大切である。ソーシャルワークで社会に貢献できたこと、そこから得られる満足度が報酬である。プライスレスな報酬を増やすことは、先が見えない現代を生きるビジネスパーソンにとって必要なことではないだろうか。

失業や減収で逼迫する厳しい現実があっても、豊かなソーシャルワークで救われることもある。どんなに収入が多くて生活が安定していても、人間関係に悩み、社会を良くしていくために自分の能力や労働力を活用させることが十分にできていない場合、真の幸福を感じられないかもしれない。

2021年、私たちは引き続きコロナ禍の混乱と不安の中にあるが、今こそ「働きがい」や「生きがい」に注目して、就労観・職業観・人生観のニューノーマルを模索していこうではないか。
(文:小松 俊明(転職のノウハウ・外資転職ガイド))

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