世界のエリートが「宴会」で決して手を抜かないワケ

世界のエリートが「宴会」で決して手を抜かないワケ

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 東京では、お花見の季節は終わってしまいましたが、しばらくは歓迎会など宴席が続くことでしょう。新人の皆さんは、当面は先輩に歓迎してもらえる立場かもしれませんが、すぐに幹事や宴会の盛り上げ役に回ることが期待されます。

 どうしても気分が乗らないのであれば、きっぱり断るのも手かもしれません。「ミレニアル世代は夜の席が苦手で」と煙に巻けば「まったく最近の若者は」とぼやかれるかもしれませんが、それも一つの意思表示。少なくとも誘っている人には本人たちが嫌なことを押し付ける気持ちはないはずです。

 一方で、どんな仕事であっても、頼まれるうちが華。これらのミッションに対してビジネスパーソンとしてどのように向き合うべきか。今回は意識を高くして考えてみたいと思います。

■幹事はプロジェクトマネジャー

 2016年3月、40歳の誕生日。親しい友人たちがパーティを開いてくれたのですが、幹事を務めたのが戦略コンサルの最年少役員に昇格した後輩。100行近いタスクリストを基に早朝電話会議を招集し、各担当に明確な指示を与えて企画を推進していく凛々しい姿を見ながら「幹事力はプロジェクトマネジメント力そのものだ」と痛感したものです(才能の無駄使い?)。

 与えられた予算と〆切の中で、集まった仲間の力を引き出して最大限の成果を生み出す。この点において、イベントの幹事はプロジェクト責任者そのものです。出欠確認や集金などの単純作業にとどまらず、企画についてある程度の裁量が与えられることも少なくありません。

 お店選び、参加者への連絡、席順、式次第の立案、関係者との調整、当日のロジスティクス。仕事の基本となる段取り力とプロジェクトマネジメント力、現場のオペレーション力が確実に身につきます。

 加えて、社内外の人たちとコミュニケーションを取り、共同作業を通じて親しくなる機会でもあります(余談ですが私の両親は会社の慰安旅行の幹事を共に務めたことがきっかけで社内結婚をしたそうです。「当時は携帯がないから社内電話で待ち合わせの連絡をとりあうのが大変だった」とも)。

 ビシッと宴席を仕切る過程を通じて、社内の先輩たちにも「あいつはなかなかできる若手だ」という印象をもってもらえるはずです。

 ちょっとした集まりでも、工夫次第で記憶に残る特別な時間となります。しばらく時間が経過してからも「あれはいい会だった」と参加者に言ってもらえるような会をプロデュースすることを目標にしましょう。

 このような意味で、新入社員の皆さんは幹事に積極的に立候補するべきだと思います。せっかく機会をもらえるのだから、参加者全員を唸らせるような、思い出に残る会をプロデュースしませんか。

■粋な遊び心を持つのがリーダーの条件

 先月、米国で話題になった動画があります。ハーバード大学の卒業式挨拶を頼まれたマーク・ザッカーバーグ(同校中退)が、同じ経験を持つビル・ゲイツにアドバイスをもらう、というものです。

「卒業式のスピーチを頼まれたけど、大学側は僕らが卒業していないって分かってるんですかね?」

「それがこの役の得なところで、スピーチをすると卒業生として学位をもらえるんだよ」

「え? 授業とか出ないでいいの?」

と盛り上がる二人。フェイスブックのオフィスで楽しそうに寸劇を演じる姿を、ハーバード大学のYouTube公式チャンネルが配信している点も心憎いです。

 このように、海外では「ちょっとしたユーモア」を見せられることが、慕われるリーダーの条件となっています。

 オバマ前大統領夫妻も、在任時は、職務中の真剣な姿と裏腹に、しばしばダンスや歌を披露し、茶目っ気のある姿を見せて、アメリカ国民に愛されていました。

 世界一の大富豪として知られるウォーレン・バフェットが成功を妬まれないのも、オマハという田舎町で質素な生活を続けていることに加えて、毎年発表する「株主への手紙」がウィットに富んでいたり、学生とふざけたポーズで記念撮影をしたりと、時折見せるチャーミングな姿のおかげでしょう。

 同様に、安倍首相がリオ・オリンピックの閉会式でスーパーマリオに扮して登場したことも、国内では賛否両論あったようですが、海外では概ねポジティブに受け止められたと思います。

「オン」の仕事は真剣に、「オフ」の時間は粋な遊び心をもって。ビジネスは上に行けば行くほど全人間性が試される総合力勝負。「この人と一緒に仕事をしたい」と思ってもらえるような人物になることが仕事力を高めることの本質でもあります。

■宴会芸はコミュニケーション

「飲み会の幹事や宴会芸も全力でやった方がいい」というと、どこか古き良き日本の熱血サラリーマンの姿を彷彿させ、時代遅れのように感じられるかもしれません。

 しかし、ふり返ってみると、私がMBA留学中や国際会議、あるいは外資系勤務時代、日本であっても海外であっても、イベントの手伝いを積極的にやったり、宴席を盛り上げようと汗をかく人間は、周囲の好感とリスペクトを得て、多くの仲間に囲まれていたような気がします。

 今風のキャッチーな見出しにするなら「世界のエリートは宴会芸に手を抜かない」といったところでしょうか。国や時代にかかわらず、「おもてなしの心」は大切なことなのです。

 それではイベントなどで行うパフォーマンスの類(いわゆる「宴会芸」)を積極的にやることが「得」と考える理由はなんでしょうか。

 それは、仕事だけでは伝わらない、自分の多面的な顔を、多くの人に知ってもらえる貴重な機会だから。そして、ひたむきに取り組む姿を通じて、チームやコミュニティに貢献したいという思いが通じるからではないでしょうか。

 数年前、ライフネット生命の大株主が来日された際のこと。会食は外国の方が喜んでくれそうなお店にご案内し、二次会はカラオケへ。外国のカラオケはややもするとバラードを長々と唄い続ける「自分のためのカラオケ」になりがちなのですが、ここはKARAOKEが生まれた地、「カラオケは場を盛り上げるツール」という趣旨を教えてあげました。

 私はX JAPANの「WEEK END」を熱唱し、同僚たち(男性)はモーニング娘。の名曲を踊り付きで披露。彼らは本場カラオケの奥の深さに感嘆していたようでした。あれから、先方の担当チームとは深い絆で繋がっているように思えます。

 このように書きながら、宴席でのパフォーマンスも、一種のコミュニケーションだということに気がつきました。

 好き嫌いも得手不得手もあるでしょうから無理をする必要はありません。ただ、一緒に仕事をしていく人たちと距離を縮める一つの機会をどのように活かすべきか、考える新年度としてもいいかもしれないと思い、私の考えを紹介させて頂きました。

(岩瀬 大輔)

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