村上世彰×堀江貴文 初対談 #1「あの一言で僕は堀江を好きになったんだ」

村上世彰×堀江貴文 初対談 #1「あの一言で僕は堀江を好きになったんだ」

©榎本麻美/文藝春秋

 村上世彰と堀江貴文――。意外なことにメディア上での対談は初めてだという。日本の常識に反旗を翻し、風穴を開けてきたふたりが、あの頃と今を語り合う。村上氏は『生涯投資家』(文藝春秋)、堀江氏は『多動力』(幻冬舎)を出版したばかり。顔を合わせたふたりは、挨拶もそこそこに、「出版におけるAIの活用」について話し始めた。

■AIで本を作れるか

村上 いきなりだけど、本作りのAIってどうなってるの? 堀江がしゃべったことをデータベース化して本にまとめたり、そこから売れた、売れないを分析してさらに進化するという話だっけ?

堀江 ちょっと待ってください。村上さんの中でAIというのが魔法の箱になっているみたいなんで、そこの技術的理解を進めないと(笑)。最近、なんでこんなにAI、AIと言われているかというと、ディープラーニング、日本語で言えば深層学習がものすごく進化して、人間のニューラルネットワークを模したコンピュータのアルゴリズムが試行錯誤しながら学習するようになったから。例えば今、Googleの翻訳はかなり正確になっていますよね。それはディープラーニングの成果です。

村上 なるほど。そのAIで本を作れるの? クリエイティビティが要るよね。

堀江 オリジナルのクリエイティブをアウトプットするのは得意分野ではないですよね、今のところは。でも、例えば星新一のショートショートみたいな小説はできると思いますよ。似たようなストーリーが多いから、その膨大なデータを与えれば同じようなアウトプットはできますよね。

村上 なるほど。今回、本を書いてみて思ったけど、これをどうやって構成していくかってグチャグチャ考えるのは大変で。AIがやってくれたほうが楽だなと。

堀江 そこの部分はちょっと難しいかもしれない。本を作る過程でAIを導入するなら、まず文字起こしですよね。AIを使った音声認識のAPIを使えば簡単にできます。校正も得意分野だと思うし、僕風の表現に変えるのも得意かもしれない。でも、構成は人間がやればいい。

■ウサイン・ボルトは社会に必要か

村上 堀江という人間が何をどう考えているかまで理解をして、さらにそのコンテンツをうまくまとめて、マーケットで一番評価されるものを作るところまでAIにやらせるのはやっぱりすごく難しいのかな。

堀江 本を作る作業というのはいろんなフローがありますよね。このフローの中でいかに人間を使わないですませるかを考えるより、AIが得意な部分を活かしてコストダウンしていく、あるいはリードタイムを短くする。人がやるか、AIがやるかという問題は実はどうでもよくて、どっちが安いか、どっちが速いかだけですよね。その流れで言うと、Amazonの倉庫、マクドナルドの厨房あたりは人がいらなくなる。

村上 その手の分野はどんどん人がいなくなるよね。そういう時代に一番価値のある人間ってどういう人なの?

堀江 みんな、よくそういう質問をするんですけどね。じゃあ例えば、ウサイン・ボルトは社会にとって必要ですか?

村上 別に必要ないけど、かっこいいよね。

堀江 100メートルをいかに速く走れるかって、実社会ではまったく役に立たないスキルじゃないですか。僕だってバイクに乗れば一発で抜けますよ。でも、ウサイン・ボルトかっこいいし、高収入でしょう。あれが未来ですよね。

村上 ん? よくわからない。

堀江 例えば、車も完全自動運転の時代になると、今、街中を馬で走っている人がいないように、自動車を運転する人はいなくなるわけですよ。でも、カーレーサーっていう職業は絶対残ると思うんです。それは競馬の騎手が残っているように、あるいは乗馬を趣味にする人が残っているように、サーキットでは相変わらず人間が運転する車が走っている。

村上 それってショービジネスということ?

堀江 はい。だから、エンタメ、スポーツ、ショービズはこれからバイ(buy)ですよね。

■村上氏が堀江氏を評価した理由

村上 そうなんだ。いやー、こうやって堀江にいっぱい話を聞いてるけど、いつもなかなかついていけないな。特にITやテクノロジーの分野はわからない。わからないものは人に聞く。人に聞いてもわからない時はある一定の期待値で投資する。それしかない。

 これまでも堀江とはいろんな案件で議論させてもらったけど、最初に出会った時に堀江が言った言葉はいまだに忘れられないんだよ。十年以上前に初めて話した時のこと。

堀江 ありましたっけ?

村上 うちの事務所に堀江の会社の人から電話がかかってきて、「一度対談してください」って言われた。その時は「知らないな、そんな男の子」と思ったけど、面白そうだと思ってOKしたんですよ。

堀江 ……ああ、あれはその時にいた社員が決めたイベントですよね。僕は面識はなかったけど、サイバーエージェントの藤田(晋)くんから村上さんの噂は聞いていました。藤田くん、村上さんにサイバーエージェントの株を買い占められて、「買収されそうなんですよ」って悲痛な感じでしたから(笑)。

村上 買い占めてないよ(笑)。あれは、藤田さんが資金調達したのに何に使うかはっきりしないから論理的に説明を求めただけ。今回ちゃんと本に経緯も書いてあるから。

堀江 ま、他人ごとなんで(笑)。

村上 それでイベントに行ってみたら、会社の中の20人ぐらいしかいない小さなスペースで。「なんじゃこりゃ」と思ったけど、でも、あの時の堀江の一言で僕は堀江が好きになったんだ。憶えてないかもしれないけど。

堀江 はい。

村上 イベントの前に堀江の会社の分析をしたら、時価総額が当時30〜40億の本当に小さな会社だった。でも、資金調達したばかりで現金が100億ぐらいあったし、黒字だったよね。しかも、堀江は20数パーセントしか持ってなかったから、イベントの時に「安いね。買っていいの?」と聞いたんですよ。そしたら、「どんどん買ってください。上場した以上は自由です。私は会社を買っていただくことに感謝申し上げます」と言ってくれて。その一言に僕は感動したんだ。結局、時価総額が低すぎて、大きな利益が期待できないから買わなかったけど。

堀江 その後4000億になりましたけどね。

村上 なったけどね(笑)。

■うまい棒と鈴木亜美

村上 僕はこの本にも書いているけど、堀江が言ったように会社とは「上場したら誰が買ってもいいもの」で、それが嫌なら上場してはいけないと思っているからね。面白い男がいるもんだと思った。それから付き合うようになったけど、堀江の会社に「うまい棒」が山ほどあったのも面白かったな。

堀江 PRに使ってたんですよ。トレードショーに出る時に、ノベルティーを作るじゃないですか。大体みんなボールペンとかクリアケースみたいな、クソつまんないものしか作らないから、会社の名前が記憶に残るようなものを作ろうと言ったんです。それで、オリジナルのうまい棒を10万本作った。

村上 堀江の会社に行くと、廊下にうまい棒が並んでるの。これはなんだ、とビックリしちゃって。持って帰った(笑)。

堀江 僕はそんなことばっかり考えてるんですよ。何が当たるか分からないから、いろんなネタを仕込む。変なこともいっぱい考えて、中断したものもあります。例えばライブドアのポータルサイトに登録したら、当時の有名アイドルのヌード写真が見れるとか。

村上 そうそう、その話は覚えてる。鈴木亜美でしょ。

堀江 はい。可能性はゼロではないなと思ったんですけど、ダメもとでお願いしたらやっぱりダメだった(笑)。そういうトリッキーなことからなにからいっぱい考えて、全部実行したんです。そうしたら、たまたまプロ野球が当たったんです。

村上 あれは当たったって言うの?

堀江 「プロ野球買います」と言っただけで会社の名前も知られるし、ドカーンと来たわけじゃないですか。

村上 まさに『多動力』の通り、堀江はまずやってみるというスタイルだよね。僕も一緒だけど。あ、野球といえば、本に書いていない話を思い出した……。

※村上世彰×堀江貴文 初対談#2「僕らが“プロ野球”に目をつけたワケ」に続く

構成:川内イオ 撮影:榎本麻美/文藝春秋

むらかみ・よしあき/1959年大阪府生まれ。1983年から通産省などにおいて16年強、国家公務員として務める。1999年から2006年までM&Aコンサルティングを核とする「村上ファンド」を運営。現在、シンガポール在住の投資家。今年の6月には『生涯投資家』(文藝春秋)を出版。

ほりえ・たかふみ/1972年福岡県生まれ。実業家、株式会社ライブドア元代表取締役CEO、SNS media&consulting株式会社ファウンダー。現在は、ロケットエンジンの開発を中心に、スマホアプリのプロデュース、有料メールマガジン配信、会員制コミュニケーションサロンの運営など、幅広く活躍。今年5月には『多動力』(NewsPicks Book)を出版。

(「文春オンライン」編集部)

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