【苦情殺到】楽天携帯が「つながらない」のはワケがあった!

楽天携帯「つながらない」と不満殺到し失望の声も 山手線の東京駅周辺で圏外に?

記事まとめ

  • 携帯電話事業に新規参入するはずだった楽天に、早くも失望の声が寄せられている
  • 10月中旬から5000名限定の「無料サポータープログラム」を始めたが、不満が殺到
  • 楽天のネットワークは、大手のような状態ではなく「つながらない」と実感したよう

【苦情殺到】楽天携帯が「つながらない」のはワケがあった!

【苦情殺到】楽天携帯が「つながらない」のはワケがあった!

携帯電話事業についての記者発表会で、質問を聞く楽天の三木谷浩史会長兼社長(2019年9月) ©時事通信社

 10月から「第4のキャリア」として携帯電話事業に新規参入するはずだった楽天に早くも失望の声が寄せられている。楽天は本格的な商用サービスが始められなかったため、10月中旬から5000名限定の「無料サポータープログラム」を提供し始めたのだが、ユーザーからの不満が殺到しているのだ。

 携帯電話事業者として肝心なのは、ネットワークだ。現状の楽天のネットワークは、とても大手3社に並ぶような状態ではなく、ユーザーとしては「つながらない」と実感してしまったのだろう。実際に筆者が都内を歩いてみても、地下から地上に出たり、大通りから一本入ったりしてしまえば圏外になることも多い。山手線で一周している間にも、東京駅周辺や渋谷〜品川間など区間によってはしばしば圏外になってしまう。楽天も、マンションの高層階や大きな建物の中心部などで回線が通じにくいケースが多いことを認めている。

 加えて、そもそも「接続エラーで全くつながらない」「圏外のままになる」という声もある。楽天の回線を使えるようにする最初の手続きに問題を抱えている可能性が高く、「楽天のネットワークに対応している」とされている指定のスマホを購入しても、ネットワークを使うことができないケースも起っているようだ。このような苦情を受けて、総務省が楽天に改善を要請する事態となっている。

■死屍累々の「第4のキャリア」

 そもそも、どうしてこのような事態が起ったのか。

 本来であれば、楽天は10月から商用サービスを開始し、圧倒的に安い通信プランでNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクに料金競争を仕掛けるはずだった。昨年8月、菅義偉官房長官が「携帯電話料金が高すぎる。4割値下げできる余地がある」と自信満々に発言したのも、楽天が既存3社を脅かすことが前提にあった。

 携帯電話でネット接続や音声通話をするには、街中にある基地局というアンテナに電波がつながる必要がある。しかし、すでに基地局を設置できるようなビルの屋上には既存3社が場所を確保しており、新規参入の楽天が用地交渉をするのは困難だといわれていた。

 結局、楽天は計画通りに基地局を設置できずに、10月の商用サービス開始も遅らせざるを得なかった。三木谷浩史社長は「新しい技術を採用しているため、慎重に慎重を期す」と説明しているが、要は「見込みが甘かった」のだ。

 この状況に、電波を割り当てた総務省もおかんむりの様子で、何度も行政指導を行っている。しかし、その総務省も安易に楽天に免許を与えた事自体、無責任だと言わざるを得ない。

 かつて、日本にはイー・モバイルやウィルコム、ツーカーなど第4のキャリアといわれる存在の会社はいくつもあった。しかし、どの社も続かなかったのは、大規模な設備投資を必要とする携帯電話業界において、日本には大手3社がやっと生き残れる市場規模しか存在しないからだ。

 しかも、既存3社はすでに20年以上、サービスを提供しており、全国津々浦々、隅々まで10〜20万近い基地局でネットワークを構築している。しかし、楽天は2025年までに2万7000局程度の基地局を建設する計画でしかない。仮に2025年までに計画通りにネットワークを完成させたとしても、大手3社に見劣りするのは明らかなのだ。

 どんなに安い通信料金プランだとしても「つながらない」のであれば、契約したいと思う人は皆無であろう。既存3社は、楽天のネットワークが3社と同等になって初めて、対抗する料金プランを打ち出してくる。それまで、既存3社は左うちわで楽天の動きを高みの見物しているはずだ。

 楽天がこの先、苦労するのが目に見えているにも関わらず、免許を与えた総務省もあまりに無責任といえるだろう。

■これでも大健闘している?

 そんな楽天参入のプロセスを取材してきた一人としては、「無料プログラム」で明らかになった楽天のネットワークは「健闘している」と言いたいくらいだ。楽天の技術陣並びに工事を受注している会社はかなり頑張っている。

 実は、楽天が現段階において自前でネットワークを構築しなくてはいけないのは、東京23区、名古屋市、大阪市。それ以外のエリアはauのネットワークにつながるようになっている。地下鉄や地下街、商業ビルやオフィスビル、主要ターミナル駅構内などもauのネットワークにつながる。他社の力を借りながらも、「圏外は多いけど、つながればなんとか使える」というレベルに到達しただけでも大健闘だ。

 むしろ現時点で批判されるべきは、ユーザー対応だろう。「サポートがつながらない」「メールの返事がない」などサポート窓口の対応がまともに機能していないことがすでに判明している。

 また、ウェブページ上で「出荷準備中」となっているにも関わらず、すでにSIMカードやスマホが届いているというユーザーもいた。楽天は、ネット通販を本業にしている会社のはずだ。ネットからの申込みに対して、それに見合った製品をきちんと送ることを長年、やってきたのではなかったか。ユーザーからの申し込みにまともに対応できないというのは、通信事業者以前の問題である。

■ソフトバンクも苦しめられた「レッテル」

 楽天は無理をして10月に無料プログラムを開始したが、これが本当に良かったのか、正直、疑問だ。携帯電話会社のネットワークは一度「つながらない」というレッテルを貼られると、その後、どんなに基地局を整備しても、つながらないイメージを払拭するには相当な投資と時間が必要となってくる。

 かつて、ソフトバンクがiPhoneを日本で独占的に販売していた頃、「iPhoneは欲しいけど、つながらないから、NTTドコモからiPhoneが出るのを待つ」というユーザーが多く、ソフトバンクを苦しめていた。

 その後、ソフトバンクは総務省と交渉し、新たにつながりやすい周波数帯が割り当てられたことで、ようやくNTTドコモやKDDIに肩を並べるネットワーク品質になった。今の楽天には、既存3社と同等に戦えるだけの周波数帯は割り当てられていない。

 総務省が本気で第4のキャリアとして楽天を既存3社に対抗できるだけの存在に育てたいのであれば、無責任に行政指導をするのではなく、つながりやすい周波数帯を今すぐに楽天に割り当てるべきだ。そうでなければ、これまでの「第4のキャリア」と同じように、楽天は勝ち目のない戦いに疲弊して尻窄みになっていくことだろう。楽天を活かすも殺すも総務省次第だ。

(石川 温/週刊文春デジタル)

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