小田原だけで死亡者は4年間で5人……ユニクロ潜入ジャーナリストがアマゾンに警鐘を鳴らす理由――2019 BEST5

小田原だけで死亡者は4年間で5人……ユニクロ潜入ジャーナリストがアマゾンに警鐘を鳴らす理由――2019 BEST5

©松本輝一/文藝春秋

2019年(1月〜11月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。社会部門の第2位は、こちら!(初公開日 2019年11月1日)。

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 ユニクロやヤマト運輸に潜入取材するなど “企業にもっとも嫌われるジャーナリスト”と呼ばれる横田増生が、このたび、アマゾンのなかでも国内最大規模といわれる小田原物流センターに入るなどして、『 潜入ルポ アマゾン帝国 』(小学館)を著した。

 アマゾンへの潜入は『 アマゾン・ドット・コムの光と影 』執筆時の取材以来で、15年ぶり。 「ネット書店」だったアマゾンも、今ではAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)など事業を広げ、生活するうえでなくてはならない企業までになる。

 そうしたアマゾンが引き起こす、労働環境や宅配業者の疲弊、租税回避といった問題を新著ではまとめている。前回に続き、今作の主な潜入先である小田原物流センターで死亡者が出ている件を中心に話を聞いた。(全2回の2回目/ #1 より続く)

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―――死亡者については、横田さんは複数の関係者の証言を得たり、遺族に取材されるなどしています。

横田 小田原の倉庫では、これまでの取材でわかっているだけで4年間に5人が亡くなっています。それで全部かどうか、アマゾンは答えていませんし、物流センターは全国で約20箇所あるので、日本全体だと何人が亡くなっているんだよっていう話ですよ。それを明らかにすることなく、アルバイトを集め続けるのは「どうなん?」っていう気がします。

―――人が亡くなる職場で働くのは不安でしょうね。

横田 10人くらい亡くなったという噂もあるし、アルバイトのなかでも、そういう話をいっぱい持っている人がいます。僕も作業中に車椅子で運ばれる人を見ましたけれども、その人がどうして運ばれたかの説明はなかったですね。

 カッターで手を切ったなどの事故については、1週間くらい毎日朝礼で言うわけです。だけど人が亡くなった話は絶対に出てこない。でも働いているとわかるし、倒れて運ばれるのを見ている人もいるので、なんで言わないんだっていう不信感が出てくる。疑心暗鬼にもなるし、あの人も死んだんじゃないかみたいな都市伝説にもなるし、ろくなことはないですよね。

―――倉庫内の死亡者はネットメディアでも取り上げられて話題になりました。

横田 死亡者について書いた記事がネットで公開されると、かならずヤフコメに否定的なコメントがつくんです。「たいしたことじゃない」「もともと病気をもっていたからだ」みたいなコメントが、なぜかいっぱい書き込まれる。不思議な現象ですよね。

人が倒れてもすぐに救急車が呼べない理由

―――ルポには人が倒れても、救急車をすぐに呼べないとあります。

横田 アルバイトは直雇用でなく、あいだに派遣会社をはさんでます。だから、まず現場から派遣会社へ、派遣会社からアマゾンへ……と報告が上がってから救急車がようやく呼ばれます。取材では、アルバイトの方が倒れてから救急車が到着するまで、1時間以上かかったケースがあったことも分かりました。

 それで人が亡くなってもアマゾンには責任がない。誰が死んでも、アマゾンが契約している人が亡くなったわけではないので、痛みも感じないですよね。

 それにしたって、倒れてから何十分も放置っていうこと自体がおかしいし、小田原だけで4年間に少なくとも5人も亡くなる作業現場自体がおかしいし、それを全然発表しないのもおかしいし、それをどこも報道しないのもおかしい。おかしいことだらけですよ。

―――死亡者については、横田さんの本を読むまで知りませんでした。

横田 それを書いたのは僕と「赤旗」くらいです。アマゾンは都合の悪いことを書いたところには取材させなくなるので、なかなか追及が厳しいですよね。正面から取材させてくれればもっとはやく終わるのに、裏から裏から取材しないといけないから時間がかかる。

 前の広報担当者は電話には出てきましたけれども、最近は電話もでません。メールだけで全部お断り。仕方ないので、直接ジェフ・ベゾスに取材申し込みのメールをしたら、広報から「受けられません」みたいな返事がきました。まあ、本社の広報も聞いているとおもいますけどね。日本の広報に「こいつ大丈夫?」って。

―――それで潜入するわけですね。「ユニクロ」は休憩室でのやり取りなどが面白かったですが、「アマゾン」は殺伐とした読後感でした。

横田 ルポは、そこにいる人から聞いた話があったほうが面白いのですが、アマゾンの倉庫だと人と話す機会がない。ユニクロは店舗だから、限られた人数が毎日顔を合わせて、言葉も交わしますけれども、アマゾンはひたすらハンディ端末と向き合って歩いているだけで。

 いちばん長い休憩時間は昼食の時間でしたが、そこでいきなり話しかけるのもちょっとハードルが高かったですね。広い食堂で誰かの隣に座って「いやー今日どうですか?」とはいかないでしょ。不審者過ぎると言うか(笑)。

■ユニクロが「ろくでなし」なら、アマゾンは「人でなし」

――ルポには物流センターばかりでなく、目黒の日本法人本社や海外での労働環境の苛烈さも書かれています。

横田 アマゾンは、どこでもパワハラ体質の企業なんです。ブラッド・ストーンという記者が書いた『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』にも出てくるし、僕の本にも出てくる話ですが、毎年一定数の人を切らないといけないっていう不文律がある。そういうノルマがあるから、その数に入れられる人たちは、いじめの対象になって不合理な目に遭い、自殺しようかっていう人も出てきますよね。

「ここから飛び降りろ」と言われた人もいるし、実際アメリカでは本社のビルから飛び降りた人もいます。幸運にも亡くならなかったけれども。取材していて思うのは、アマゾンの場合、どこで働いていても気が休まらないんじゃないか、ということ。物流センターであっても、目黒のアマゾンジャパンの本社であっても、シアトルの本社であっても。

―――そうした社風は、やはりトップの影響でしょうか?

横田 ユニクロは「ろくでなし」かなっておもったけども、アマゾンは「人でなし」という感じがしますね。ベゾスは人を追い詰めるタイプの経営者で、そういう意味ではユニクロの柳井さんも似てます。いつも危機感をあおって、社員を追い詰める。でもアマゾンのほうが陰湿で執拗じゃないかな。倉庫にいたらハンディ端末で時間に追われ、本社にいたら数字に追われ、毎年一定数の社員の首が切られ、過酷な会社ですよ。

―――そうした実態があまり知られていません。

横田 アマゾンで自由にものが言えるのは、ジェフ・ベゾスと副社長のジェフ・ウィルケ、AWSトップのアンディ・ジェシーの3人くらいです。彼ら以外はメディアには出てこないですし、出てきてもベゾスの言っていることを繰り返すだけですから。税金も払ってないこともほとんど知られてない。労働者が亡くなったことさえも知られてない。結局ほとんど何も知られていない。秘密主義で情報が出ないように囲ってきたわけです。

■企業に嫌われても、商品は嫌いにならない

―――横田さんは取材先の企業に嫌われながらも、商品やサービスは嫌いにならないですね。

横田 アマゾンを使うなっていうのは極端だし、宅配便も使わないわけにはいきませんからね。前に潜入した「ビックロ」にいくと、警報がなるんですよ。働いている人にご迷惑をかけても悪いので、ユニクロはいかなくなりました。でも、このジーパンはユニクロかもしれない(笑)。

 便利なものは便利なものとして使う、そういうところは認めとかないと。ボイコットまでいくと、僕の気持ちとしても外れるし、読む人の気持ちもつかめない。だから使いながらもその裏はなんなんだろう、というのが僕のベースにある気がします。

―――海外ではアマゾンをボイコットする動きもありますが。

横田 そうしたってアマゾン自体が変わるわけじゃない。「僕は20万円買うのやめました」と言っても、アマゾンにしたら「あっそう」っていう話でしかないですもんね。

 それでも、できることはまず知ること。知ることで、アマゾンプライムで何かを買うにしても、「お急ぎ便」や「時間指定」じゃなくてもいいやとか、些細なことだけれどもできます。僕は宅配便を使う時は時間指定しないんです。それだけでも配達するドライバーからすると、だいぶちがいますから。何時に運んでもいいってなると、配送ルートを組み立てやすくなる。

■日本でアマゾンが変わるには?

―――世界中で問題となっているアマゾン、日本で良い方向に変わることはあるのでしょうか?

横田 消費者でなくアマゾン自体が変わらないと意味がないですよね。でもそのためには大きな力がかからないと、企業の人たちは動かない。過労死基準に達してないから労基は入りづらいんでしょう。それにしても長時間労働でもないのに人が亡くなるっていうのは、やっぱりおかしい。

 僕は労働組合が日本でもできることを期待しています。ただ人の入れ替わりが激しいから労組もできにくい。ドイツはかなり定着率が高いので労組ができています。それにドイツの場合、派遣会社を挟む日本と違って、アマゾンとの直雇用だから労組もつくれた。

―――そうすると政治や行政に期待ですか?

横田 今頑張っているのは政治家、国税庁、公取委ぐらいですか。国税が動くだけでもだいぶ違います。政治家も、国会で三原じゅん子さんなどがちょっと質問しているけれども、もっとつっこんでもいい。税金を払ってないこと自体もほとんど知られてないし、これは国として大きな問題ですよね。誰かが言わないと、この企業の人でなしぶりは、変わらないと思います。

写真=松本輝一/文藝春秋

(urbansea)

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