コスプレスタジオ運営で年商1億円超 儲かる秘密を聞いてみた

コスプレスタジオ運営で年商1億円超 儲かる秘密を聞いてみた

「TOKYO UNDER GROUND shinjuku studio」のバイオカプセルセット

 ご存知の方も多いと思うが、漫画やアニメ、ゲームに登場するキャラクターになりきり、イベントに参加したり、写真撮影を楽しむ人たちのことをコスプレイヤーと呼ぶ。そのほとんどが女性で、彼女たちがコスプレ姿をより魅力的に撮影できる場所として、ここ数年、人気を集めているのがコスプレスタジオだ。一般的なスタジオとは異なり、廃墟や教室、図書室など、漫画やアニメ、ゲームの舞台を彷彿とさせる内装が施され、その世界にどっぷりと浸りながら撮影できるのが特徴だ。

 最近では、えなこさんのようにテレビ番組に出演したり、雑誌のグラビアを飾るなど世間的に注目を集めるコスプレイヤーも登場。それに憧れ、自分が有名になる手段としてコスプレを始める人も急増中。そんな時代の流れもあり、コスプレスタジオの経営は、驚くほど儲かるのだという。

 そこでコスプレスタジオの先駆けのひとつであるアイルートスタジオをはじめ、アイロッタスタジオ、アイルーインスタジオ、TOKYO UNDER GROUNDなど現在、東京都内を中心に9つのスタジオを経営するConyさんに、その実態を伺った。

■60万円の元手が、わずか2年で1億円に

 現在、40代半ばのConyさんが60万円を元手に1軒目のスタジオをオープンしたのは2013年のこと。今から5年前の話だ。そこから少しずつスタジオを増やしていくのだが、驚くべきことに4つ目のスタジオが完成した2年目には年商1億円を突破。3年目以降は年間で1億円台半ばから2億円に迫る売上を計上し続けている。ちなみに今、社員は社長であるConyさんひとり。仮想通貨の“億り人”さながらの稼ぎっぷりだが、この数字はコスプレスタジオの運営のみで叩き出したものだという。なぜ、そんなに儲かるのか? そしてConyさん流の成功の秘密とは?

 Conyさんの経歴を紐解くと、静岡県内の高校を卒業後、都内の大学で建築を学び、新卒で大手住宅メーカーに就職。建設の現場監督として奔走し、仕事漬けの日々を送る。2007年に退職すると、昔からやってみたかったカメラマンに転身。撮影を請け負う会社を転々としながらブライダルやスポーツ、学校写真など、さまざまな現場を経験。コスプレイヤーの撮影も始め、コスプレイベントを主催するようにもなっていく。

「当時はコスプレに使うウィッグやカラコン(カラーコンタクト)に安価な中国製が登場した頃。子どものお小遣いの範囲でも楽しめるようになり、コスプレイヤーの若年化が進行していました。一方で、一眼タイプのデジタルカメラや機材の価格がこなれてきて、趣味としてコスプレイヤーの写真を撮る、おもに中年男性が増えてきた頃でもあります。コスプレ撮影自体は盛り上がっていましたが、私個人にとっては、タダでレベルの高い写真を撮る人たちがいる中で、プロカメラマンとして稼ぐのはかなり厳しい状況になっていったんです」

■ピンチをチャンスに変える逆転の発想

 もともとこの世界では、コスプレ姿の撮影をその道で知られたカメラマンにお願いするケースも多く、実はConyさんもカメラマンとしてコスプレイヤーから撮影を依頼されることがよくあった。しかし、状況的にプロとしてはどんどん稼げなくなっている。そんな現実を踏まえて、Conyさんは発想を転換。自分が撮影するよりも、コスプレイヤーを撮影したいカメラ趣味の中年男性と、お金を払わずにできるだけキレイに撮ってもらいたいコスプレイヤーがリアルにつながる場所をつくって提供したほうが儲かると確信。コスプレ向けのスタジオの運営を思いつくと、物件探しに着手した。

「当時、事業を始めるための資金は60万円しかなかったので、とにかく家賃が激安の物件を探しました」

 見つけたのは足立区の五反野にある廃墟同然の物件で、5階建てビルの3階。広さ130平方メートルで、月々の家賃は7万円だった。

「実はそのままの状態では借り手がつかず、大家さんが建物の解体費用や逆に維持するための固定費がかかるくらいなら、安くても人に貸したほうがマシだと考えていた物件だったんです」

 安さを最優先に考えていたConyさんには絶好の条件だったので、この物件を借りることに。でも、その分リノベーションにお金がかかりそうだが?

■一見、コスプレと無関係の経験が活きた

「ボロボロの物件でしたが、内見した時にここをこう直したらイケるとわかったんです。住宅メーカーで長年、建築に携わってきた経験がここで活きました」

 そして、DIYで自らリノベーションを行い、初期費用を家賃や敷金、礼金を含めて予算内に抑えることに成功。まずは白ホリと黒ホリ、つまり中が真っ白と真っ黒のスタジオをつくってオープンさせた。とはいえ、黙っているだけでは当然お客さんは来ないため、コスプレイヤーとカメラマンの出会いの場にもなっているCOSPLAYERS ARCHIVEというコスプレイヤー専用SNSのイベント掲示板に無料で告知を載せたり、有料のバナー広告を使って集客を行った。

「2013年1月にオープンしたんですが、最初の3ヶ月は認知不足で全然お客さんが来ませんでしたね。そもそもコスプレスタジオという存在自体が新しかったんです。そのため当初は空いている時間にカメラマンとして外部の仕事も行っていました。でも4月になると告知が効いてきたのか、週末には多くのコスプレイヤーの方にご利用いただけるようになって、月商が150万円を突破。経営が軌道に乗り始めました」

 これで手応えをつかんだConyさんは、翌5月に空室だった3階から上の4階、5階、屋上の3フロアを、まとめて家賃10万円で契約。すべてスタジオにしてオープンすると、そこから売上が一気に増えていった。

■作品の世界に浸れる内装をつくり込み、人気が定着

「もともと建物自体が倉庫だったこともあり、電気も水道も通っていない状態でしたが、3階のスタジオの受付をお願いしていたアルバイトのスタッフにも手伝ってもらいながら、できる限りDIYでリノベーションを行いました。この時に最初のスタジオで得た利益を使って、教室や図書室、和室や廃墟など、漫画やアニメによく出てくる場所をイメージした内装をつくり込んだんです」

 その後もConyさんは、300平方メートルで家賃14万円の元皮革工場の物件や、ひとつ上のフロアの水が天井から漏れるため、四谷にもかかわらず140平方メートルで家賃12万円の物件など、激安物件を見つけたら契約し、自分たちでリノベーション。スタジオをどんどん増やしていった。

「COSPLAYERS ARCHIVEが行った数年前の調査によれば、週末に活動する関東エリアのコスプレイヤーはおよそ3万人。うちの系列だと大きなスタジオでも1日の収容人数は100人程度。当初はコスプレスタジオ自体が少なく、供給が不足していたので、スタジオの数を増やしても、そのほとんどが毎週末に混み合うという状況が続きました」

 しかし、そのうちコスプレスタジオが増えてきて、同業他社の中にはうまくいかずに潰れてしまうところも。なぜConyさんのスタジオは、多くのコスプレイヤーを魅了し続けているのか?

■水やスモークを使った特殊撮影で、一躍有名に

「さまざまなシチュエーション(部屋)を用意した上で、他社と差別化するために、特殊撮影ができるスタジオを作りました。するとそれが評判となり、コスプレ業界でうちのスタジオの知名度が上がっていったんです」

 例えば、代表的な特殊撮影のひとつが水を使った撮影だ。

「防水のスタジオを作って、飛ばした水にストロボの光を当てて撮影ができるようにしました。例えば、青いストロボの光を当てると水や氷、赤いストロボの光を当てると炎を表現できます。水や氷を使う魔法使いになりきったり、水泳アニメの水しぶきを再現したりできるんです。シャワーで水を降らせて、雨の中で仲間が倒れるシーンなども撮影できますよ」

「スモークマシンを使った撮影も人気で、足元に広がる煙がまるで雲海のように見えたり、背後に色のついた煙が広がるような、独特の世界観をつくりあげることができますね」

 Conyさんによれば、こうしたコスプレ業界特有の撮影技法が10種類ほど存在し、スタジオ撮影の価値をあげているという。

■人気が出そうな作品の情報をいち早くキャッチ

 また、Conyさんは、これから人気が出そうな作品の情報をコスプレイヤーから聞き出し、その世界観に合わせて既存の内装を変えたり、次にオープンするスタジオの内装に取り入れたりする努力も怠らない。

 スペースは広いが難ありの激安物件を自分たちでリノベートして初期費用を抑え、コスプレイヤーが“あったらいいな”と思うサービスを展開。理想のスタジオをつくり、その数を増やしてきたConyさん。現在10カ所目のスタジオを建設中だが、それが完成したらとりあえずスタジオづくりは一旦終了する予定だ。

「実はコスプレスタジオの利用者数が最近少し落ち着いてきたこともあり、ブームはあと5年くらいかなと思っているんです。ただ、コスプレイヤー人口の増減は、漫画やアニメ、ゲームの人気にも左右されるので、今後爆発的なブームを巻き起こす作品が登場すれば、再び盛り返す可能性もあります。実は意外と水物だったりするんですよね」

■コスプレイヤーの数は増えたが……

 最近では台湾やロシアなど海外から撮影に来るコスプレイヤーもいるが、その先行きはまったく見えないそう。かつては衣装を自作する人がほとんどだったが、今はハロウィンの仮装のような感覚で、完成品の衣装を購入して撮影を楽しむライト層が増えたことも、Conyさんにとっては気がかりだ。

「数年前までは、コスプレイヤーはいわゆる“オタク”の方がほとんどでした。でも、最近は流行りに乗っかるような感覚で撮影に来る子が多いんです。流行っているうちはいいんですが、ブームが去ると一気にいなくなりそうで怖いですよね。あとオタクの世界は閉鎖的なので、一般の人たちに広がることを嫌がります。だからライト層が増えることでオタクのコスプレイヤーからも敬遠されてしまい、気づいたら誰もいなかったなんていう状態にだけはならないようにと祈っています」

TOKYO UNDER GROUND shinjuku studio
東京都新宿区四谷4-7 小林マンションB1
http:// www.air-2013.com

撮影 杉山ヒデキ/文藝春秋(コスプレイヤーの写真を除く)

(石川 博也)

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