会社の未来は『組織の相』で予測できる 相転移―組織が臨界点を超えると何が起きるのか(前編)

会社の未来は『組織の相』で予測できる 相転移―組織が臨界点を超えると何が起きるのか(前編)

(写真はイメージ)

「誰からも相手にされず、クレイジーと思われるが、実は世の中を変えるような画期的アイデアやプロジェクト」をルーンショットという。物理学者であり起業家でもあるサフィ・バーコール氏は、せっかくのルーンショットを生かすも殺すも「組織の相(そう)」次第だという。バーコール氏が、日本を担う経営者たちへ「相転移(そうてんい)の科学」を伝授する。全2回、前編。(JBpress)

(※)本稿は『LOONSHOTS ルーンショット クレイジーを最高のイノベーションにする』(サフィ・バーコール著、三木俊哉翻訳、日経BP)より一部抜粋・再編集したものです。

「見えざる手」は「創発特性」である

 米連邦準備制度理事会の議長を6年務めたアラン・グリーンスパンは、2011年のフィナンシャル・タイムズ紙で次のように書いている。

 今日の競争市場は、私たちが認識しようとするか否かを問わず、どうしようもなく不鮮明な、アダム・スミスの「見えざる手」、そのいわば国際版によって導かれている。ごく稀な例外(たとえば2008年)を除けば、グローバルな「見えざる手」のおかげで為替レート、金利、物価、賃金率は比較的安定してきた。

 ここに問題がある。バブルやバブル崩壊といった「ごく稀な例外」を除いた市場の分析というのは、嵐や干ばつを除いた天候を分析するようなものだ。私たちは嵐や干ばつのことをぜひ知りたい。

 すべての経済学者がグリーンスパンに賛同したわけではないが、ある者は彼の論理を外交の分析に当てはめてみせた。「ごく稀な例外を除けば、ドイツは20世紀の間、近隣諸国との平和的関係をおおむね維持してきた」

 しかし、効率的市場や見えざる手はめったに破られない基本法則であるというグリースパンの見解は、幅広く支持されている。だが、それは誤りであり、それこそが、政策の大失敗の共通原因(投資家にとっては絶好のチャンス)だ。

 効率的市場も見えざる手も基本法則ではない。どちらも「創発特性」である。

 創発特性と基本法則の違いの一つは、創発特性は突如として変化し得ることだ。温度変化で、液体はいきなり固体になる。ある創発的振る舞いから別の創発的振る舞いへのそうした突然の変化が、私たちの言う「相転移」である。

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