au WALET、プレミアムバンク、au STAR、KDDIが提供する金融サービスに物申す!

au WALET、プレミアムバンク、au STAR、KDDIが提供する金融サービスに物申す!

@DIME アットダイム

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

 スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、携帯電話会社が提供する金融サービスについて話し合います。

■じぶん銀行のサービス変更に怒り心頭

房野氏:24時間980円で、国内と同じデータ容量で通信できる「世界データ定額」を始めた一方で、

振り込みやATM引き出しの手数料が無料だったじぶん銀行の「プレミアムバンク for au」が11月で終了したり、

 

 さらには「au WALLET Market」が1周年記念でキャンペーンをやったりと、auのサービス周りの話題が色々ありました。最近は通信サービス以外も積極的なキャリアのサービスですが、利用者視点で評価していただければと思います。


房野氏

石川氏:いきなりですが、auには初志貫徹しろと言いたい。じぶん銀行の振り込み手数料を無料にするなら、ずっとやり続けろと言いたい。プレミアムバンク for auの優遇があるからと、給与の振り込み銀行やメインバンクをじぶん銀行にした人もいたと思うんですよ。正直、自分もかなり迷った。それが「もう無理なんで、手数料無料は止めます」といわれたら、そりゃみんな怒りますよ。「大きく、変わります。」といっていた企業が、なぜ誰も納得できないようなミスを犯すのかと腹立たしく感じました。


石川氏

石野氏:少し前に、振り込み手数料無料は回数制限がつくようになっていて、それでもひどいと思ったのに、制限すらなくなる。田中プロ(KDDI 田中社長)に囲み取材でそれを突っ込んだら、「記者には色々言われたけれど、クレームは来ていない」と答えていたんですが、サービスに見切りをつけたらクレームを言わずに使うのを止めるだけ。CXO(お客様体験価値改革プロジェクト統括責任者)が改善すると言っている中で逆行しているし、ちょっと甘いなあという気がしました。


KDDI代表取締役社長 田中孝司氏


石野氏

石川氏:しかも、プレミアムバンク for auの代わりに11月から始まる「じぶんプラス」ですけど、自分がどんな優遇が受けられるかを確認できるステージ判定表が、まあ分かりにくい。ステージは口座の残高と取引内容によって決まるんですが、残高なんてコロコロ変わるでしょう。なぜこんなに分かりにくいんだと。

石野氏:資産を預けておく口座にしろって意味でしょうね。

石川氏:じぶん銀行はブレている。最初はすべてのケータイユーザー向けでau色を出さなかったのが、つい最近になってau色を出すようになって、次はどこにいくか分からないけどブレブレ。新しい長期利用者向けポイントサービス「au STAR」と組み合わせることを発表しているけど、だったら同時に発表すればいいのに。

石野氏:そうですよね、先に手数料無料を止めることだけ発表するのはどうかと思う。auは金融を軸にするとか、住宅ローンを組ませてとか、携帯電話と連携させたIoTという話までしている。そんな壮大な計画を立てている中で、超基本の振り込み手数料やATM引き出し手数料という小銭を急に徴収し始めるというのが、なんかセコいなあって。

石川氏:フィンテックはどこ行ったんだって話ですよ。

法林氏:波もあるなと思います。じぶん銀行ができたときは、若い人が銀行口座を持つのに調度良かったと思うし、アプローチは良かった。対するドコモはクレジットカードサービスの「DCMX」を作って、一時期重荷になっちゃった感があったけれど、ここ1、2年、ポイントサービスが注目されて、カードの方がポイントが付きやすいのでいい方向に行った。


「DCMX」のカード。現在は「dカード」へ移行

 逆にじぶん銀行は、外貨の預金を手軽にできることなんかは良かったけれど、他の金融機関も似たようなことをやり始めてネタがなくなってきた。次のネタがないので、ご飯のお金は確保しようということで手数料を上げたという感じがする。潮目が変わったとのと、もう1つは石川君がいったように、auの一貫性のなさ、見通しの甘さだと思います。


法林氏

石川氏:今、キャリアは、モノを売ったり金融や銀行をやったりと、非通信を押しているじゃないですか。ユーザーからすると「携帯電話会社が保険って大丈夫?」という気持ちがある。しっかりやってくれれば利用しようかと思うけれど、ブレると「やっぱり副業じゃん」「ノウハウないんじゃん」という評価につながると思う。ドシッと構えてブレずにやってほしい。ふわふわしちゃうと、ユーザーはついてこなくなる。

房野氏:今はマイナス金利政策で銀行は厳しい状況だと思うのですが、その影響もあるのではないですか?

石野氏:いや、金利は変動するものですから。そもそも、ATM引き出し放題や振り込み手数料が一定回数無料というのは、auユーザーだけの特典だったので、そんなに大きな影響はなかったはずなんです。それを止めてau STARと連動して新サービスを始めますといってますけど、なくすことだけ発表して、新サービスについては何も言わなかったんですよね。

房野氏:携帯電話会社ではありませんが、ソニー銀行とかソニー損保はどうなのでしょうね。

法林氏:実は意外に堅いです。

石野氏:ソニー銀行のサービスは非常にいいです。

房野氏:そうだとすると、auができないことはないですね。

石川氏:そう思います。ソニー銀行の経営者がすばらしかったのだと思う。

房野氏:ドコモのDCMXは、加藤前社長の手腕が良かったのでしょうか。

石野氏:どうだろう。夏野さん(ドワンゴ取締役などを務める夏野剛氏のこと。iモードやおサイフケータイなどドコモの新規サービス立ち上げに携わった)の頃にできましたけどね。

法林氏:最初にDCMXを作ったのは夏野さん。じぶん銀行は勝木さん(現KDDI バリュー事業本部金融・コマース推進本部長の勝木朋彦氏)や高橋誠さん(現KDDI 代表取締役執行役員副社長)たちがやって、当初はauの方が良かった。DCMXは失敗かと思われるくらいだったのが、ドコモの請求元がNTTファイナンスになって基本的に請求書を発行しなくなったとか、DCMX GOLDだとポイントがたくさんもらえるとか、決済系が変わってガラッと変わった。特にポイント絡みで大きく変わった。

 DCMXは「dカード」に変わりましたが、名前が変わっただけで内容はほぼ何も変わっていない。一方、クレジットカードに関してKDDIは3回変わっています。「au WALLET クレジットカード」の前に「auじぶんcard」、その前に「KDDI THE CARD」というのがあって、毎回失敗していて安定感がない。「こういう風に行きましょう」という感じがしない。

 DCMXは作ってみたものの、うまくいかずどうしようかというところに、加藤さんが社長になった。加藤さんは三井住友カードにしばらく出向していたので事情がよくわかっていたこと、いいタイミングでポイントの話が出てきたこと、ドコモ光が始まって決済する金額がさらに増えたこともあって、うまく乗せた感じがしますね。

石川氏:ドコモの大盤振る舞いが、いつまで続くかですよね。ポイント付与率が下がったりすると、ここにいる3人が怒り出す(笑)

房野氏:au WALLETはうまく行っていると考えていいのでしょうか。

法林氏:最初はうまく行ったんですよ。3キャリアともそうだけど、ポイントの使い道が携帯電話の機種変更くらいでしか使えなかったのを、au WALLETはプリペイド式のクレジットカードを発行して、それにポイントをチャージしてお金として使えるようにした。それは良かったと思うけど、その先の発展性がない状態ですね。

石野氏:プリペイド式のクレジットカードは、使い勝手もあまりよくないんですよ。

石川氏:au WALLETポイントが貯まらないんだよなあ。auは2回線契約しているし、auでんきにもしているし、クリーニングとかも全部、au WALLETで払っているのに。dポイントはめっちゃ貯まるんですよ。

石野氏:au WALLETはポイント付与率があまりよくないんですよ。200円で2ポイントですからね。

法林氏:しかも、au WALLET クレジットカードはゴールドカードができたのに、標準カードと料率が変わらないんだよね。dカードGOLDは率が高くて返ってくるけど。ドコモは本当、この1年くらい、すごい勢いでポイントが貯まった。歩いても貯まるしね(「歩いておトク」アプリのこと。歩くことでdポイントが貯まる)。

石野氏:現金で払ってもそこそこポイントが貯まるのは大きいですね。僕、ローソンで買い物しているだけでシルバーステージになっちゃいました(笑)

房野氏:ところで、ソフトバンクはTポイントですね。

石川氏:Tポイントって一見、利便性が高いけれど、自分は結構失敗だと思っています。dポイントカードやau WALLETカードは、ユーザーが使っているキャリアを再認識するんですよ。カードを使う度に、ドコモあるいはauを使っているからポイントが貯まるということを認識できる。一方、ソフトバンクはTポイントなので、貯まるだけでよく分からないんですよ。ソフトバンクよりTポイントの印象が強い。もったいないなと思います。

法林氏:ソフトバンクもクレジットカードで「SoftBankマネー」とか色々やったんだけどね。

石野氏:ソフトバンクはTポイントにだいぶ出資しているので、Tポイントが儲かるとソフトバンクも儲かる。

石川氏:ソフトバンクでしか使えない中途半端なTポイントも発行しているし、やっていることは一緒なんだけど、ブランド認知という面では、もったいないことをしている気がします。

石野氏:孫さん、Tポイント・ジャパンを買っちゃえばいいのに。

法林氏:Tポイントを買って、どこまでメリットがあるかなあ。元はツタヤだしねえ。

房野氏:キャリアはなぜ色々と食い散らかしているんでしょう。

石川氏:焦りがあるんですよ。auはとりあえずユーザーの方を向いて保険や電気、ショッピングを食い散らかしているし、ソフトバンクはARMやAR、ロボット、太陽光発電という食い散らかし方をしている。ドコモは通販や野菜、料理教室を食い散らかしてきた。スマホはこれ以上伸びないといわれる中で、各キャリアはお金があるうちに、なんとかしようという焦りが出ているのだと思います。

■au WALLET Marketにもひとこと言いたい!

石野氏:au WALLET Marketも心配が尽きない。やるならもっと本気でやらないとダメだと思う。普通はキャリアショップにものを買いにいくわけじゃないので、auでしか買えない幻のカレーみたいなものを置いて、それで客を呼び寄せるくらいやらなきゃダメだと思う。今の状態は中途半端で、ショップのスタッフに負荷がかかるだけ。

法林氏:au WALLET Marketは元広報だった人がやっていて、がんばっているのは分かるし、1周年記念の説明会でも色々話を聞きましたが、僕からすると、まだ1年前の「なにこれ」的な感じのまま。もっとやらなくてはいけないことがあると思うし、ちょっと物足りない。「ちょっといいものを売ります」とはいうけれど、いいものの基準は人によって違うと思うし、ドコモで「ワンダーコア」(腹筋マシン)を買う方が身近かなって気がしますね(笑)

 結局、他でも買えるんですよ。がんばっているのは認めるけれど、決め手に欠ける感じがする。以前も言ったけれど、auの全体的な構造論の問題。永遠の2番でしかなくて、1位を取りに行こうという気持ちが見えてこない。契約者数の話だけじゃなく。

石川氏:モチベーションとしても、ですね。

法林氏:そう、動画サービスについても同じ。「Netflix」の参入で大騒ぎして、蓋を開けてみたらそれほどでもなかったんだけど、そこで気合いが入った「Hulu」は内容が充実したとか、「Amazon プライム・ビデオ」が新作を次々とタダで見られるようにしたりとか、結構な争いになっているわけです。ドコモの「dTV」も家庭用テレビにつなぐ「dTVターミナル」を用意している一方で「Amazon FireTV」用のアプリを提供したりして、とにかく見られる環境をどんどん増やしている。だけど、auの「ビデオパス」は何もしていない。映画館でビデオパスのCMが流れるくらいで、全然話題にならない。

石川氏:auは目を付けるのはすごく早くて、いち早くサービスを始めるんだけど、早すぎて認知されない。我慢できず衰えていく間に他が盛り上がって市場ができていく、ということを繰り返している。我慢が必要だけど、それだけの体力がないのかなあ。

石野氏:(KDDIのメディア・コンテンツ系事業部が入居している渋谷駅前のビル)ヒカリエの人たちが、地に足が付いていない感があるんです。

法林氏:トレンドを追っているのは認めるんだけど……

石野氏:ちょっと追いすぎて、ふわっとしている。

■auが「大きく、変わる」には

石野氏:au Wallet Marketは、もっとPRすべきだと。auショップでいろんなものを売っていることを知っている人は多くないと思うんですよ。

法林氏:メディア関係者を連れて買い物ツアーでもやればいい。それが記事になって、モノが買える新しいauショップという宣伝もできると思うんだけど、そういう仕掛け方をしない。

房野氏:そんな状況で、KDDIは大丈夫なんでしょうか?

石野氏:でも、それがいつものKDDIサイクルって感じもします。周期でいうと、まだ大丈夫なんですよ。「KCP+」(auフィーチャーフォンの共通プラットフォームのこと。2007年に構築が完了)が最悪期だとすると、その前の「PENCK」が出ている頃なような気がする(笑)


2005年2月にauから発売された「PENCK」

房野氏:PENCKはちょっとケチが付いちゃいましたしね。

石野氏:世界データ定額もいいサービスだけど、開始当初のトラブルでケチが付いているし、まさしく“PENCK期”だ!

石川氏:なんでもかんでも「au design project」でいいのか、という時期だったなあ。

房野氏:じゃあ、そろそろ立て直さなくてはいけないでしょうね。

石川氏:立て直すのは今だという気がするけれど、立て直せるかなあ。対MVNO問題もしかり、au経済圏を作ろうとしているので、そこで浮ついている気がする。本来だったら「mineo」のケイ・オプティコムを仲間に入れるべきなのに、au経済圏にこだわってUQ mobileをなんとかしようとしている。au系MVNOを使いたい人はmineoを選んでいるのだから、もっとケイ・オプティコムと仲良くなればいいのに。優先すべきもの、仲良くなるべき相手が見えていない感じがする。

房野氏:変わるのはなかなか難しそうですね。

石川氏:田中社長は変えたいと思っているんだけど、何を変えたらいいのかが分かっていない。

石野氏:だから夏モデル発表会で「大きく、変わります。」と宣言したんでしょうけど、変えなくてもいいじぶん銀行まで変えちゃった。そこチェンジしちゃダメでしょう。

法林氏:厳しいよね。「auスマートサポート」なんかはよくやっているんだけどね。

......続く!

次回は『iPhone 7』についての会議です。ご期待ください。


法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。


石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。


石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。


房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

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