猫背矯正ウエアラブルから牛専用のコンフォートウェアまで、ユニークなグンゼのテキスタイル戦略

猫背矯正ウエアラブルから牛専用のコンフォートウェアまで、ユニークなグンゼのテキスタイル戦略

@DIME アットダイム

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

◆中期経営計画「CAN20」に基づいた2つのプロジェクト

 今年の1月に開催された「ウェアラブルEXPO」でも注目された、グンゼのウェアラブル事業などについての進捗状況が、2016年東京地区グンゼ事業報告会にて発表された。

 2020年をゴールとする同社の中期経営計画「CAN20(キャン トゥエンティ)は、QOLの向上に貢献する健康・医療分野を成長の核とし、各事業分野の技術や知見を融合させた「ナイチンゲールプロジェクト」と「エジソンプロジェクト」に取り組んでいる。

「ナイチンゲールプロジェクト」では医療現場や患者の声を製品づくりに生かした「メディキュア」を開発。術後の肌や敏感肌を意識した、完全無縫製や洗剤が残りにくい低刺激インナー、頭皮に優しいサポートキャップ、ハイウェストショーツ(2016年内発売予定)などを発売している。

「エジソンプロジェクト」は、既存技術、既存ノウハウを組み合わせることによって、組織の壁を超えて、技術や英知を結集し課題解決を図るというもの。新しい技術を開発しても顧客ニーズを掴まないと事業として新しい価値を創造できないと、グンゼが保有する開示可能な技術を公開する、メーカーや研究開発者向けの技術ポータルサイトを立ち上げた。2015年度は約10か月の運営で59件の問合わせがあり、今年はさらに用語集、開発技術集というキーワードを提示する活動を行い、2016年度前半で80件ほどの問い合わせが来ているという。

 同プロジェクトから生まれたのがウェアラブルなどの高機能テキスタイル。肌着、靴下などで同社が培った繊維加工技術、人体適合性評価技術といったアパレル事業と、プラスチック事業、エンプラ事業、タッチパネル事業により培った、電子回路形成技術や表面加工技術といった機能ソリューション事業が、“快適性のある電子部品”というコンセプトを組み、ウェアラブル市場に向けて活動を続けている。

◆衣料型ウェアラブルシステム「美姿勢」

 着るだけで姿勢や心拍などのバイタルデータを測定できる「美姿勢」はNECとの技術協力によるデバイスが装着された肌着で、微弱な電流を通す金属の繊維がセンサーとして編みこんであり、標準姿勢から猫背になると背中の生地が伸びることにより、電気抵抗値が変わりデバイスで読み取って、そのデータをスマホ画面でチェックする。角度によってどのくらいの猫背なのかもわかる。姿勢チェックが基本だが、デバイスを変えれば心拍のようなバイタルデータを取って消費カロリーなども表示することができる。複数の開発部の技術を結合したCFA(クロスファンクショナルアプローチ)を活かし、電気を通すのに伸縮性が出せる肌着というのが大きな特長だ。

 スポーツクラブで実証評価を9月まで行い、ユーザビリティ評価を受けて10〜11月に再度商品開発を進めてスポーツクラブ向けのプログラム策定。2017年春にテスト販売を開始予定。個人向けの販売ではなくスポーツクラブ向けのBtoBで、蓄積したデータをスポーツクラブで管理してトレーナーがユーザーにサポートするような形となる。

 1月の「ウェアラブルEXPO」ではデバイスが胸のあたりに付いていたが(下記画像左)、女性からの評判が悪かったため、胸の下あたりにデバイスを付けた(下記画像右)。この位置だと非常に安定するので正確なデータが取れるという。

 

◆家畜コンフォートウェア「うしブル」

猛暑に見舞われているここ数年、真夏は牛がエサを食べる量が減り、乳量が下がってしまうため、酪農家の間では夏場の乳量の生産量低下は喫緊の問題になっている。床に散水して気化熱で冷やしているがそれだけでは対応できなくなっており、大型扇風機も使うが効率も悪く電気代もかかるので、酪農家は暑さ対策に頭を悩ませている。

「うしブル」は同社の「ラディクール」という肌着やパジャマに使われている接触冷感素材と、注水システムを組み合わせることで牛の暑さ対策に役立てる牛専用のコンフォートウェア。グンゼの創業地が京都府綾部市だったことから、共同開発を行っている京都府農林水産技術センター畜産センターから「おたくの会社は夏場に着る冷たい素材の生地を持っていましたよね」という打診があったのがきっかけだったという。ラディクールを牛用に転用したものだが、体重が約800kgある牛の場合、面積が大きく熱伝導がうまくいかないため、注水と併用する形になった

 接触冷感素材を使い、黒い部分の中にチューブを通し注水する。形自体も改良を重ね牛がひっかけても脱げないような工夫も。牛舎の上に設置したパイプに繋いで注水し、給水弁もデバイスで調整できる。注水センサーはさらに改良して、乾燥度を測ったり、牛の体温なども含めて注水の指示が出せるように開発中とのことで、今年の6〜10月にかけて実証評価を行ったが、来年度も実証評価を継続する。2018年春に「うしブル」システムの販売を予定している。

 1月の展示会でも「うしブル」は評判が良く、動物用で出しているのは同社と別の1社だけで、とくにグンゼは家畜用としての商品のため、データとノウハウが加われば、動物園の動物の管理や、ゆくゆくは家庭用ペットの健康管理まで広げられるのではないかと期待している。

【AJの読み】CFAから生み出されるユニークな事業

 今年8月に創業120周年を迎えたグンゼ。肌着や靴下、ストッキングのイメージが強いが、1985年にスタートしたタッチパネル事業で培った電子回路形成技術や表面加工技術などを保有しており、多くの電子部品メーカーに採用されている。エジソンプロジェクトは各部門の保有技術をミックスする(CFA)ことで、幅広い顧客ニーズを解決するビジネスを創ることを目的としており、2020年度売り上げ目標を50億円としている。今後は「美姿勢」以外でも、他の機能を備えたウェアラブルを開発していく予定とのことで、健康維持のための一般向けウェアラブル商品の販売が待たれるところだ。

文/阿部 純子

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

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