歌舞伎町ラブホテル街で賃貸経営が成功したもっともな理由

歌舞伎町ラブホテル街で賃貸経営が成功したもっともな理由

(C)日刊ゲンダイ

今から10年ほど前のことです。20代の2人の経営者が、私の会社を訪ねてきました。彼らは当時の私から見ても、あまりにも若く、会社の社長というよりは、カフェの若手オーナーといった雰囲気でした。

 新宿・歌舞伎町で、広告代理店を経営しているという2人。歌舞伎町の飲食店や風俗店を相手に、Webサイトや名刺の作成をしているとのことでした。

 そんな彼らが新たな事業として、歌舞伎町周辺で不動産賃貸事業を始めたいというのです。そこでコンサルティングをしてほしいと、私のもとにやってきたのでした。

 しかし当時、歌舞伎町周辺のイメージといえばいわゆる「ラブホテル街」といったものでした。端的に言えば、「風俗業の延長の街」だったのです。

 かつてこんなこともありました。会社員時代、上司と会食に出席するため、JR新大久保駅で降り、歌舞伎町方面へ歩いていました。すると、私たちがラブホテル街に入ったとたん、道路の辻々に立っていた女性がいっせいに逃げ出したのです。2人そろって黒い革のハーフコートを着ていたので、どうやら我々を警察官と勘違いしたようでした。

 私にとっての歌舞伎町は、小学生のときは映画を観に行くたびに不良少年からカツアゲされた街であり、高校生のときは不良がたむろするディスコの街であり、社会人になってからは「ぼったくりバー」のような近づいてはいけない飲み屋がたくさんある街といったイメージでした。そのような街で、アパートやシェアハウスといった賃貸業が果して成立するのか、はなはだ疑問でした。

 ところが彼らは、「自分たちは歌舞伎町でずっと商売をしてきたので、この事業には自信があります。とにかく一度、見にきてくれませんか」と言うのです。そこで私は、かつてのように大久保駅から南下し、歌舞伎町へ向かうことにしました。

 改札口を出た瞬間、そこに広がっていたのは、かつてとまったく異なる光景でした。平日の夕方4時ごろでしたが、駅へと入ってくる中高年女性の集団と、駅から街へくりだそうとする女子高生の集団で、とにかく大混雑なのです。歩道には人があふれ、思うように前に進めないほどでした。

 私の知らない間に、私が「ラブホテル街」と思っていた歌舞伎町の北側エリアは、大きく変貌をとげていたのです。

 街が変化した理由は、言うまでもなく『冬のソナタ』以降の韓流ブームと、K?POPの流行です。かつてのコリアンタウンが、中高年女性と女子高生が大挙して訪れる「聖地」となったのです。そこはまるで、原宿にも似た賑わいがありました。

外国人観光客にも人気の街

 それだけではありません。最近はインバウンドの影響で、多くの外国人観光客がこの街に宿泊するようになりました。海外でも有名な繁華街、歌舞伎町まで徒歩圏内と言う地の利が人気の理由です。

 外国人からすると、眠らない街・歌舞伎町は、夜通し楽しめるナイトスポットです。しかも、真夜中に女性が歩いても(世界基準で考えれば)比較的安全で、彼らにとって治安が悪いと言う印象はありません。

 もともと新宿には、新宿駅西口側の高層ビル街に有名な高級ホテルが数棟あります。しかし、こうしたホテルよりも歌舞伎町へのアクセスが良く、なおかつ宿泊費は当然ながら安いため、長期旅行者を中心にホテルの需要が高いです

 こうして歌舞伎町の北側エリアは、さらに国際色豊かな街になって行きました。ラブホテルの一部はまだ残っていますが、かつての「怪しい街」という印象は、ほとんど見られなくなりました。

 結局、10年前に歌舞伎町周辺で賃貸経営を考えていた2人の若い経営者の発想は、間違っていないどころか大当たりだったのです。

 現在では、一大ホテルチェーンの「アパホテル」が、歌舞伎町の内と外に何棟ものホテルを建設しています。ただ着想としては、彼ら2人のほうが何年も早く先を行っていたことになります。

 世界でも類を見ない人口集積地である東京中心部においては、このようなダイナミックな変化が珍しくありません。不動産を長く見てきた私ですら、予想もできなかったことが起こっているのです。

(長谷川高・著「不動産2.0」イーストプレス刊より)

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