積立金不足で修繕できず…全国に92万戸「老朽化マンション」の深刻状況

積立金不足で修繕できず…全国に92万戸「老朽化マンション」の深刻状況

表=築後30、40、50年超えの分譲マンション戸数(C)日刊ゲンダイ

新型コロナによる自粛生活の真っただ中、今年6月に「改正マンション管理適正化法」が公布された。その背景には、マンション老朽化に伴う修繕を巡るトラブルや事故、住民の高齢化による管理組合の担い手不足など深刻な問題がある。

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 国交省によると、マンションは全国に665万5000戸(2019年末時点)。国民の8人に1人にあたる、1551万人が居住している計算だ。そのうち91万8000戸は築40年を超えており、10年後にその数は2・3倍の213万5000戸に激増する。

 マンションの平均寿命は46年。しかも、マンション全体のうち104万戸は1981年以前に建てられた旧耐震基準だ。一刻も早く修繕を進めたいが、これらには多額の費用がかかる。積み立てていたはずなのに、多くのマンションで耐震診断すらできない状況にあるという。

■工事費は1戸当たり、平均120万〜150万円

 マンションの維持管理に詳しい、マンショントレンド評論家の日下部理絵氏はこう言う。

「毎月の管理費等を滞納する人も少なくなく、長引くほど滞納者から回収できないという事例は珍しくありません。大きいマンションになると1棟1400ほどの区分所有者がいます。長期滞納者が複数いれば、その分、修繕に充てられる実質の費用が減るのです。理事会の理事は2年に1回程度で代わってしまうため、そうした管理が難しい。

 また、大規模修繕の工事費(12年周期)は1戸当たり、平均120万〜150万円とされています。たとえば50戸のマンションなら、新築で入居して12年後までに6000万〜7500万円は必要になる。この間に別のトラブルに費用を使わざるを得ないこともありますし、途中で増税がありましたので、修繕時に消費税分が足りないこともある。不足分の徴収を巡ってもめるケースもあります」


資金不足で長期修繕委員会が「解散」

 さいたま市の70代の男性は、築37年になる5階建てのマンションに住んでいる。最寄り駅からバスと徒歩で20分ほどの立地にあり、高齢を理由に手放すことも考えていたというが、今年7月、ポストに投函された「定期総会開催の案内」の封書を開けて驚いた。

「長期修繕委員会からの報告として〈一旦解散となります〉と書かれていました。数十年積み立ててきた修繕積立金を使い切ったというのです。文面によれば、現管理組合理事会と同意の上とありました」

 男性は新築時から住んでおり、管理組合の役員を務めた時期もある。

「確実に積み立てていたし、うちのマンションは大手ディベロッパーの子会社が管理に携わっている。だから信用していた。過去の総会で1000万円程度する水道を通すためのポンプの購入には合意はしましたが、そのほかうちのマンションで大規模な工事は一度もない。使い切ってしまったことに驚いています。これでは売ることもできないし、建て替えや修繕が必要になったらどうしたらいいのか……」

 男性のように長年積み立ててきたはずの修繕積立金が枯渇していたり、必要なときに工事ができなかったというケースはある。

 だからといって老朽化は放置もできない。09年に沖縄県浦添市の当時築35年だったマンションで、2階の長さ15メートルの廊下が老朽化で突然崩壊。すぐに建物が使用禁止になって住民は退去させられた。17年には、札幌市西区の賃貸マンションの外壁のひさし部分が崩落。鉄筋コンクリート7階建てで、築45年だった。いずれも“寿命”に即して管理不全で起きている。いつ自分のマンションが現場になってもおかしくないのだ。

■購入前には「長期修繕計画書」の有無を確認

 また、実家の築古マンションを空き家にしているとリスクが伴う。

 今年7月には滋賀県野洲市が、1972年建築の鉄筋3階建てで市内の老朽化した空き分譲マンションを行政代執行によって取り壊した。連絡のついた区分所有者9人に解体を命じたが応じなかったためだ。市は今後、9人に工事費用の1億1800万円を等分し請求するという。

「老朽化した物件を放置しておくのはリスクが伴います。とはいえ、所有するマンションを手放す際は『新耐震基準』か、決まった周期に修繕が行われているかなどが売却価格に影響します。だからこそ、新築・中古マンションを問わず、購入前には不動産屋の担当者に『長期修繕計画書』の有無を確認し、修繕積立金は会計の残高や値上げの予定も聞いておきたいです。25年以上の計画に沿って、修繕積立金を徴収しているなら安心です」(日下部理絵氏)

 6月に公布した「改正マンション管理適正化法」によって、外観ではわからないマンションの管理状況に自治体や企業が「お墨付き」を与えることができるようになる。たとえば、管理組合の活動や修繕資金計画の健全性などを診断し、一定以上の水準なら認定する制度だ。22年に施行されるが、「修繕その他の管理にかかる資金計画」などに欠陥があればダメマンションの烙印が押され、中古市場で相手にされなくなる恐れがある。法改正でずさんな管理組合がゾロゾロ出てくるかもしれない。

 中古マンション購入を考えるなら、「修繕計画」や「管理組合」の状況も考慮しなければならない。


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