新「デフレの勝ち組み」 勝利の方程式とは

新「デフレの勝ち組み」 勝利の方程式とは

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本格的な賃金上昇がなかなか実現しないなか、大規模な金融緩和政策を続ける日銀を尻目に消費者の節約ムードがじわり高まり、物価上昇どころかデフレが再来している気配もある。そんななか、低価格路線で客を引きつける「デフレの勝ち組」が勢いを持ち、改めて見直されている。

仕事を終えて帰宅途中、1人で簡単なつまみを食べながら少し酒を飲む「ちょい飲み」。小遣いに限りがあるなか、居酒屋あるいはスナックなどで酒を飲まずにラーメン店などでこうした「ちょい飲み」を楽しむサラリーマン(女性も少なくないらしい)が増えている。この「ちょい飲み」需要の追い風を受けて業績を拡大しているのがラーメンチェーン「日高屋」を展開するハイデイ日高(東証1部上場)だ。

アルコール類の利益率

ハイデイ日高が2016年9月28日に発表した16年8月期中間単独決算は、純利益が16億円と、過去最高を更新した。通期については16年2月期まで12期続けて過去最高益を更新中だ。もともと「中華そば」が390円(税込み、以下同じ)と、ラーメン店として格安が売り。ビールはジョッキ生1杯310円。ラーメン、餃子(210円)、ビールを合わせても900円ほどで済んでしまうという財布への優しさ。ビールは分量が確定し値段を比較しやすい「中瓶」で430円と、アルコールの価格も安い。ちなみにファミリーレストランのロイヤルホストでビール(中瓶)を頼むと600円前後かかる(店によって違う)。

ハイデイ日高のルーツはさいたま市。屋号の「日高屋」、社名の「ハイデイ日高」は創業者の出身地、埼玉県日高市に由来する。店舗のほとんどは首都圏展開のため、関西圏などでは知る人は少ないかもしれないが、店舗の立地は都心の駅前雑居ビルの1階が多く、帰りがけに電車に乗る前にちょっと立ち寄る――という人が入りやすい。今(16)年8月末時点の直営店舗は390店舗。「首都圏600店」の目標に向かって駅前の物件探しに余念がない。

材料費や調理などにコストや手間がかかる料理と違ってアルコール類は利益率が高いため、ハイデイ日高はさらに「ちょい飲み」需要を取り込もうと動いている。例えば赤提灯を店先につるす。あるいは、ずばり看板に「ちょい飲み」と掲げる。飲んだ後のシメのラーメンではなく、「1軒目」であることをアピールする狙いだ。現在のハイデイ日高の売上高にアルコール類が占める割合は17%程度で、1割を切るとされる一般的なラーメン店より高めだ。

かつての「デフレの勝ち組」の現状

他方、ハイデイ日高などに客を奪われ、劣勢な居酒屋業界にあって一人気を吐くのが関西発祥の焼き鳥チェーン「鳥貴族」。こちらも16年4月に東証1部に格上げされている。

鳥貴族の売りは、何と言ってもメニューが280円(税別)均一と貴族と言うにはいかにも格安な点だろう。9月9日に発表した16年7月期単独決算は純利益が前期比67.7%増の9億8100万円と過去最高を更新。売上高が31.3%増の245億円と伸びる中で利益をしっかりと確保しており、着実に成長している。ファミリーレストランや居酒屋が人件費の高騰などで値上げを余儀なくされているが、「280円」を死守していることが支持されているようだ。

格安と言えば「ミラノ風ドリア」(税込み299円)や「マルゲリータピザ」(同399円)などで知られるファミリーレストランのサイゼリヤ。堀埜一成社長は「値上げをしないことが支持されており、これからも値上げしない」と常々強調している。7月に発表した15年9月〜16年5月連結決算は純利益が前年同期比23.0%増の37億1400万円。客足が伸びたことなどから売上高は5.5%増の1076億円だった。

かつて「デフレの勝ち組」だった牛丼はどうか。吉野家は、16年4月に4年ぶりに投入した、牛丼(並盛380円=税込み)より低価格の「豚丼」(並盛330円=同)が好調だが、人件費の上昇でコストが増大。吉野家ホールディングスの16年8月中間連結決算は売上高が前年同期比0.5%増の934億円で、営業利益は20.7%減の9億4500万円。復活の兆しはあるが好調とまでは言えないようだ。

マクドナルドは異物混入などの不祥事による最悪期は既に脱しており、9月には値引きメニュー「400円ランチ<税込み>」などを投入し、さらなる客足の回復を目指している。