待機児童「4年ぶり減」でも全く安心できない理由

待機児童が4年ぶり減少も課題 東京都は土地や保育士は不足、待機児童数も全体の3割

記事まとめ

  • 希望しても認可保育園などに入れない「待機児童」が、4年ぶりに減少に転じた
  • 待機児童数は東京都が最も多く5414人で全体の3割、以下兵庫県、沖縄県、埼玉県と続く
  • 安倍晋三政権は2017年度末に待機児童をなくすとしていたが達成の見通しは立っていない

待機児童「4年ぶり減」でも全く安心できない理由

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希望しても認可保育園などに入れない待機児童が、4年ぶりに減少に転じた。厚生労働省がまとめた2018年4月1日時点の待機児童数は前年から6186人減って1万9895人となった。2万人を下回るのは、実に10年ぶり。国の補助で「企業内保育所」整備を促すなど、都市部で受け皿は増えた。ただ、土地や保育士は不足しているほか、幼児教育の無償化で潜在的な保育需要が表に出てくる可能性もあり、政府が掲げる「2020年度末までにゼロ」への道のりは容易ではない。

今春の認可保育所などへの利用申込者は約271万人(前年比約6万人増)と、過去最多だった。総定員も前年から10万人近く増えて約280万人となり、全体では総定員が利用申込者を上回る。ただ、都市部に希望者が集中し、待機児童は解消されない状態が続く。

保育士不足の影響

都道府県別の待機児童数は、東京都は前年より3172人減と大幅に減ったが、なお最も多い5414人と、全体の3割近くを占めた。以下、兵庫県(1988人)▽沖縄県(1870人)▽埼玉県(1552人)▽千葉県(1392人)と続き、以上5都県が1000人を超えた。

1741市区町村のうち待機児童がいるのは前年から15増えて435、うち100人以上いる自治体は48あった。首都圏、近畿圏で多く、他の政令指定市、中核市を含めた「大都市部」で計1万3930人と70%を占めた。前年トップの世田谷区は、今年は486人で3位。兵庫県明石市(571人)が初めてトップになり、岡山市(551人)が続いた。4位は江戸川区(440人)、兵庫県西宮市(413人)が5位だった。増加数が最も多かったのは、さいたま市で、前年のゼロから315人になった。神戸市(239人増)などは、親が育休中でも待機児童に数えるよう定義を厳しくしたことが響いた。

年齢別では0〜2歳児が1万7626人で全体の9割近くを占めたが、3歳以上の児童と比べ手がかかり、保育士不足の影響をもろに受けている。

また、認可保育所などに入れなかったが、兄弟姉妹と同じ園を希望するといった理由で待機児童にカウントされない「隠れ待機児童」は6万7899人(前年比1325人減)と、なお高水準だ。

幼児教育無償化で「潜在的需要が顕在化」か

安倍晋三政権は2017年度末に待機児童をなくすとしていたが、達成の見通しが立たず、17年に「20年度末まで」に先送りした。これを達成するためには32万人分を追加整備する必要があるというのが政府の試算で、厚労省が市区町村の計画を集計したところ29万3000人分の見通しがついているという。これなら、もう一息と思えるが、そう簡単ではないとの見方が強い。

まず、用地や保育士が足りない。東京都区部など大都市では土地がたりず、公園や小学校の校庭などを使うなど厳しい対応を迫られている。施設ができても、保育士不足も深刻で、保育士を確保井できなかったために開所を遅らせたり、定員をカットしたりするケースもある。自治体間で人材奪い合いの様相を呈し、東京都が独自に保育士賃金を月4万円超補助する制度を設けたあおりで、千葉県などでは人材獲得競争で後れを取っているという。

併せて保育の質の低下への懸念もある。物置などのスペースを組み込んで面積基準をクリアして定員を増やすといった対応をする保育所もある。園庭がなくても近くの公園などを代わりに使う保育園も認可するという規制緩和で、園庭なし保育園が全国的に増えている。

安倍政権の幼児教育無償化で、潜在的需要が顕在化し、待機児童が増えるとの指摘もある。

野村総合研究所は小学校入学前の子どもの母親約4000人を対象にしたアンケートと国勢調査などを踏まえた推計を今18年夏にまとめている。それによると、申し込みを諦めた人を含め、希望したのに保育所に入れていない人は4月時点で推定34.8万人と、厚労省のまとめた隠れ待機児童約6.8万人を大幅に上回る。19年10月に導入される幼児教育・保育無償化が実施されると、こうした今は保育サービスを利用していない家庭の潜在的な需要を掘り起こす可能性が高いと指摘する。

保育人材確保の重要性

実際、2年前に保育無償化を独自に実施した兵庫県明石市は、利用申し込みが急増し、今回、待機児童数全国1に躍り出てしまった。

さらに、野村総研は25〜44歳の女性の就業率を80%に上げる政府目標を達成するためには、2022年度末までに59万9000人分の受け皿拡大が求められるとの推計も示しており、2年先とはいえ、20年までに32万人分整備という政府の目標では到底追いつかないことになる。

施設を整備しても、逃げ水のようにゼロの達成が近づいてこない待機児童問題。この間、主要紙で日経(9月9日と10月1日)、読売(9月14日)、東京(18日)がこの問題を社説で取り上げた。「賃金アップや職員配置の見直しなど一層の処遇改善を急ぐ必要がある」(読売)、「不足が深刻化する保育士の処遇改善と合わせ質の底上げへ財源と知恵を絞りたい」(東京)、「保育人材の確保・育成は、待機児童を減らすためだけでなく、保育の質を高めていくうえでも重要だ。官民あげて、やりがいを持って働ける環境づくりを急ぎたい」(日経)と、保育人材確保の重要性を強調しているのが目立った。人材確保が、待機児童解消のポイントといえそうだ。