行った気になる世界遺産 (65) 石見銀山の世界遺産登録から10年--何かとお得な今、温泉もお酒も楽しんで

行った気になる世界遺産 (65) 石見銀山の世界遺産登録から10年--何かとお得な今、温泉もお酒も楽しんで

画像提供:マイナビニュース

この5月は、「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」の勧告を巡って世界遺産が話題になりました。ところで、この7月には登録10周年を迎える日本の世界遺産があります。今回は、そんな「石見銀山遺跡とその文化的景観」に注目! 現地では10周年を記念した特別行事が続々予定されており、盛り上がりを見せています。

今回の登場人物は、都心でバリバリ働く30代の女性編集者。毎日を忙しく過ごしながら、今夏の旅行先で悩んでいるようです。仕事を終え、本屋で立ち読みする旅行雑誌には、『世界遺産登録10周年 石見銀山の魅力』の見出しが。そう言えば、石見銀山って名前は見たことあるけれど、どこにあるんだっけ……? いつのまにか誌面にのめりこんでいきます。

○30代の女性編集者、石見銀山に出会う

「えっ、これで『いわみ』って読んじゃうワケ? 場所は島根県……関東で生まれ育つと山陰ってなかなか縁がないんだよなぁ。っていうか、世界遺産は京都や富士山だけじゃないのね。意外と日本にも世界遺産ってたくさんあるのかも。なになに、『17世紀、石見銀山は世界の3分の1の銀の産出量を誇り、西欧諸国には銀鉱山王国として知られていた。黄金の国ジパングは、実際のところ銀の国だったのである』だって。へぇ〜。

『……だが江戸時代には鉱脈の減少と鎖国政策によって銀山の需要が少なくなり、大正12(1923)年に閉山。周囲の鉱山町もろとも、時代に忘れられた場所となっていった』か。ゴールドラッシュは、いつだって泡沫(うたかた)の夢なのね。ここではシルバーだけど。

『それゆえに、銀山とそれを取り巻く自然、人々の暮らしがあった鉱山町が開発されることなく保存され、その全体が銀鉱山の歴史と文化を伝えるとして2007年に世界遺産に登録された』。なるほど、ただ銀山の歴史的な価値だけじゃなく、周囲の自然環境や町並みも含んでの石見銀山なのね。遺産名の"その文化的景観"とはそういうことか〜。

まぁ! 7月2日は世界遺産登録10周年記念日として、4つの施設を入場無料で開放だって! 「石見銀山世界遺産センター」に、「熊谷家住宅」、「龍源寺間歩」と「武家屋敷旧河島家」……世界遺産をたっぷり無料で楽しめちゃうじゃない。世界遺産の10周年記念日にその場所を訪れるってのも悪くないわね。ちょうど日曜日だし。

しかも、10周年を記念して「大久保間歩」のこれまで非公開だった「福石場」が一般初公開される、って書いてあるわね。間歩ってナンだろ。ふむふむ、『間歩(まぶ)とは銀を掘った際の坑道のことで、石見銀山では銀を掘ったノミの跡が壁面に残る「龍源寺間歩」が有名』。あ、さっき無料になるって書いてあったところね。『「大久保間歩」は石見銀山で最大の間歩で、採れる銀の質が高かったことで知られている』。へ〜。

銀をたくさん含んだ鉱石を「福石」と呼び、「大久保間歩」内で福石をたくさん切り出した場所が「福石場」である、と。タイミングも合うし、これは見ておいてもいいかもしれないわね。私にも福を運んでくれるかしら……。

石見銀山って、他に何か見るべきものはあるのかしら。鉱山町だった大森の町並み地区は、古い建造物が保存され散策にもぴったり、っていいじゃない。さっき無料になるって書いてあった(こればっかりね、あたし)熊谷家住宅と武家屋敷旧河島家もここにあるのね。着物のレンタルサービスもあるみたいだし、古い町並みを風流に散歩してみようかしら。

大森の町並み地区では、7月8日の土曜日にも10周年記念イベントがあるのね。世界遺産MATSURI「世界の食と世界の知識」か。世界遺産をもつ他の国の文化を食で楽しめるってワケね。世界遺産検定を世界遺産で受けられるっていうのも面白いわね。観光がてら受検してみるのもいい思い出になるかも。世界遺産検定、最近流行っているみたいだし。

あれ、世界遺産の範囲には温泉もあるじゃない! 温泉津、ってこれまた読めない地名だけど、どう考えてもいいお湯の出てそうな名前よね。「薬師湯」のこの味わいったら見事ね。これは浸かってみたいわ。上がった後は地酒と土地の魚かな。「石見銀山」、なんていい名前のお酒かしら。女性杜氏が手がけているのもポイントが高いわね。よし、この夏は石見銀山に行くわ。決まり! 」

彼女の今夏の行き先が決まったところで、用語解説行ってみましょう。彼女には後日、旅行の感想も聞いてみたいところ。

これで『いわみ』って読んじゃう
石見(いわみ)。初見では読めない。石と書いて「いわ」と読ませるものに「石清水」などがある。

日本にも世界遺産ってたくさんある
現在(2017年5月)、日本からは20件の世界遺産が登録されている。「石見銀山遺跡とその文化的景観」は2007年に、日本で14番目の世界遺産として登録された。

黄金の国ジパングは、実際のところ銀の国だった
13世紀末にマルコ・ポーロの「東方見聞録」によって、金の家が建つ国、黄金の国ジパングとして日本が西欧に紹介された。16世紀の大航海時代には銀の産出国として広く西欧に知られるようになり、日本にキリスト教を伝えたフランシスコ・ザビエルの来日の目的のひとつは、石見の銀であったと伝わる。

周囲の自然環境や町並みも含んでの石見銀山
銀山そのものに加え、採掘した銀を運ぶための街道、輸出するための港、鉱山町として発展した大森地区、銀商人の屋敷や役人の住まい代官所の跡などが世界遺産に登録されている。また、銀の精製や生活で必要な薪を得るために森林を伐採すると、その後で植林を行うといった持続可能な森林と人間生活のあり方も登録にあたり高く評価された。

文化的景観
人間が自然と共につくり上げた景観を指す概念で、文化遺産と自然遺産の境界に位置するような遺産に認められる。登録上は文化遺産となる。

4つの施設を入場無料で開放
下記の4つの世界遺産に関連する施設が無料になるとあれば、ぜひ訪問したいところ。7月2日は石見銀山へ。

石見銀山世界遺産センター
その名の通り、世界遺産としての石見銀山を知ることができる施設。「石見銀山のエントランス」という位置づけで、石見銀山訪問前の予習に訪れたい。島根県大田市大森町イ1597-3。

熊谷家住宅
大森の町並み地区で街路に面して建つ建築物のなかで最大の町屋建築。有力商人の社会的な地位や生活の変遷を今に伝える。島根県大田市大森町ハ-63。

龍源寺間歩
銀山内にある江戸時代中期に作られた間歩。約600mの坑道が残されており、そのうち入り口側の273mは見学可能。石見銀山で通年開いている唯一の間歩である。島根県大田市大田町大田ロ-1111。

武家屋敷旧河島家
1610年以来、銀山附きの役人としてこの地を治めた河島家の武家屋敷。現在の建物は1800年の大火での消失後再建されたもの。島根県大田市大森町ハ118番地1。

大森の町並み地区
銀山によって栄えた町が今もよい保存状態で残されている。約1kmに渡る街路には多くの歴史的建造物が立ち並び往時の面影をしのばせる。

着物のレンタルサービス
「着物でぶらり」という観光客向けの着付けサービスが、世界遺産登録10周年事業として展開されている。夏は浴衣、晩夏には単衣が用意される。2018年3月まで。要事前予約。

世界遺産MATSURI「世界の食と世界の知識」
地元市民団体による、世界遺産登録10周年記念イベント。世界中の食が300円で食べられるほか、大森地区内で世界遺産検定の特設会場が設置される。世界遺産の登録地で世界遺産検定を受けられるのは山陰地域で初めて。検定の申込締切は5月31日まで。検定に関する問い合わせはせかけんGO(温泉津公民館内)へ。

世界遺産検定を世界遺産で受けられる
これまで世界遺産検が世界遺産を会場として行われたのは、富士山本宮浅間大社(富士山―信仰の対象と芸術の源泉)、薬師寺(古都奈良の文化財)の二箇所のみ。

温泉津
ゆのつ。いかにも温泉地といった名前をもち、温泉地として全国で初めて国の重要伝統的建造物保存地区に指定された温泉街である。石見銀山の世界遺産登録範囲に含まれている。

「石見銀山」
大田市の一宮酒造が手がける日本酒。そのものずばりな名称、石見銀山を訪れたら一献やってみたい。

○世界遺産データ

『石見銀山遺跡とその文化的景観』。文化遺産。2007年登録。2010年範囲拡大。日本、島根県

○筆者プロフィール: 小俣 雄風太(おまたゆうた)

「世界遺産検定」事務局の編集広報部員。自転車ロードレースに魅せられ本場フランスに一年留学。その後イギリスのサイクリングアパレルブランドで広報を務め、世界各地で自転車に乗るうちに世界遺産を強く意識するようになる。検定を通じて世界遺産の魅力と意義を広めたいと奮闘中。

○世界遺産検定とは?
世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。
主催: 世界遺産アカデミー
開催月: 3月・7月・9月・12月(年4回)
開催地: 全国主要都市
受検料: 4級3,000円、3級4,500円、2級5,500円、1級9,700円、マイスター1万9,000円、3・4級併願7,300円、2・3級併願9,500円
解答形式: マークシート(マイスターのみ論述)
申し込み方法: インターネット又は郵便局での申し込み
その他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて。
世界遺産検定公式Twitter
世界遺産検定公式Facebook
(小俣雄風太)

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