行った気になる世界遺産 (66) フランスのペレをご存知? モネが印象派を生み、ペレが再建した街をゆく

行った気になる世界遺産 (66) フランスのペレをご存知? モネが印象派を生み、ペレが再建した街をゆく

画像提供:マイナビニュース

今回の舞台は、フランス北部ノルマンディー地方の港町、ル・アーヴル。観光名所として必ずしも有名ではありませんが、知れば知るほどエピソードのある街です。今回の登場人物は、GWにパリ旅行をしてきた女子美大生。ガイドブックに載っていて何とはなしに訪れたル・アーヴルが気に入ったようです。油彩画科のお友だちに旅を語ります。

○女子美大生、印象派の故郷へ

「パリはすごかったなぁ。そこらじゅうに美術館があって、美術の教科書の中で見た名作がたくさん。その中でも、印象派の始まりとなった『印象、日の出』を観れたのがうれしかったの。説明書きにはル・アーヴルという街で描かれた、とあってガイドブックで調べたら案外パリから近くてさ。絵ばっかり見てたから、ちょっと遠足も兼ねて出かけてみようと思ったの。

電車で2時間くらいかな、外国の電車っていいよねぇ。リアル世界の車窓から。で、ガイドブックで読んでたんだけど、到着してみたら本当にル・アーヴルって全然パリと雰囲気が違ったの。港町っていうこともあるけど、町全体がスッキリしているというか、小奇麗な感じで。第二次世界大戦で町の大部分が破壊されて、その後に再建されたからなんだって。ノルマンディー上陸作戦って世界史の教科書で見た名前だけど、その舞台だったのね。

ペレの活躍がすごかったのよ。ペレと言っても王様じゃないわよ。いつのブラジルの話をしてるのよ。オーギュスト・ペレという建築家がル・アーヴルを再建した立役者なの。『コンクリートの詩人』だなんて、素敵な通り名よね。それで街が近代的だったってわけね。

そうそう、肝心のモネの日の出。駅から海沿いに歩いていったら、絵が描かれた場所に看板が出ててそこと気づいたわ。言われなきゃ分からないけど、印象派誕生の地だと思うと感慨深かったわ。私も『モネの睡蓮』を見てなかったら美大に進んでないだろうし。うん。

帰ってきてから、『ル・アーヴルの靴磨き』っていう映画を見たんだけど、そこにはまた、別な街の顔が描かれていたわね。『日の出』の看板の近くには『ヨーロッパの港』っていう標識も立っていたけど、今もさまざまな文化が混ざり合う港町なんだと気づかされたわ。夏には海辺のリゾートにもなるみたいだし、印象派の聖地巡りがてらまた行きたいなぁ」。

美術好きにはフランスは最高の場所のようです。用語解説、いってみましょう!

『印象、日の出』
フランスの画家クロード・モネがル・アーヴルの港に日が出る光景を描いた絵。諸説あるが、1872年の11月13日7時半頃に描かれたとされている。主題の明確でないこの絵を、批評家ルイ・ルロワが「この絵は何を描いたものか? 印象、印象だ! そうに違いない」と揶揄したことが、皮肉にも印象派を命名する出来事となった。

電車で2時間くらい
パリのサン・ラザール駅から特急電車「アンテルシテ」(INTERCITES)で2時間ほど。1〜2時間に1本の割合で出ている。

ル・アーヴルってぜんぜんパリと雰囲気が違った
筆者が言った時は横浜っぽいな、と思った。

ノルマンディー上陸作戦
1944年6月6日に始まった連合国の侵攻作戦。その名の通り、ノルマンディー地方の海岸線から上陸し、ドイツが占拠していた北西ヨーロッパを奪還した。一般に勝負の日を指す「D-デイ」はこの上陸作戦に際して使われた呼称である。

ペレと言っても王様じゃない
普通、ペレと言ったら「サッカーの王様」を思い描くだろう。ブラジルの伝説にして、史上ナンバーワンのサッカープレイヤー。

オーギュスト・ペレ
1874年生まれのベルギーの建築家。鉄筋コンクリートを多用するスタイルを打ち出し、ル・コルビュジエら後代の建築家にも大きな影響を及ぼした。

『モネの睡蓮』
モネは晩年を過ごしたジヴェルニーのアトリエにおいて、池の睡蓮をテーマに連作を描いている。光の具合によって変化する睡蓮の連作にはファンが多い。パリのオランジュリー美術館にある大型の絵が有名。日本でも直島の地中美術館や倉敷の大原美術館で観ることができる。

『ル・アーヴルの靴磨き』
アキ・カウリスマキ監督による2011年の映画。港町ル・アーヴルで繰り広げられるヒューマンドラマ。観光だけでは見えない町の素顔を見ることができる。

印象派の聖地巡り
印象派誕生の地ル・アーヴル、モネがアトリエを構えたジヴェルニー、多くの絵が描かれたオンフルール、モネやブーダンと言った画家の絵で知られる断崖エトルタなど、ノルマンディー地方には印象派ゆかりの土地が多く、絵を見ながらこれを巡るのも楽しい。

○世界遺産データ

『ル・アーヴル: オーギュスト・ペレにより再建された街』。文化遺産。2005年登録。フランス。

○筆者プロフィール: 小俣 雄風太(おまたゆうた)

「世界遺産検定」事務局の編集広報部員。自転車ロードレースに魅せられ本場フランスに一年留学。その後イギリスのサイクリングアパレルブランドで広報を務め、世界各地で自転車に乗るうちに世界遺産を強く意識するようになる。検定を通じて世界遺産の魅力と意義を広めたいと奮闘中。

○世界遺産検定とは?
世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。
主催: 世界遺産アカデミー
開催月: 3月・7月・9月・12月(年4回)
開催地: 全国主要都市
受検料: 4級3,000円、3級4,500円、2級5,500円、1級9,700円、マイスター1万9,000円、3・4級併願7,300円、2・3級併願9,500円
解答形式: マークシート(マイスターのみ論述)
申し込み方法: インターネット又は郵便局での申し込み
その他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて。
世界遺産検定公式Twitter
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(小俣雄風太)

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