都心に出現した廃線跡! 東横線の代官山〜渋谷の地上線跡を歩く

都心に出現した廃線跡! 東横線の代官山〜渋谷の地上線跡を歩く

画像提供:マイナビニュース

●廃線跡が「ログロード代官山」として街をつなぐ--Rプロジェクトは今
2013年3月、東急東横線と東京メトロ副都心線の相互乗り入れ開始により、東横線渋谷駅が地下化され、それに伴い、代官山駅と渋谷駅の間も、これまでの地上線が廃止となり地下化された。都心の一等地に、一夜にして廃線跡が出現してから4年あまりが経つ。廃線跡がその後、どのように活用されているのかを確かめながら、代官山駅から渋谷駅まで歩いてみよう。

○商業施設に生まれ変わった廃線跡

代官山駅は、渋谷駅から東横線で横浜方面に一駅。駅周辺はブティックやカフェなどが多く、ファッショナブルで洗練された街という印象だ。しかし、各駅停車しか停まらないこともあり、代官山駅を利用したことがないという人は、意外に多いかもしれない。

代官山駅には2つの改札があり、廃線跡をたどるには、どちらかというとあまり目立たない北改札を出る。すると、駅から真っすぐに続く歩道橋が現れ、この歩道橋からは、下に見える代官山駅のホームの先で、東横線が地下に潜る開口部を見ることができる。

この開口部のすぐ近くの線路跡地に、2015年4月17日にオープンしたのが「LOG ROAD DAIKANYAMA(ログロード代官山)」という商業施設だ。全長約220m、敷地面積約3,200平方メートルという空間には、散策路とそれに沿うように5棟のスタイリッシュでコテージライクな店舗建物が建ち並び、クラフトビールが楽しめるブルワリー(小規模なビール醸造所)併設のオールデイダイニングや、最先端のファッションアイテムがそろうセレクトショップなどが出店している。

同施設のロゴは、12本の線路をモチーフとしており、これは線路跡地であることを表現するとともに、1年=12カ月を通じて、いつ来ても新たな発見や刺激のある場所であってほしいという思いが込められているという。

現地を訪れて、まず思ったのが、線路の跡地にしては、随分と敷地の幅が広いのではないかということだ。これについて、施設の所有者で管理者でもある東急電鉄に確認してみると、かつて、この場所の線路脇には保安施設があり、線路の地下化に伴い、保安施設も地下に移動した。ログロード代官山の敷地は、全て線路や保安施設など鉄道用地の跡地を活用しており、建設にあたり隣接地の買い足し等は行っていないという。

また、一見すると、かつてこの場所を鉄道が走っていた痕跡は見当たらないようにも思うが、散策路脇の「土止め」や施設サインなどには、枕木などの廃材を使っているそうだ。

○分断されていた東西の街がひとつに

ログロード代官山には、もうひとつ触れておきたいことがある。散策路を歩いているだけだと気付かないかもしれないが、ログロード代官山の敷地を中心に、西側を通る代官山通りと東側の恵比寿の住宅地では、それぞれ、ビルのワンフロア分くらいの高低差がある。
ログロード代官山の敷地から代官山通りへは、あまり目立たないが、設置されている3カ所の階段と1カ所のエレベーターで、自由に行き来できるようになっている。一方、恵比寿側へは、5号棟のルーフトップを経由して上がっていくことができるようになっている。

つまり、今まで長い間、線路により分断されていた東西の街が、ログロード代官山のオープンによって横断的につながったということだ。しかし、なぜ、階段やエレベーターの存在をもっと目立つようにしないのか。この点について東急電鉄に聞くと、「今まで、線路が通っていたことでご迷惑をかけて来た近隣の方々に近道として使っていただければという目的で設置した動線なので、大きく周知することはしていない」という。

いずれにせよ、ログロード代官山のオープンにより、周辺エリアにおける人々の回遊性が高まり、今まで、どちらかというと旧山手通り周辺が中心だった"商業エリアの代官山"の街のイメージが広がったことは間違いないだろう。ちなみに、ログロード代官山は約10年間の暫定施設ということで始まっている。渋谷の再開発が進み、目安として10年が経過した時点で、今の商業施設としての形態がふさわしいか、別の形に変えるべきかを判断することになるだろうという話だ。

○渋谷の変化はRがキーワード

さて、ログロード代官山の散策路を抜けると、正面には清掃工場の高い煙突が立っているのが見える。清掃工場の手前をJR線の線路が横切っており、歩行者用の跨線橋(こせんきょう)で、線路の向こう側に渡ることができる。かつては東横線も、この付近で立体交差によりJR線を跨(また)いでいたのだ。

跨線橋を渡ると、清掃工場の敷地に沿って、弧を描くように白い工事用のフェンスが張り巡らされているのが目に入る。このフェンスの内側が、かつての東横線の跡地であり、現在は「渋谷代官山Rプロジェクト」の建設が進んでいる。

「渋谷代官山Rプロジェクト」は、A棟、B棟と2棟の建物が建ち、待機児童対策や外国人受け入れなど地域のニーズを受けて、保育所やホテルなどが整備され、2018年秋に開業予定だという。ちなみに、「R」とは、鉄道「Rail-Road」、再生「Reborn」、継ぐ「Relay」、カーブを意味する「R(アール)」などから名付けられたそうだ。

先へ進もう。渋谷川沿いを歩きながら渋谷駅に向かい、散歩の締めくくりは、のどにもうれしいクラフトビールといこうではないか。

●渋谷川の再生がもたらすもの--代官山生まれのクラフトビールで乾杯
○まるで古代遺跡?

「渋谷代官山Rプロジェクト」の建設地に沿うようにして区道に入っていくと、古い銭湯などがある昔懐かしい空間が広がっている。やがて、区道はバス通りと交差するので、バス通りに出て右に進むと、間もなく「並木橋」の交差点に出る。

この交差点付近に、とても面白いものが残されている。工事用のフェンスで囲まれた中に、なぜか東横線の高架の橋桁が、道を挟んで4つだけ今も残されており、古代遺跡の廃墟のように見えなくもない。ここから東横線の線路跡地は、渋谷駅付近まで渋谷川に沿うようにして続いている。

渋谷川沿いには今後、官民連携の事業として、線路跡地を活用した約600m続く遊歩道を整備するとともに、清流復活水を活用した渋谷川の再生も行うというから、間もなく、この忘れ去られたような橋桁も撤去されることになるのだろう。

○今はなき"かまぼこ形"屋根の跡地へ

せっかくなので、このまま渋谷駅まで足を伸ばしてみることにしよう。コンクリートで固められた渋谷川と、それに沿うように続く東横線跡地を見ながら路地を歩いていくが、お世辞にも美しい風景とは言えない。遊歩道が整備されたら、どのような風景に生まれ変わるのか、とても楽しみだ。

さて、渋谷駅に近づいたら、明治通りに出て、その先の歩道橋で国道246号線を渡ろう。歩道橋の上からは線路が撤去された国道246号線を跨(また)ぐ高架が、今も残されているのを見ることができる。東横線の線路跡は、国道を渡ったところで断ち切られている。かつて、この先に有名な"かまぼこ形"の屋根を持つ東横線の地上駅ホームがあったのだ。

渋谷駅利用者の多くは、東横線ホームが地上2階から地下5階に移ったことで、乗り降りや乗り換えが不便になったと感じていると思う。しかし一方で、まだ少し先の話になるが、東横線ホームがなくなったことで、現在、かなり恵比寿駅寄り(南寄り)に位置し、他線との乗り換えが不便な埼京線のホームを北側に移動することが可能になり、山手線ホームと並列化する計画もあるという。

何かが便利になれば、不便になるものもある。世の中の進歩も街の開発も、結局、そのトレードオフの繰り返しなのかもしれない。いずれにせよ、渋谷駅周辺の変貌の大きさとスピードは、かつて渋谷区民だった筆者も迷子になってしまいそうに感じるほどだ。

○限定醸造のビールを楽しむ

さて、散歩の締めくくりにのどを潤そう。渋谷駅から東横線に乗って、再びログロード代官山へ。ここには、その場でつくられたクラフトビールが楽しめるオールデイダイニング「SPRING VALLEY BREWERY TOKYO」がある。店に併設されているブルワリーは「工場」ではないので、他所に出荷されることはなく、ここでつくられたビールはこの場所でしか味わえないのだ。

今回、頼んだのは「First Crossing」(税込880円)というビールだ。かつて、この付近にあった「渋谷一号踏切」は、一世を風靡したトレンディードラマ『東京ラブストーリー』を始め、様々なドラマなどのロケに使われた。その踏切にちなみ、開業記念限定ビールとして提供を始めたのが、この「First Crossing」だが、好評だったようで、今もメニューに含まれている。

さて、都心の廃線跡の散歩、いかがだっただろうか。現在、小田急線の下北沢駅周辺(東北沢駅〜世田谷代田駅)などでも、線路跡地の開発・整備が進んでいる。都心にエアポケットのようにできた、廃線跡という細長い空き地がどのように活用されるのかは、多くの人々の関心事だと思う。今後も注目しながら、レポートしていきたい。

○筆者プロフィール: 森川 孝郎(もりかわ たかお)

旅行コラムニスト、オールアバウト公式国内旅行ガイド。大磯町観光協会理事。京都・奈良・鎌倉など歴史ある街を中心に取材・撮影を行い、「楽しいだけではなく上質な旅の情報」をメディアにて発信。観光庁が中心となって行っている外国人旅行者の訪日促進活動「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の公式サイトにも寄稿している。鎌倉の観光情報は、自身で運営する「鎌倉紀行」で更新。
(森川孝郎)

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