あいつ、資産形成はじめたってよ! (4) どこまで辛抱できるか

あいつ、資産形成はじめたってよ! (4) どこまで辛抱できるか

画像提供:マイナビニュース

資産形成はダイエットとか、スポーツジムでの練習に似ているという人がいます。今、苦しみながら続けている努力がいつか成果をもたらしますが、それまでには時間がかかる点が似ているということだろうと思います。確かにそうだといえますが、資産形成はダイエットやスポーツジムでの筋肉トレーニングよりもずっと時間がかかる作業ということもできます。

○目先の努力もできるだけ苦しくないように

第2回のコラムで、資産形成は「年収」と「率」でその成果が決まるとお話ししました。

  資産形成に回す資金額 = お給料 × 資産形成比率

この考え方は、資産形成に回す金額をいくらにするかを考えるときに、年収を参考にして考えようということでした。米国では年収の15%くらいを老後の資産形成に回すべきだとか、英国では企業年金の積立額を年収の最低8%にするという法律がスタートするといったことをご紹介しました。

もうひとつ皆さんの目線でみると、お給料の水準に合わせて資産形成に回す金額が決まっているということは、その金額を先に生活費から取り分けておくような感じです。いわゆるお給料天引きで資産形成をするということだと思っていただければいいでしょう。

「お給料のなかで生活しながら、節約して残った資金を貯蓄や資産形成に回す」と考えるのが一般的でしょうから、資産形成比率を考える方法はそれとはまったく逆になります。ただ、残った資金を資産形成に回すと考えると、一生懸命節約をするということに心が向かってしまって、楽しい資産形成になりません。それよりも先に資産形成のための資金を取り置いて、残りで生活する方法を考えるという方が生活に対して腹も括れますし、努力をする甲斐もあります。

○投資をする効果は40-50代で明確になる

さらにそうした努力が成果に結びつくと、やる気にもつながって良い循環になるのですが、残念ながらこれがなかなか簡単ではありません。資産形成の努力は短期的には成果に結びつきにくいものなので、本当にじっくりと継続していくしかありません。頑張ってほしいものです。

そこで少しでもその努力する気持ちを支えるために、2010年から行ってきたサラリーマン1万人アンケートの結果から「資産形成は時間がかかるけれども成果が出ている」ことを紹介したいと思います。

成果を測るため、「老後の生活のための資金=『退職準備資金』」をいくら創り上げているかをみることにします。この資金こそ、一番長い時間をかけて創り上げいていくもので、その分、忍耐力も必要なものでもあります。

「退職準備資金」は年収の多い人ほど比較的早く、多く創り上げることができるはずですから、その影響をできるだけ少なくするために、「退職準備額」は実際の金額ではなくて、年収の何倍あるかという「年収倍率」で比較することにします。言い換えると、何年分の年収に相当する資金を老後の生活のために用意できているかという指標です。

年代別に、投資をしている人としていない人に分けて、この年収倍率がどうなっているかをみたのが下のグラフです。まずは投資をしていない人の年収倍率をみてみましょう。2010年、2013年、2015年、2016年ともに、どの年代もほぼ1倍前後に落ち着いています。特徴は、年代が上がってもその水準で変わらないということです。言い換えると、年代が上がるにつれて一般的には年収は上がっているでしょうから、それに合わせて退職後の生活のための資金も増えているのですが、その水準は年収が増えた分程度にとどまり、結果的には現役世代を通して、年収の1年分程度の退職準備額を用意しているだけということです。

一方で、投資をしている人は、20代、30代では年収のほぼ1倍です。若干、投資をしていない人よりも高めといえなくもありませんが、総じて1倍前後ですから投資をしていない人とそれほど大きな差があるとはいえません。この数値をみる限り、20代、30代では投資をしているかどうかはそれほど退職準備の面で大きな差異になっていないといっていいでしょう。20代、30代はダイエットをしても筋肉トレーニングをしても、あまり効果が表にでて来ていないということになるでしょうか。

ところが、40代、50代となると、投資をしている人の年収倍率は徐々に上昇して2倍台に上がってきます。この増加は、所得の増加だけでは説明できませんから、やはり資産運用の効果が出ているとみていいでしょう。投資をする効果はこの年代になってやっと花開いてくることがわかります。ダイエットの効果が、20年、30年してから現れるとなるとなかなか続けるのは難しいですが、資産形成はその長い時間を何とか乗り越えて続けてほしいものです。忍耐が非常に重要になります。

○執筆者プロフィール : 野尻 哲史(のじり さとし)

フィデリティ退職・投資教育研究所 所長国内外の証券会社調査部を経て、2006年フィデリティ投信株式会社に入社、2007年より現職。アンケート調査をもとに個人投資家の資産運用に関するアドバイスや、投資教育に関する行動経済学の観点からの意見を多く発表している。日本証券アナリスト協会検定会員、証券経済学会・生活経済学会・日本FP学会・行動経済学会会員。著書には、『老後難民』、『日本人の4割が老後準備資金0円』(講談社+α新書)や『貯蓄ゼロから始める安心投資で安定生活』(明治書院)などがある。調査分析などは専用のHP、資産運用NAVIを参照
(野尻哲史)

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