行った気になる世界遺産 第85回 "白い道"を自転車で、シエナの「世界で一番美しい広場」が微笑むその日まで

行った気になる世界遺産 第85回 "白い道"を自転車で、シエナの「世界で一番美しい広場」が微笑むその日まで

画像提供:マイナビニュース

イタリア中部、シエナ近郊で開催された自転車レース。大会に参加したこの地出身の自転車プロ選手が、地元愛とともにシエナとその近郊の魅力を語ります。

○シエナ人の誇りを胸に

「地元のレースを走り声援を受けることほど、プロ冥利に尽きることはない。オレの名前はパトリモニオ・モンディアーレ。イタリアはトスカーナ地方、シエナ生まれのプロ自転車選手だ。この日曜日、ストラーデ・ビアンケが開催されたが、おそらく見る者はこの特異なレースに釘付けになったことと思う。

ここで生まれ育ったオレにとっては、この白い道なんて日常だが、レース中はスペイン人がこんなのやってられるかとわめいていたな。やつらは悪路を走り慣れてないんだ。

184kmのコースで一番標高の高いところにあるモンタルチーノの街は、レースでは一瞬で過ぎ去ってしまうが、観光客にはぜひ立ち寄って欲しいところだ。ワイン通の人ならこの街の名前を聞いたことがあるだろうし、この辺りの郷土パスタであるピチは素朴でうまいから。

白い道を散々走ってからシエナの街中へなだれ込む最後のゴール地点を見ていただけだろうか。あれこそが『世界で一番美しい広場』カンポ広場だ。シエナ人の誇りだ。あそこに先頭で飛び込むのが俺の夢……今年は完走できなかったから。

来年もきっと戻ってくるから、その時はマンジャの塔の展望台からオレを見つけてくれよな。ではひとたび、アリーヴェデルチ(さよならだ)」。

さよならだけが人生だ。以下、用語解説です。

シエナ
イタリア中部、トスカーナ地方の都市。小高い丘の上にある城壁都市で、中世の趣を色濃く残す旧市街は世界遺産に登録されている。近隣のフィレンツェとは歴史的に争ってきた間柄。現在はフィレンツェを訪れた観光客が足を延ばす先としてシエナの人気が高い。

ストラーデ・ビアンケ
イタリア語で「白い道」を意味する、シエナ近郊で開催される格式ある自転車ロードレース。ロードレースは通常舗装路で行われるものだが、このレースでは19世紀初頭のように砂利道を用いるのが特徴。トスカーナ地方のこの砂利道は白く、それがレースの名前となった。全長約200kmのうち、60kmほどがこの「白い道」となり、ゴールはシエナのカンポ広場と決まっている。2018年は3月3日に開催された。

スペイン人がこんなのやってられるかとわめいていた
自転車ロードレースの世界ではスペインも強国に数えられるが、登坂力に優れる軽量級の選手が多いかわりに、未舗装路や悪路を得意とする選手は歴史的に非常に少ない。

モンタルチーノ
シエナから南に約30kmのところにある小村。山の上にあり、その標高は約450m。周囲の丘陵地帯で生産されるワイン「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」が有名。町から見下ろすトスカーナ地方の景観も見事の一言。シエナを訪れるならぜひ足を延ばしたい。

ピチ
トスカーナ地方の郷土パスタ。太く短いパスタで、日本人からすると印象的にはうどんに近いか。ただでさえおいしいイタリアのパスタ、それも郷土のものを味わえるのは現地ならでは。

『世界で一番美しい広場』カンポ広場
シエナ人が誇る「世界で一番美しい広場」であるカンポ広場はシエナの街のアイコン。緩やかに傾斜した貝殻状の広場は、特に上空から見ると美しい。ストラーデ・ビアンケのゴール地点として当日は人でごった返すほか、7月と8月に開催されるパリオと呼ばれる地区別対抗競馬の際にはこの広場が最も盛り上がる。

マンジャの塔
カンポ広場を見下ろすように建つ市庁舎の塔は、マンジャの塔と呼ばれこの街で一番高い建造物である。展望台になっており、高台から見る歴史都市シエナの美しさとトスカーナの丘陵地帯の風景は格別。小高いシエナからさらに天に延びる塔は、シエナから遠く離れてもよく見える。マンジャ(食べる人)の塔、という名称はかつてこの鐘楼の鐘撞きだったジョヴァンニ・ディ・ベルドゥッチオが「利益を食い尽くす人」と呼ばれたこと、あるいは大食漢だったことに由来するという。

○世界遺産データ

『シエナの歴史地区』。文化遺産。1995年登録。イタリア。
○筆者プロフィール: 小俣 雄風太(おまたゆうた)

「世界遺産検定」事務局の編集広報部員。自転車ロードレースに魅せられ本場フランスに一年留学。その後イギリスのサイクリングアパレルブランドで広報を務め、世界各地で自転車に乗るうちに世界遺産を強く意識するようになる。検定を通じて世界遺産の魅力と意義を広めたいと奮闘中。

○世界遺産検定とは?
世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。
主催: 世界遺産アカデミー
開催月: 3月・7月・9月・12月(年4回)
開催地: 全国主要都市
受検料: 4級3,000円、3級4,500円、2級5,500円、1級9,700円、マイスター1万9,000円、3・4級併願7,300円、2・3級併願9,500円
解答形式: マークシート(マイスターのみ論述)
申し込み方法: インターネット又は郵便局での申し込み
その他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて。
世界遺産検定公式Twitter
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(小俣雄風太)

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