会社のクチコミを金融アナリストが分析、企業スコアの設計で大切なこととは?

 社員が会社の評価を投稿するサイト「OpenWork」が、金融アナリストと組んでクチコミ情報を分析。その研究成果が「証券アナリストジャーナル賞」を受賞しました。その論文から見えてきたスコアリング設計の核心に迫ります。

■就職・転職のクチコミを金融アナリストが分析

――今回は、日本証券アナリスト協会が選出した「2018年度 証券アナリストジャーナル賞」の受賞論文を執筆された、クレジット・プライシング・コーポレーションの西家宏典さんと、その研究にデータ提供をされたオープンワークの本多雄太朗さんにお話をうかがいます。最初に現在の業務内容についてお聞きしてもよいでしょうか。

西家:私は、会社の倒産確率、会社の信用力、格付けといった信用リスクまわりを推計するモデルを国内の金融機関向けに提供する仕事をしています。近年では、特に機械学習を用いた融資審査のためのモデル開発などを行っています。

株式会社クレジット・プライシング・コーポレーション
シニアコンサルタント 西家宏典さん

本多:私は「OpenWork」、5月までは「Vorkers」という名称だった社員クチコミサイトのデータサイエンティストとしてさまざまなデータ分析をしています。ユーザーが投稿した「社員による会社評価」は、転職や就職活動をしている多くの人たちが検索・閲覧しています。私の仕事は、投稿する人・閲覧する人の双方にとって使いやすいサービスになるよう、UXを高めていくための分析が中心になります。

――西家さんは、同志社大学の津田博史教授との共著で「従業員口コミを用いた企業の組織文化と業績パフォーマンスとの関係」という論文を執筆されました。論文のタイトルにもあるとおり、当時のVorkersに投稿された「社員によるクチコミや評価」のデータを活用されたわけですが、投稿しているのはどんな人たちなのでしょうか。

本多:私たちがサービスを開始したのは2007年なのですが、2016年から2018年くらいから、爆発的にユーザーが増えていきました。以前はユーザーの属性に偏りがありましたが、現在では幅広い層の方にご利用いただいています。たとえば、かつては男性が多かったのですが、徐々に女性の割合も増えています。

 サービス開始当初は金融業界やコンサルタントの方が多く、1〜2年後にはIT業界の方からの投稿が中心になってきました。その後、メーカーや商社、小売業や飲食、サービス業全般など幅広い業界に広がっています。世代についても最初は30歳前後に集中していましたが、40代以上の方のクチコミも増えてきて、今では約2割が40代以上となっています。

オープンワーク株式会社
データサイエンティスト マネジャー 本多雄太朗さん

――投稿できるのは、自分が働いている会社についての個人的な見解や評価ですよね。

本多:はい。OpenWorkでは文章で投稿する「社員クチコミ」と「評価スコア」を投稿することが可能です。社員クチコミは、「組織体制・企業文化」「働きがい・成長」「ワーク・ライフ・バランス」「企業分析[強み・弱み・展望]」「入社理由と入社後ギャップ」「女性の働きやすさ」「退職検討理由」「経営者への提言」「年収・給与」の9つのカテゴリごとに入力することができます。クチコミを投稿する際、これらすべてを網羅する必要はなく、投稿者が選んだ項目のみ回答することが可能です。

 一方、評価スコアでは、「待遇面の満足度」「社員の士気」「風通しの良さ」「社員の相互尊重」「20代成長環境」「人材の長期育成」「法令順守意識」「人事評価の適正感」の8つを5段階評価するかたちですね。現時点でオープンワークのサイトには、「クチコミ」と「評価スコア」が810万件投稿されています。

西家:私たちが使ったのは投稿されている全上場企業のクチコミデータで、当時でおそらく10万件ぐらいあったと思います。

――データを分析する際に、なにか課題はありましたか?

西家:クチコミは文章情報なので、どうやってその文章を定量化して、会社ごとにスコアを振るかがいちばん難しいところですが、近年では機械学習や自然言語処理など、文章情報を定量化する技術が進んでいるので、今回の研究ではそれらを応用してスコアを作っていきました。

 課題としては、会社ごとにクチコミの投稿数に偏りがある点ですね。大企業であれば多くの投稿がありますし、小さい企業であれば少なくなる。スコア化をするにあたっては、こうした「投稿者数の違い」を是正したスコアをどのように作るかがいちばん大きかったと思います。

――オープンワークが、金融のアナリストにデータ分析を依頼したのはなにか理由があるのでしょうか。

本多:西家さんたちは、企業の業績や株価などの市場動向に関する分析といった、私たちが持っていないノウハウをお持ちだったので、協力することで面白い結果が得られると考えたからです。私たちもクチコミのスコア化には取り組んでおり、その結果はオウンドメディアの「働きがい研究所」で公開しています。クチコミから作成したスコアを使った調査としては「性格のいい会社ランキング」や「社員が支持するIT社長ランキング」などがあります。

 ただ、私たちと西家さんでは、そもそも「なにがポジティブで、なにがネガティブなのか」という視点から違うんですよね。「働きやすい」「自分のやりがいを持つことができる」「モチベーション高く仕事ができる」という投稿が、働く人が「良い」と思うクチコミ。私たちも、そういった観点で教師データを作成してランキングなどを作ってきました。「ワーク・ライフ・バランス」や「入社後ギャップ」などについては、うまくスコア化できたのですが、その会社が持つ技術力、経営、企業文化をどう評価するかという点についてはあまり知見がなかった。

 一方、西家さんは企業の社風が表れる項目として、クチコミの中でも「組織体制・企業文化」に着目していました。実は「ワーク・ライフ・バランス」とか「女性の働きやすさ」というのは、企業ごとの差があまり出ないカテゴリなのです。「良い」「悪い」の差はありますが、投稿で使われる語彙はどの企業でも似通っています。それに対して、「組織体制・企業文化」というのは、企業ごとの色が出やすいカテゴリ。そのような特徴も西家さんが「組織体制・企業文化」に着目され、今回の結果が得られた要因だと思います。

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