激安&高機能カジュアルラインが絶好調。"ガテン系御用達"のワークマンが変貌を遂げていた!

激安&高機能カジュアルラインが絶好調。"ガテン系御用達"のワークマンが変貌を遂げていた!

幹線道路沿いで見かけ、いかにもガテン系といった外観のワークマン

作業服小売りチェーンのワークマンが激アツだ。

今や作業服のみならず、街着でもイケる激安&高機能カジュアルウエアを多数ラインナップし、客層を拡大しているのだ。その戦略に迫る!!

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■2ちゃんの口コミで自社ブランドが人気に

「ワークマン」と聞いて、まず頭に思い浮かぶものはなんだろう?

吉幾三が自身の曲をバックに登場するテレビCMであり、♪やる気ワクワク、ワークマン♪のサウンドロゴであり、幹線道路沿いで見かける、いかにもガテン系御用達といった外観の店舗であり......。

それはそれで正しいのだが、日本最大の製造現場・土木現場向け作業服専門店チェーンの同社が今、世間のイメージを覆(くつがえ)すカジュアル系のPB(プライベートブランド)商品群で、従来になかったユーザー層を続々と獲得しているのである。

現在、ワークマンのカジュアル系PBウエアにはアウトドアテイストの「フィールドコア」、スポーツシーンでも使用できる「ファインドアウト」、高い防水性能を備えたレインウエア「イージス」と、3つのブランドがある。

これらはいずれも作業服として酷使されてもまったく問題のない機能と耐久性を持っていながら、アウトドアやスポーツ向けの専用ウエアと比べても遜色のないデザイン性を備え、しかもワークマンの他製品同様、驚くほどの低価格を実現していることが特長だ。

何しろ軽量でありながら防風仕様になっている「フィールドコア」の防寒ストレッチブルゾンが2900円、接触冷感性を備えた「ファインドアウト」のコンプレッション長袖ハーフジップTシャツが1500円、10000ミリの耐水圧(傘で500ミリ程度)と3000g/u24hの透湿度(湿気を生地の外に出す度合い)を誇る「イージス」の透湿防水防寒スーツ(上下組)が6800円といった具合なのだから。

ワークマンで従来型の作業服の製品企画と並行して、「フィールドコア」のブランドマネジャーを務める商品部の中野登仁氏が語る。

「これまで現場の作業服といえば黒、紺、グレーといった色がほとんどだったのですが、若い方を中心に街着のような明るいカラーの作業服を使いたいという需要が増えていたんです。そこでワークマンの店舗へ来られるお客さんに、作業時でも日常や趣味のなかでも着られるようなものを提案していこうと、当社では7、8年前からカジュアル系デザインのPB製品に力を入れてきました」

カジュアル系アイテムはワークマンの期待どおり、順調に売り上げを伸ばし、プロの職人だけでなく一般客の間にも広まっていった。

「だったらより明確にカジュアルテイストを打ち出そうと、3年前にそれぞれの特色を持った3ブランドを立ち上げ、2016年の秋冬物から本格的に始動しました」(中野氏)

もちろん、いずれも作業着として十分なタフさを備えたものなのだが、立ち上げ当初、「フィールドコア」はトレッキングや軽登山や街着、「ファインドアウト」はランニングなどのスポーツ、「イージス」は釣りなどアウトドアでの使用も想定し、開発されていた。ところが、その用途は作り手の意図とは違った方向にもどんどん広がっていく。

例えば「イージス」。

「ブランドを立ち上げてしばらくした頃、当社のオンラインカタログ上で、『イージス』のアクセス数が突然一気に増えました。理由を調べてみたら、われわれの知らないうちに2ちゃんねるの『ワークマン』スレッドで、『イージスのレインウエアはバイク用にもすごくいい』と盛り上がっていたんですよ。なかでもライムグリーンのモデルは、メーカーのシンボルカラーに似ているということで、カワサキ乗りからの支持が高かったんです」(中野氏)

そこで現在の「イージス」は、ウエストを絞るアジャスターや股下・膝部分の立体裁断など、よりバイクに乗りやすくなる数々の工夫が施されたライダー向けモデルも開発し、釣り向けには「イージスオーシャン」というシリーズを作って対応している。

同様に「フィールドコア」のクライミングパンツは、軽登山どころかプロのクライマーからも絶賛され、膝の曲げやすさやポケットの多さがありがたいと、宅配ピザや宅配ずしの配達スタッフのユニフォームとしても採用されている。そして「ファインドアウト」の長袖コンプレッションウエアは中学・高校の野球部員、レギンスは自転車乗りが買っていくことも少なくないという。

■売り値を決めてから素材や仕様を逆算

こうした多様性は、土台となる作業着としての品質の高さがあればこそ。過酷な環境で毎日使われるものだけに、ワークマンではすべての新製品を市場に出す前に、徹底した品質検査を行なっている。

「第三者機関によるチェックに加えて、自社でも独自の『ワークマン基準』を設け、色落ちや磨耗への耐性、毛玉ができにくいかどうかやストレッチ性など、海外の製造工場にまで立ち入って、膨大な項目の確認をしています。

作業着の質はそれを着る方の仕事の質に直結するだけに、ひとつの製品でお客さまの信用を失うと、ほかの製品も同じレベルで見られてしまうんです。ですから、品質には何より気を使っています」(中野氏)

さらにカジュアル系の製品であっても作業着としての使用を前提にしているので、例えばストレッチブルゾンは上腕部のペン差しや、ペットボトルが2本入る大型の内ポケットを備えているし、現場で脱いだときに簡単に引っかけてつるせるよう、襟裏にはループが。

また、反射材があしらわれているのは、暗くなるのが早い冬の作業を考慮してのこと。こうしたプロ仕様のディテールは全製品共通であり、だからこそヘビーデューティな"本物感"に、一般ユーザーまでが反応したのだ。

ただ、高品質であればあるほど、いかにワークマンらしい価格で実現するかが開発陣の悩みどころであり、知恵の絞りどころだ。

「作業着は毎日使い込む消耗品なので、現場の方々は同じものを一度に2、3着、しかも年に何度もお求めになります。だから、ひとつのモデルを大量に生産することで、圧倒的な低価格に抑えることができるのですが、それでも機能性との両立は難問です。

ワークマンの製品にとって価格訴求力というのは本当に重要で、今、1900円でものすごく売れているベストが3900円とか4900円だったら、見向きもされません。1900円だからこそ、価値があるんです」(中野氏)

開発時にはまず、この製品はいくらで売るかを決め、そのためにはどんな素材や仕様にすればいいかを逆算していく。世界中の生地業者からありとあらゆるサンプルを取り寄せてコスパの高いものを選んだり、繊維メーカーと共同で一から素材を開発するのは、日常茶飯事だ。

■サラリーマン客や女性客が増加

そしてカジュアル系3ブランドに関しては、最新の専門ウエア市場の動向も絶えず確認して、トレンドを取り込んでいる。

「スポーツ系もアウトドア系も、毎シーズン必ず見てベンチマークにしているブランドはいくつかあります。時には全然関係なさそうなアパレル系ブランドをチェックすることも。製品を実際に入手して、この発想は取り入れられるなとか、ここは簡素化してコストを抑えようとか考えたりします。

われわれはカジュアルウエアの専門家ではないので、その世界でいいとされているものはやはり研究しないと。もちろん、絶対にフルコピーしたりはしませんが、市場の方向性はとらえておいたほうがお客さまによりよい提案ができますので」(中野氏)

ワークマンの全売上額の中でPB製品の比率は約3割だが、今やPB製品売り上げの半分を「フィールドコア」などのカジュアル系が占めるほどになった。となると当然、店舗を訪れる客層も変わる。同社営業企画部の柏田大輔氏が言う。

「以前は当社の店舗に縁がなかったであろうサラリーマン系の方の姿をよく見かけるようになりましたよね。あと、昔もご主人のものを買いにいらっしゃる奥さまはちらほらいましたが、ここ5年ぐらいで自分用のウエアを探しに来る女性がかなり増えています」

では、店舗で毎日顧客と接している店長の実感はどうか。ワークマン足立尾久橋通り店の武藤等氏の声だ。

「『フィールドコア』や『イージス』のレインウエアはよく売れていますね。特に『イージス』の防水防寒タイプは、毎年品切れになる人気です。ずいぶん仕入れているつもりですが、それでもなくなってしまう。夏場にも『置いてますか?』と聞かれるほどですからね。

『使ったらよかったんで、また買いに来たよ』と言ってくださるリピーターも多いのですが、秋冬商品の品ぞろえが一番多い10、11月以降になると、お目当てのサイズが欠品していることも多いのが申し訳なくて」

バイク乗りは2年ほどガンガン着倒して、ウエアがくたびれたところで新調することが多いという。一日で何人ものライダーが次々に訪れ、イージスのレインウエアを購入していったこともあった。2ちゃん以外にもネットでの口コミが拡散しているのだ。

「不思議に思って尋ねてみたら、『YouTubeでバイク用にいいって紹介されてたんですよ』って。ネットの影響力ってスゴいですね。その一方で、口コミもばかにならない。『友達が買って気に入ってたから』とやって来る方もけっこういます」(武藤氏)

とはいえ、まだまだワークマンのカジュアル系衣料がユニクロ並みの認知度を得ているとは言い難い。

「ブランド力強化が一番の課題ですね。当社がスポーツやアウトドアに使える高品質ウエアをお安く提供していることを、今後はもっと世間に発信していかなければいけないと考えています」(柏田氏)

そのための施策の第一手として、「フィールドコア」「ファインドアウト」「イージス」の3ブランドのみを扱うアンテナショップ的店舗「WORKMAN Plus」を9月5日、東京・立川の大型ショッピングモール内にオープンする。内装もスポーツ・アウトドア専門ブランド風に仕立ててファミリー層への訴求を狙い、2号店以降の展開も予定しているという。

作業着を原点とするカジュアルウエアが、日本発の一大ブランドとなる日も近い?

撮影/村上庄吾

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