マツダ初の量産EV「MX‐30EVモデル」を試乗&開発責任者直撃「なぜ日本で500台しか売らないんですか?」

e−SKYACTIV搭載 マツダ「MX‐30EVモデル」。内燃機関(クリーンディーゼルやスカイアクティブX)にゴリゴリにこだわるマツダが、満を持してブランド初の量産EVを大放出。その実力は? 価格 451万〜495万円、発売 2021年1月28日、一充電航続距離 WLTCモード...256q、JC08モード...281q、充電時間...40分(80%充電)

待望のマツダMX‐30のEVバージョンがニッポンに登場! その走りはどんな感じ? そして、このEVモデルの狙いは? MX‐30EVモデルの開発者である、MX‐30主査・竹内都美子氏、車両開発本部 操安性能開発部・梅津大輔氏に、自動車ジャーナリストの小沢コージが迫ってきた!

■EV補助金が手厚い欧州

――ついにマツダ期待のMX‐30EVモデルが登場しました! 独特の観音開きボディがもたらす開放感はものすごいし、内装のコルク材やフェルト材は"走るデザイナーハウス"って感じで超オシャレ。

そして実際に乗ってみると、EVなのに意外と自然体だなという印象でおもしろい。確かに加速はEVらしい透き通った味だし、乗り心地も異様にソフト。けど、ビックリするほど速いとか、極端に電気的なモーターサウンドもない。コレは意図的?

竹内 その部分に関しましては、かれこれ10年以上、マツダのEVの走り味にこだわってきた梅津に説明を任せます。

梅津 マツダとしてはEVだろうが、内燃機関だろうが、"人馬一体"のコントロール性は変わらない。電動車を特別視する気持ちはまったくないんです。

MX‐30主査・竹内都美子氏(上)と車両開発本部 操安性能開発部・梅津大輔氏。新型コロナ感染拡大防止のため開発者のインタビューはリモートで行なわれた。オンラインでもオザワのネチネチ取材が大爆発。マツダの「EV戦略」にも触れた!

――内燃機関でもEVでもマツダはマツダであると。

梅津 電気モーターだからできることも多いので、いろいろ挑戦していますが、マツダはモーター駆動の良さを滑らかさに使っているんです。

――もちろん、EVもしっかりマツダの味つけになっていると。でも、だったらですよ、昨年10月に、なぜこのEVモデルを、マイルドハイブリッド版の発売と同時にデビューさせなかったんですか? 同時に発売していたら、かなりのインパクトを世間に残せたんじゃないかと単純に思うんですが。

竹内 そこは本当に、工場での量産の順番の問題です。マツダの中では、ほんの数ヵ月の違いしかありません。日本に関しては、欧州とほぼ同時にお届けしている認識です。

EVモデルのベースはコチラ! マツダ「MX‐30」。日本ではマイルドハイブリッドモデルが先行発売された。見れば誰もがうなる個性派SUV。デザインテーマは「ヒューマンモダン」価格 242万〜339万3500円、発売 2020年10月

――けどけど、当初日本では、MX‐30EVモデルってリース販売のみでしたよね?

竹内 ええ。

――それが今年1月から一般向けの発売となった。コレは英断だと思うんです。ただ、驚いたのは販売計画台数ですよ。なんと年間500台! 月に均すと50台弱(笑)。いくらなんでもコレはあまりに少なすぎやしませんか。こんなにいいクルマなのにもったいない。あと、451万円スタートという価格も、もう少しお安くならなかったんですか?

竹内 台数に関しては「わからない」というのが正直なところです。

――というと?

竹内 私たちマツダというブランドが初めて日本にお届けするEVですから、果たしてどのくらいのお客さまにお買い求めいただけるか......。

――そこですか! 私はてっきり電池の生産量が足りないのかなと思っていました!

竹内 リチウムイオン電池はパナソニックさんから供給を受け、昨年は欧州に1万台をお届けしていますから、(日本でも今以上の)台数をお届けすることは不可能ではないという認識です。

今回の試乗は横浜で行なった。一般道、高速道路をオザワがコッテリ試乗。発進はしびれるほど超静か&滑らか

観音開きドアを採用! 基本的にはMX−30とほぼ同じ内外装になっている。そのため、EVモデルもドアはハイセンスな観音開きとなる。開放感は抜群
「e‐SKYACTIV」のバッジが輝くリア。リアに鎮座する「e−SKYACTIV」のバッジは、他のMX−30との大きな違い。ちなみに充電ソケットは右側リアmatsuda13.jpg

リアのサイドガラスには「ELECTRIC」のステッカー。事故などの際、リアの横窓に貼られたステッカーが「大量のリチウムイオンバッテリー搭載車なので爆発の危険性も」と周知するmatsuda7.jpg

――価格に関しては?

竹内 価格は課題ですね。電池そのものの価格もそうですし、車両本体も下げていかなくてはならないのかなと。

――ちなみに、ホンダeと価格帯や電池搭載量がモロかぶりしているのはなぜ?

竹内 価格に関しては、参考にさせていただいたと正直に申し上げます(苦笑)。一方、35.5kWhという電池容量に関して開発中はまったく知りませんでした。

――EV界には電池の単1や単3みたいな規格があって、一般販売しやすい容量が35.5kWhだったというわけではない?

竹内 確かに35.5kWhは切りのいい容量なんです。車載の電装品には必要な電圧があって、それはこういう電池を組み合わせると実現できるみたいな部分はあります。

世界中で話題沸騰! ホンダ「ホンダe」。新型ゴルフなどの強豪を抑え、日本車では初となる「ドイツ・カー・オブ・ザ・イヤー」を戴冠したホンダe。世界中で高評価を得ている。価格 451万〜495万円、発売 2020年10月

――でも、しつこいですが、日本での年間販売500台はチト少ない。もっと売れますよ!

竹内 実は日本と欧州ではEVへの力の入れ方が国としてまったく違います。例えば価格ですが、北欧だとマツダ3とMX−30EVモデルがほぼ同じ価格か、あるいはMX−30EVモデルのほうが手軽に買えてしまうんです。

――マツダ3のハッチバックが222万円スタートで、人気のディーゼルは279万円から。一方、MX−30EVモデルは451万円スタートで、日本では国から16万円強、東京都だと約45万円の補助、ほかにも細かい免税がありますが、総額100万円引きにも及ばない。そう考えると、やはり欧州のEV補助金の手厚さはハンパないスね! 

竹内 補助金だけでなく、欧州では購入後の駐車場や公共施設の利用料が無料だったり、さまざまな恩恵を受けられるんです。欧州でEVを選ばない理由はないんですよね。 

――しかも欧州の環境規制は非常に厳しく、そこを考慮すると、欧州市場を優先せざるをえない。だからEV版の日本市場導入が遅れたわけですかね。

竹内 優先というより、MX−30には電動化の推進と同時に、もうひとつの使命がありました。それはこれまでご縁がなかったお客さまにもマツダのクルマに親しんでいただくことです。そのためには欧州でEVを出したほうが、単純に訴求効果が高いなと判断しました。一方、日本ではマイルドハイブリッドのほうがお買い求めやすいのかなと。

MX‐30EVモデルの主な注目点(1)35.5kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載。バッテリーは35.5kWhと車格的には小容量だが、マツダいわく、「製造・走行・廃車までのトータルのCO2の排出量削減が重要。それゆえ地球環境を踏まえると、この電力量が最適解」とのことmatsuda11.jpg
注目点(2)メインテリアはMX−30のマイルドハイブリッドモデルと変わらないが、メーターは「EVモデル」専用となる。駆動用バッテリーのレベルなどがデジタル表示される。かなり近未来的なメーターだ

――確かにマイルドハイブリッド版のMX−30のスタート価格は242万円ですからね。オシャレなクルマとしては安いし、日本はEVに対して積極的とは言い難い。

しかしそんななかで、これからマツダはEVをどう攻めていくんですか? 丸本明社長は2030年のEV比率目標を現在の5%から引き上げると明言していますし、品ぞろえも増やすとおっしゃっていますけれども。

竹内 マツダが一番大切に考えているのは、お客さまに笑顔になっていただくことであり、マツダ車で気持ちよく走っていただくことです。それがマツダの目標です。

そのなかで今の地球環境や各国の規制、お客さまの環境に合わせてEVからマイルドハイブリッド、そして来年発売予定のロータリーエンジンを発電機として使うEVモデルなど、さまざまなバリエーションをマツダはご用意しています。

●試乗&インタビューした人・小沢コージ
自動車ジャーナリスト。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのCARグルメ』(毎週土曜17時50分〜)。YouTubeチャンネル『KozziTV』。著書に共著『最高の顧客が集まるブランド戦略』(幻冬舎)など。日本&世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

撮影/本田雄士 小沢コージ

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