「今が一番おもしろい」と言われる『キン肉マン』を、"広告界の風雲児"三浦崇宏が分析!「さらなるブレイクの企画は、超人たちのタレント事務所を設立!?」

『「何者」かになりたい 自分のストーリーを生きる』が発売中の三浦崇宏氏

「週刊少年ジャンプ×東京メトロスタンプラリー」(17年)や、歴史マンガ『キングダム』を"一番売れているビジネス書"と位置づけたキャンペーン(18年)など、大胆かつドラスティックなアプローチで商品を"再定義"する企画で話題を生む「The Breakthrough Company GO」代表・三浦崇宏(みうら・たかひろ)が、4月5日、『「何者」かになりたい 自分のストーリーを生きる』(集英社)を上梓。今、業界で最も勢いのある"広告界の風雲児"の書籍は、早くも話題を呼んでいる。

勢いのある、といえば「今が一番おもしろい!」と評判のマンガ『キン肉マン』(作:ゆでたまご)。昨年8月からは9年ぶりに『週刊プレイボーイ』本誌に復帰しており、ニュースサイト『週プレNEWS』とのダブル連載で新シリーズがスタートしている。アニメやキンケシブームなどで日本を席巻していた80年代ほどではないが、毎週、連載の更新日である月曜日には登場超人の名前がトレンド入りするなど、2021年もいまだその勢いは衰えない。

初の対談集となる『「何者」かになりたい』で、鮮やかでキレのある人生相談を展開した三浦氏が大のプロレス好き、そして『キン肉マン』も読んでいると伺い、「『キン肉マン』という作品は、この先『何者』になるべきか?」をちゃっかり相談してきた!

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――『キン肉マン』の全盛期の熱気を、もう一度取り戻したいんですが、単刀直入に聞きます、どうすればいいですか!?

三浦 なるほど。『キン肉マン』自体は、依然勢いはあると考えていいんですか?

――そうです! でも、80年代の『キン肉マン』ブームにはまだまだ届いていないというか......。

三浦 なるほどね......はい、わかりました。『キン肉マン』の超人で、タレント事務所をつくりましょう。

――えっ、「タレント事務所をつくる」ってどういうことですか?

三浦 『キン肉マン』って、ほかのマンガと比べても多彩なキャラがたくさん登場しますよね。つまり『キン肉マン』という作品を「個性的なメンバーが集ったタレント事務所」と定義してしまうんです。

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――『キン肉マン』=マンガ作品、という前提を一度脇に置く、と。

三浦 今コロナ禍で、以前みたいに外でバリバリ働くこともできませんよね。「GO」(※三浦さんの会社)でも最近、「GO:GOOD」(日本コカ・コーラ)という飲料のお仕事をやったんですが、「なまけることは、いいことだ。」というコピーをつけました。これからの時代は「仕事で楽する」ことを肯定していこう、と。「超人タレント事務所」なら、働くのは超人だし、われわれ人間は他のいろいろなことに時間を割ける。

さらに「超人タレント事務所」では、超人たちが戦いの傍(かたわ)ら、企業タイアップを取ってくる。「マッサージ店のイメージキャラクターにアシュラマンが就任」なんて面白いでしょ(笑)。『スター・ウォーズ』だって新作映画が毎年出ているわけじゃないけど、タイアップやグッズといったIP(知的財産)を管理して莫大な利益を生んでいるじゃないですか。さらにいえば、『キン肉マン』の単行本を売ることだけにこだわらなくたっていい。単行本は「広告」みたいなものと考えてください。

――単行本は「広告」......、具体的にいうとどのようなことでしょう?

三浦 例えば、YOASOBIに代表されるような、今人気の"夜系アーティスト"をイメージしてください。曲は誰でも知ってますし、YouTubeの再生回数は億単位(※)、紅白歌合戦にも出てる。でも、「CDを買った」って話あまり聞かないですよね。じゃあ、彼らは何で儲けてますか?

(※)YOASOBIの代表曲「夜に駆ける」のオフィシャルチャンネルでの再生回数は、およそ2億回

――CMタイアップや、オンラインライブのチケットなどでしょうか。

三浦 そう。レコード会社やアーティストは今や、CDの売り上げで儲けようとは考えていない。だから楽曲は「広告」として割り切り、YouTubeで無料公開する。

『キン肉マン』も同じく、マンガそのもので利益を上げることを優先するのではなく、連載を「広告」、"未来のキン肉マンファンにアプローチする手段"として考えればいいんです。 例えば、単行本も1種類だけじゃなく、コアファンのための『豪華愛蔵版』を2000円ぐらいで売りつつ、新規読者に届けるための『廉価(れんか)版』を思い切って100円で売ってもいいかもしれない。単行本を「広告」ととらえると、このようなアプローチも可能ですよね。まだ読んだことのない若者に周知できれば、高確率で刺さる魅力が『キン肉マン』にはありますから。

――しかし、「キン肉マン=マンガ作品」というイメージが強く、「連載は広告」という考え方は少し極端というか、すんなりのみ込めない部分もあります。

三浦 先ほどのYOASOBIだって、CDを売るのに注力していないからといって、楽曲作りをないがしろにしているわけじゃない。それと同じです。ゆでたまご先生みたいな"表現する人"って、作品が売れる・売れないとは関係なく、「何かを表現し続けないと生きていけない人」だと思うんですよ。

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――楽曲やマンガへのエネルギーがあってこその戦略、ということですかね。

三浦 そうそう。となると、ゆでたまご先生が今後『キン肉マン』を描き続けるために、編集部を含めた周りは何をすればいいのか?と考えたときに、僕が提案したいのは「単行本を100万部売る」ではなく、「キン肉マンというコンテンツで100億円売り上げる」ということ。そのための手段は必ずしも単行本だけでなくてもいい。

――「マンガ作品で売り上げを伸ばす」というと、「単行本をいかに売るか」を考えてしまいがちですが、原点に立ち返ることが解決の糸口になる、ということですね。

三浦 僕がこういう提案をしているのも、ゆでたまご先生が『キン肉マン』で40年間、キャラクター個々のストーリーを描いてきたから。スグルやテリーマンが、実在の人間と変わらないぐらい濃密な物語性を有しているから、『キン肉マン』という世界から独立した「タレント」として活動できるんじゃないか? そういう意味では、「原点に立ち返る」というより、「前提をぶっ壊す」ってこと。人間がひとりもいない芸能事務所があったっていいよね、という。

――新刊『「何者」かになりたい』でも、起業家・プログラマーの山内奏人さんとの対談で「前提をぶっ壊すのが前提」というフレーズがありました。

三浦 今回の相談って、当初「キン肉マンの熱気を取り戻したい!」って話だったでしょ? その前提からまず"ぶっ壊す=疑う"んです。「待てよ、なんで熱気を取り戻したいんだろう?」って。そう考えると、「全盛期ぐらい単行本を売りたいのかな?」「いやでも、そもそも単行本を売りたいのって、利益を上げるためだよな」「なら、単行本を売る必要はないんじゃないか?」「であれば、単行本は広告と位置づけて......」って、すべてを疑って、再定義していく。あらゆる要素を細かく分解し、最適解かどうか吟味する。

――この演算を行なった結果が、「キン肉マンタレント事務所化計画」である、と。

三浦 この思考法の癖をつけていくと誰でも柔軟な発想ができるようになりますよ。広告業界の人に限らず、役に立つ場面があるかもしれません。

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――『「何者」かになりたい』には、インフルエンサーのゆうこすさんや文筆家・カツセマサヒコさんといった9人の"新時代のリーダー"と三浦さんの対談が収められています。今をときめくクリエイターでも、「自分が何者なのか」をつかみかねている、ということなのでしょうか?

三浦 そうですね。でも、この本で一番言いたいのは「そもそも『自分が何者か』なんて無理にわかろうとしなくていいんじゃない?」ってこと。自分は何者なのか悩んだり、何者になりたいのかわからず焦ったりする必要なんてない。それより大事なのは「自分の声と向き合うこと」。今の人たちは、周囲や社会の評価を気にして、自分を置き去りにしがちですから。

――具体的に、どのようにすれば自分の声と向き合えるのでしょう。

三浦 例えば、流行のマンガや映画を見たとします。そのとき「なんとなく面白かった」で終わるんじゃなくて、「本当に面白かった?」「みんなが面白いっていうから読んでるだけじゃない?」って問いかけてみる。自分の感情に正面から向き合うことは、「自分が今何者なのか」を見つめることでもあります。僕はよく「スタンスを確定させる」って言いますけど......そういう意味では、"生き方のモデルケース"をたくさん見ることもいいですね。例えば、それこそ『キン肉マン』とか。

――超人たちが"生き方のモデルケース"!?

三浦 あんなにキャラクターが立った登場人物が何十人も登場するマンガ、ほかにないでしょ? キン肉マンを読んでると、「俺はテリーマンに似てるな」「ロビンマスクみたいなところもあるな」って、絶対自分と近しいキャラが見つかるはず。実は、僕が「キン肉マンソルジャーと自分って立場が似てるな、ああいうリーダーになりたいな」って思ったみたいにね(笑)。そして彼らの生きざまを見て、自分と照らし合わせてみることから始めてみたらどうでしょうか。

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●三浦崇宏(みうら・たかひろ)

The Breakthrough Company GO 代表取締役PR/CreativeDirector。2007年博報堂入社、マーケティング・PR・クリエイティブの3領域を経験、TBWA\HAKUHODOを経て2017年独立。「表現をつくるのではなく、現象を起こすのが仕事」が信条。Cannes Lions、PRアワードグランプリ、ACC TOKYO CREATIVITY AWORDS グランプリ/総務大臣賞など受賞多数。著書『言語化力』(SBクリエイティブ)がAmazonのビジネス書ランキングで1位に。ほかにも『超クリエイティブ』(文藝春秋)、『「何者」かになりたい 自分のストーリーを生きる』(集英社)などを出版。東京大学、早稲田大学、筑波大学などで講師実績あり

取材・文/結城紫雄 撮影/鈴木大喜

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