売り上げアップにV字回復! コロナ禍に負けないローカル飲食チェーンの逆境ビジネスがすごい!

「コロナ禍をイベントに変えてしまうような前向きな姿勢がある。成功しているローカルチェーンには、そんな機転の利く経営者が多いと感じます」と語る辰井裕紀氏

長引くコロナ禍で未曽有の苦境に陥っている飲食業界。そんななか、地方都市に目を移してみれば、元気に頑張っている飲食チェーンも存在している。『強くてうまい!ローカル飲食チェーン』(PHPビジネス新書)は、7社のローカルチェーンを題材に、各社の工夫と企業努力を追った一冊だ。

著者の辰井裕紀(たつい・ゆうき)氏に、逆境に強い飲食チェーンの秘密を聞いた。

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――ローカルの飲食チェーンに注目したきっかけはなんだったのでしょうか?

辰井 『秘密のケンミンSHOW』のリサーチャーをやってきた経験が大きいです。各地の食文化や習慣についてのリサーチに、かつて7年携わりました。そんななかで、ローカルチェーンならではの特性を生かして、全国チェーンに負けない繁盛ぶりを見せるお店がいくつもあることに興味を持ったことに加え、そんな私にうってつけの企画を編集者からもらったことが今回の本を書くきっかけになりました。

――本書では主に7つの企業が取り上げられていますが、飲食チェーンがローカルにとどまるメリットはなんでしょうか。

辰井 単純に、本社と店舗と工場がそれぞれ近距離にあるというのは、わかりやすいメリットです。関西でベストセラーの豚まんを販売する「551HORAI」は、工場から約150分以内で輸送できるエリアにしか店舗を置かない方針です。常に新鮮な商品を届けられますし、品切れになりそうなときはすぐに補充できる体制を構築しています。

またこういう世の中になると、観光客主体ではなく、地域に根差してやってきたことで、地元民の支持を保ち続けられるのは大きいです。岩手県の「福田パン」はもともと、スーパーや学校の購買部での売り上げをがっちりつかんでいますから、強いんですね。

――ローカルならではの取り組みで、とりわけ印象的だったことを教えてください。

辰井 いろいろありますが、例えば地元のスポーツチームをしっかり応援している企業が多いこと。具体的には、熊本県の「おべんとうのヒライ」はサッカーJ3リーグの「ロアッソ熊本」を、茨城県の「ばんどう太郎」は同じくサッカーの「つくばFC」を、埼玉県の「ぎょうざの満洲」は卓球Tリーグの「T・T彩たま」をといったように、それぞれ地元チームをスポンサードして、コラボ商品の企画までしています。

私自身、地元の柏レイソル(千葉県柏市)を応援していて感じたことですが、スタジアムで地名を叫んだり、地元チームの浮沈に一喜一憂したりするのは体験として強烈です。そこに地元企業の名を冠したユニフォームや看板があると、自然に好感を抱いてしまうものなんです。

サポーターにはスポンサーの商品を積極的に購入する文化もありますし、これは企業戦略としても理にかなっています。地元と企業が支え合う好例ですね。

――またコロナ禍を逆手に取り、売り上げアップにつなげている事例が多いのも興味深い点です。

辰井 「ぎょうざの満洲」では昨年4月から5月の緊急事態宣言下に、それまで週に2度実施していたテイクアウト用の生餃子の特売日を毎日行なうことで、製造数前年比140%を記録しました。

また、三重県の「おにぎりの桃太郎」は、コロナで暗くなった地域を元気づけようと、協賛する地元の女子ラグビーチーム「PEARLS(パールズ)」の選手たちに、「がんばろう唐揚げ」を売ってもらう企画を仕掛けて好評を得ています。

いずれもコロナ禍をイベントに変えてしまうような前向きな姿勢があり、成功しているローカルチェーンには、そんな機転の利く経営者が多いと感じます。

――なるほど。成功している企業には、逆境をビジネスチャンスに変える工夫がある、と。

辰井 今回取材させていただいた経営者には、2代目が多かったんです。それぞれ先代が作り上げたものをブラッシュアップしたり、時代に合わせてシステムを改善したり。フロンティア精神を感じましたし、世襲社長のイメージが変わりました。

実際、「おべんとうのヒライ」などは、昨春の緊急事態宣言で営業を縮小せざるをえなくなった際、余剰人員を活用して、それまでアウトソースしていたおにぎりの製造や野菜加工を内製化しています。その結果、4月は1億円の赤字だったのに、5月には5000万円の黒字にV字回復しているんです。逆境をチャンスに変えた典型ですね。

――そうしたローカルチェーンが「地元から出ていかないで」といった声が上がるほど、地域で支持されているのはなぜでしょう。

辰井 北海道・帯広の「カレーショップインデアン」もまさにそのケースです。同社は品質を高くキープするために目の行き届く地元にとどまるカレー店ですが、一方では閉店時間を22時→21時にするなど、ホワイト企業化を進めています。お客さんだけでなく従業員にも選ばれる企業であることで、地域のソウルフードとして認められるようにもなったと思います。

――結局のところコロナとは無関係に、これまでずっと地域のニーズと真摯(しんし)に向き合ってきた会社が勝利しているんですね。

辰井 ええ。「インデアン」は夕暮れどきになると毎日、地元の人々が鍋を片手にカレーを買いに来るんです。もともとあった地域の文化が現在のテイクアウト需要と合致し、コロナ禍でも売り上げを維持できています。

また、「おにぎりの桃太郎」ではコロナ前から品質維持のため個包装にこだわり、それが感染症対策としても奏功しています。「ぎょうざの満洲」のモバイルオーダーにしても、コロナ前から利便性を考えて準備した施策がものをいいましたし、いずれも付け焼き刃ではなく、何年も前から取り組んできた企業努力の賜物(たまもの)なんです。

――今回、コロナ禍での取材には苦労も多かったのでは。

辰井 コロナでなければもっと工場やセントラルキッチンの中まで見せてもらえる現場もあったのではないかと思うので、そこは少し残念でした。それでも、こんな状況でありながら大半の企業がトップ自ら取材に対応してくれました。

多くのローカルチェーンのトップは、まるで一営業マンのようにフットワークが軽くて、それもまた成功につながったのではないでしょうか。ぜひこの本をきっかけに、各地の飲食チェーンに注目いただきたいですね。

●辰井裕紀(たつい・ゆうき)
1981年生まれ、千葉県出身。ライター、番組リサーチャー。元放送作家。過去に『秘密のケンミンSHOW』(日本テレビ系)のリサーチを7年務め、そのほかにも携わった番組は多数。現在は『卓球ジャパン』(BSテレ東)を担当する。2016年からライター業を始め、主にネット媒体で執筆。外食やローカル、卓球、調べ物系のネタを中心に書く。『辰井裕紀のブログ』【https://pega3.hateblo.jp】

■『強くてうまい! ローカル飲食チェーン』
(PHPビジネス新書 1210円(税込))
「日本は地域ごとに食文化や習慣が違うからおもしろい。それを何よりも体感できるのが、ローカルチェーン」。かつて7年ほど『秘密のケンミンSHOW』の番組リサーチャーを担当していた著者が、これまでの蓄積と新たな取材を基に、ローカルチェーンが繁盛するとっておきのルールを新書化。全国チェーンやコロナにも負けず繁盛する理由とは? 7つの精鋭ローカルチェーンのビジネスの工夫に迫る
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取材・文/友清 哲

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