コロナ長期化と岸田ショックでオレたちの年金積立金が溶け始めた!

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岸田政権の発足以降、日本株は連日続落。ここで問題なのが、株式や債券で運用されている年金積立金だ。これまでは順調に資産を増やしてきたが、首相就任後から今までですでに約2.4兆円のマイナスが。これが長期的に続くと年金財政は悪化してしまうけど、マジで大丈夫なのか?

■マザーズはリーマン級の暴落

「東証マザーズの成長株を中心に投資していたら、昨秋に約3000万円あった運用額が、1月末には1000万円台後半まで減ってしまった」

こう肩を落とすのは投資ビギナーの30代男性だ。

大損の背景には、昨年10月から続く株価の大幅下落がある。昨年9月に高値3万円台をつけていた日経平均株価は、10月の岸田政権誕生後から急降下。今年2月には2万6000円台まで落ち込んだ(図表@)。

昨年9月14日時点では約778兆円あった東証1部上場企業の時価総額は1月27日時点には約679兆円と、100兆円近くが吹き飛んだ計算だ。特に冒頭の男性が投資していた、東証マザーズ指数の1月の下落率に至っては年初から約25%と、リーマン・ショック級の水準に。こうした一連の暴落は「岸田ショック」と揶揄(やゆ)されている。

しかし、先の投資家の大損は株を持たない人にとっても人ごとではない。株価の下落は全国民に影響を与えると指摘するのは、1級FP技能士の古田拓也氏だ。

「厚生年金や国民年金などの公的年金、そして個人で加入する生命保険など、今回の暴落は広範囲に波及します」

どういうことか?

「公的年金の支払い原資となる積立金は一部が株で運用されていますが、その積立金が株価暴落で大きく目減りしている。つまり、年金の支払い原資が減っているんです。なお、生命保険など民間の保険商品も、加入者の拠出した保険料が運用されて保険金の原資になっている点は同じです」

しかし、そもそもなぜ公的年金の支払い原資が、元本割れのリスクがある株で運用されているのか。

「少子高齢化で公的年金の払い手が減る一方、給付額は増えていきます。その増加分を吸収して現役世代の負担を少しでも軽くするためには、積立金を運用して利益を積み増さねばならないんです。

具体的には、厚生労働省所管の機関である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国内外の株式や債券に分散して長期投資しています(図表A)。この手法は本来それほどリスクが高いものはなく、これまでも着実に運用益を出し続けてきました。ところが、岸田さんの首相就任から現在までのGPIFのパフォーマンスを試算すると、約2.4兆円が消失しているのです」

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■GPIFの評価損は長期的に続く?

しかし、これまでGPIFが20年間の運用で生み出した利益は約107兆円と、文句なしの実績だ(図表B)。そのうち約2.4兆円が減ったといっても運用益の2.2%にすぎず、大した問題ではないのでは?

「確かに今回の下落は、コロナの長期化や米国金利の利上げといった短期的要因によるところもあるでしょう。ただ問題は、岸田政権が推し進める『新しい資本主義』が、長期にわたる株価低迷の引き金を引きそうだということ。日経平均の下落は岸田首相就任直後の10月から始まっていますが、これは『新しい資本主義』を市場が警戒しているからにほかなりません」

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岸田政権は「成長と分配の好循環」を実現すると表明しており、特に金融所得課税の見直しに意欲を示していた。

「金融所得課税は株の配当や譲渡益に一律20%の税を課すものですが、給与所得の最高税率55%と比べると低い。そのため所得に占める金融所得の割合が多ければ多いほど、税の負担率は低下します。

これには『金持ち優遇』との批判があり、金融所得課税の強化を検討したわけですが、所得に応じた税率ではなく一律引き上げにしようとするなど、手段が乱暴すぎる。その結果、富裕層の投資意欲を減退させ、株価の下落を引き起こしています」

こうした不信感は一般の個人投資家へも波及する。

「今や投資家は富裕層ばかりではありません。政府はこれまでNISA(ニーサ/少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)などの制度をつくり、国民に広く投資を推奨してきました。

いわゆる『老後2000万円問題』を知らしめた金融庁報告書では、年金不足に備えて資産運用をすべしというメッセージまで発信して投資家の裾野を広げてきた。その呼びかけに応じて投資を始めた中間層も多い。そんな人たちに後出しで増税するとなれば、こちらでも投資離れが起きかねません。

ただでさえ日本株は海外投資家から見放され始めているのに、日本からも買い手が消えれば株価は上がるはずもない。となれば当然GPIFのマイナスは長期化していくでしょうし、その結果、年金受給額の減少や受給開始年齢のさらなる引き上げも十分考えられます」

3ヵ月後には今期の運用実績が発表される予定だ。公表される損失はこれまで積み上げた収益から見れば小さな額かもしれないが、今の下落の構造を知ると不安が残る。かといって、働いて得た給料よりも投資で得た所得のほうが税率が低いというのも、なんか納得いかない......。現役世代にとってはなんとも悩ましい状況に、今の日本はおかれているのだ。

取材・文/西田哲郎

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