冷凍自販機ビジネスの最前線! 餃子やラーメンだけでなく、キャビアやウナギまで登場

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コロナ禍で話題となった餃子やラーメンなどの冷凍食品自販機。現在は広がりを見せ、さまざまな食品が売られているという。その最前線をレポート。そして、コロナが落ち着いた今、この先の展望も探ってみた。

■冷凍自販機の勢いがスゴい

多種多様な冷凍食品を売る自動販売機が日本各地で急増している。

この冷凍自販機を製造しているのは、自販機メーカーのサンデン・リテールシステム(以下、サンデン)。「ど冷(ひ)えもん」の製品名で昨年1月末に発売して以降、設置台数は同年9月に1000台。今年3月末時点で3000台超とうなぎ上りだ。サンデンの芳賀日登美広報室長は、「現時点で47都道府県すべてに設置され、その台数は今も増え続けている」という。

地方のユニーク商品では、和歌山・田辺市の漁港近くにある釜揚げシラスの自販機。兵庫・尼崎市の商店街にはすしやステーキ重の自販機。熊本・天草市の国道沿いには地元産の伊勢エビやブリの自販機が登場。冷凍自販機は大都市から地方へと広がり、企業規模に関係なく、食品を扱うメーカーや卸売業者、飲食店がこぞって参入する、一大ブームと化している。

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芳賀氏によると、「『ど冷えもん』が登場するまでは、冷凍食品の自販機はアイスクリーム以外、ほぼなかった」そうだ。アイスの自販機といえば、江崎グリコが展開する「セブンティーンアイス」が知られているが、実は、これもサンデン製。同社はこの自販機を基に設計を見直し、約2年間の開発期間を経て「ど冷えもん」を完成させた。

「これまでの冷凍自販機は、商品を収容する自販機内部のストッカーが小サイズで、入れられる商品の種類が少なく、汎用性も低かった。なので、自販機に入れる商品メーカーもスーパーやコンビニ向けとは別の製造ラインを設け、自販機専用商品を製造する必要がありました。

これを改良し、さまざまなサイズやタイプの容器を収容できる、業界初のマルチストックを採用したのが『ど冷えもん』。カップアイスなどの小サイズの商品から、従来は難しかった幕の内弁当サイズの大型商品まで、より多くの冷凍食品を自販機に詰められるようになりました」

改良された冷凍自販機「ど冷えもん」内部。大きなサイズの商品も販売できるようになった

とはいえ、サイズの流動性以外の急進的な技術革新があったわけではないのに、ここにきて冷凍自販機が爆発的に普及したのはなぜ?

芳賀氏は「これまで、冷凍自販機のマーケットを"おいしい"と感じる企業があまりいなかったから」と説明する。

かつて、ニチレイフーズがホットドッグなどの軽食を売る冷凍自販機を高速道路のサービスエリアなどで展開していた。これは加熱機能を備え、購入後すぐに食べられるタイプの自販機だが、最盛期の設置台数は約3500台だったという。

だが、ニチレイは昨年3月に自販機用商品の生産を終了し、同年中にすべての自販機の撤去を完了した。その理由について、同社の担当者は「商品の販売が伸び悩み、工場の製品ロット数にも達しなくなったため」と説明する。

冷凍自販機の食品はその場で食べられる利便性が重視されていたが、「ど冷えもん」は違った。食品流通業界誌の記者が語る。

「この自販機は冷凍食品を冷凍のまま販売し、自宅などでレンチンしたり、湯煎したりと家食に対応するもの。コロナ禍で家食が見直され、冷凍食品全体の売り上げが急伸しました。

一方、コロナ禍で売り上げ減に苦しんでいた小売店や飲食店にとって、24時間いつでも人と接触せずに商品を購入できる冷凍自販機は売り上げを補填(ほてん)するツールとしてハマりました。

その結果、和洋中のあらゆる飲食専門店が、店で売るのと同じ料理や食材を冷凍にし、自販機で売るという新しい販売スタイルが生まれ、定着したのです。質の高い専門店の味を自販機で提供することを可能にした点で『ど冷えもん』は画期的でした」

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■売り上げは本当にいいの?

では、実際のところ、自販機の売り上げはどの程度なのだろうか?

もりそばを提供するラーメン店「小金井大勝軒」(東京・小金井市)は昨年11月、店前の駐車場に「ど冷えもん」を設置し、もりそばを850円、中華そばを820円で、自販機にて販売している。

同店の店主がこう話す。

「自販機の売り上げは週に5万〜6万円程度。月単位では15万円程度ですが、過去には50万円を売り上げた月もあります。その分、イートインの売り上げに影響が出るのではと思いましたが、減らずに自販機の売り上げがそのままプラスになった形です。

近隣に住む主婦の方が昼間に、仕事帰りの方が夜の営業時間外に購入されるケースが多く、冷凍自販機が新規のお客さまを獲得することにつながりました」

自販機で黒字を達成している「小金井大勝軒」の店主

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商品は家で、ゆでて調理するスタイル

ほかにも売り上げが好調なのは、JR両国駅(東京・墨田区)から徒歩5分の裏路地にあるウナギの蒲焼きの冷凍自販機。ウナギの加工品の卸業者、大洋商事が昨年11月に設置したもので、中国産ウナギを使った"うなぎご飯"を650円という安価で販売している。

運営会社の担当者が語る。

「弊社の直販だから中間マージンが省かれる分、スーパーより安く提供できるのが強みです。販売履歴を見ると、3日に1回の頻度で、朝8時に決まって3個購入する方がいたりと、設置から半年たって、常連さんがつきました。この自販機の月商は50万円程度です。

正直、自販機でここまで稼げるとは思いませんでしたが、裏通りに置いて正解でした。大通り沿いだと、女性は『買うのが恥ずかしい』という心理が働くし、裏路地にあるからこそ、『自分しか知らない自販機がある』という特別感も生まれるのだと思います」

650円と安価で提供し、人気を博している、うなぎご飯。路地裏に設置したことも成功要因

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さらに、異業種から冷凍自販機ビジネスに参入して好調なのは、空調工事施工会社のDプラン。全国各地のえりすぐりの冷蔵・冷凍食品を集めた自販機のセレクトショップ「ピッポン」を昨年12月、都営浅草線中延駅前(東京・品川区)にオープン。

ジェラートの自販機や浜松餃子(ギョーザ)の自販機。キャビアの自販機、宮崎牛の冷凍生肉を売る自販機、ケジャンやトッポギ、冷麺など韓国料理を集めた自販機など、その内容は実に多彩だが、最も売り上げの高い自販機はなんなのだろう? 内藤大輔社長がこう話す。

「意外かもしれませんが、韓国料理の自販機です。月の売り上げは平均120万〜130万円。なかでもケジャンが一番人気です。老若男女問わず、韓国料理が人気なことと、この周辺に韓国料理店がないことも人気の理由でしょう。

逆に、苦戦しているのは『たこ焼き』。近隣にチェーン店がある影響も大きいのですが、冷凍自販機は"商品のユニークさ"が肝。ありふれた商品では、お客さまがつきにくいのかもしれません」

自販機モールのような形で成功している「ピッポン」。キャビアや宮崎牛の自販機もある

宮崎牛の自販機

そのほかの取り組みとしてユニークなのは、"当たり付き"の冷凍自販機を導入したこと。キャビアの自販機は通常10g缶2000円だが、当たりが出れば10倍に増量した100g缶が出てくる。「ここでの当選確率は30分の1」。同社はこの当たり付きキャビア自販機を、東京・新宿歌舞伎町の中心部にあるボウリング場にも設置した。

「そのボウリング場は朝6時30分まで営業していて、若い男性や女性がシャンパンを飲みながらボウリングに興じるという特殊な利用形態があるので、おつまみにキャビアが合うと踏みました。

また、酒に酔った勢いで何度もチャレンジしてくれるのでは、という期待感もあった。実際、販売履歴を見ると、購入機会が深夜の時間帯に集中し、一日だけで8万円を売り上げる日もありました」

冷凍自販機の売れ行きは、商品のユニークさと設置場所によって左右されるようだ。

キャビアの自販機

■電気代や初期費用は?

ここで気になるのは、初期費用や電気代などの維持費。「ど冷えもん」の正規販売代理店の担当者が話す。

「自販機本体は購入かリースになりますが、購入の場合は1台100万円台〜200万円程度。リースなら弊社の場合、5年契約で月々3万円です。維持費は電気代が最も大きく月7000円程度。計算すると、ざっと月10万円の売り上げがないと黒字化しません。

当社ではこれまで100台以上の設置に関わりましたが、正直なところ、赤字から脱却できない自販機も少なくありません。『ど冷えもん』は、置けば儲かる夢の箱ではないということです」

東京・築地場外市場にあるイクラの冷凍自販機も苦戦気味だ。昨年6月に設置され、イクラの醤油漬けを3500円(250g)、辛子明太子を980円、紅鮭の切り身を880円で販売するが、設置管理会社の担当者が苦しい内情をこう明かす。

「一時はメディアにも取り上げられ、月90万円を売り上げましたが、今は赤字です。イクラは年末年始以外あまり売れませんね......。市場が豊洲に移転して以降は築地の人通りが激減して厳しく、今は自販機の移転も視野に入れています」

さらに、こんな失敗事例も。前出の食品流通業界誌の記者が語ってくれた。

「ラーメンの冷凍自販機を展開していた事業者が、大手流通業界からのオファーを受けてラーメン自販機を置くことになりました。

しかし、その場所はショッピングモールのフードコート! まさに今、ランチなどの食事をとろうという人しか集まらないその場所で、冷凍ラーメンが売れるはずがないのは明らかでしたが、その事業者は大手に声をかけられたことに舞い上がり『客が多いので、絶対儲かる』と自販機を置いてしまったのです。

結果は、程なくして撤退。今後、誘い文句に乗せられて、自販機投資で失敗する事例が増えないかと心配になります」

■冷凍自販機今後の展望は?

そして、最後に気になるのは、コロナ禍も収まって、飲食店へ行くことに抵抗がない日常が戻りつつあるなかで、冷凍自販機が今後どう戦っていくのかということ。前出の食品流通業界誌の記者はこう語る。

「現状、冷凍自販機は物珍しさもあって、設置すればマスコミが続々と報じ、SNSでも拡散され、何もしなくても売り上げが伸びるというバブルのような状況ではありますが、このままコロナが収まっていけば一過性のブームで終わり、市場規模が縮小していく可能性も否定できません。

ただ、冷凍自販機の存在が認知され、そこで売られる食品が『こんなにもおいしかったのか』と気づいた人も多い。そうやって常連客をつかんだ、ユニークさのある冷凍自販機は今後も地域に根づいていくでしょう」

前出のサンデン広報の芳賀氏は、冷凍自販機の新たな可能性に期待を寄せている。

「今、農水産物を扱う地方の生産者や加工業者、飲食店などが、首都圏進出の足がかりに『ど冷えもん』をアンテナショップ的に活用する動きが広がり始めています。名古屋の郷土料理や特産品を"名古屋めし"とひとくくりにして販売する冷凍自販機が東京・神楽坂に設置されたのも、その事例のひとつです。

いきなり東京で店舗を出すのではなく、まずは冷凍自販機で試験的に販売、マーケティングをして、売れ行きが良ければ首都圏に本格進出するという手法です。地方のご当地グルメや特産品の販路拡大として、これからも積極的に『ど冷えもん』を活用していただきたいです」

冷凍自販機がニューノーマルになるか。今後の展開に注目だ。

取材・文/興山英雄

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