イーロン・マスクの買収でツイッターはどう変わる? ホリエモン、デーブ・スペクターほか識者が解説!

ツイッター社を買収したイーロン・マスク氏
ツイッター社を買収したイーロン・マスク氏

ツイッター社を買収したイーロン・マスク。彼の目的はなんなのか? 何を変えようとしているのか? そして、日本にはどんな影響があるのか? 識者の皆さんに解説してもらった!

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■イーロン・マスクはツイッターを進化させる!?

電気自動車メーカーの「テスラ」や宇宙開発企業「スペースX」のCEOで知られる実業家イーロン・マスクが、現地時間10月27日、総額約6兆4000億円で米ツイッター社の買収を完了した。その目的はなんなのか?

ITジャーナリストの三上 洋氏が解説する。

「イーロン・マスクは、ツイッター大好き人間なんですよ。何かあるたびにツイッターで発言してきましたし、ツイッター買収の経緯なども書き込んでいました。その大好きなツイッターを自由な言論の広場にしたいという思いで買収したんです。

この数年、ツイッターはほかのSNSと同様に、ヘイト表現や誹謗中傷、性的マイノリティであるLGBTQへの差別、テロをあおるような書き込みなどを削除したり、そうした問題投稿の多いユーザーのアカウントを停止するなどの規制をしてきました。

しかし、イーロン・マスクは、一民間企業が自由な言論を規制すべきではないという考えです。彼が常々言っているのは『ツイッターは町の広場であるべきで、どんな立場の人でも自由に何を言ってもいい』ということです」

イーロン・マスクとの面識がある実業家の堀江貴文氏も同意見だ。

「イーロン・マスクのツイッター社買収の目的は、現在、ツイッター社がヘビーユーザーを中心にポリコレ(ポリティカルコレクトネス=差別や偏見を含まない中立的な表現)の検閲をやっているので、それをやめて〝真に自由な言論空間〟をつくることです」

しかし、真に自由な言論空間をつくることには問題やリスクがある。前出の三上氏が語る。

「自由な言論空間にするということは、誹謗中傷やフェイクニュース、ヘイト表現などの対策をする人がいらなくなるわけですから、まず、そういう人がクビになります」

実際、イーロン・マスクは従業員の約半数に当たる3700人を解雇したという報道もある。

「そして、誹謗中傷やフェイクニュース、ヘイト表現が増えると、広告主はそんなイメージの悪いサービスに広告を出したくありませんから、広告を引き揚げることになる。実は、これが深刻な問題で、ツイッター社の売り上げの約9割は広告収入なんです。広告主に逃げられるとお金が回らなくなる」(三上氏)

そこで、イーロン・マスクは広告ではなく、サブスク(月額課金制度)などの有料オプションで収益化を考えているという。

「日本ではまだ始まっていませんが、アメリカなどでは『ツイッター・ブルー』というサブスクオプションがあります。これはツイートの取り消しやブックマークがたくさんつけられるなどの追加機能が使えるサービスです。

イーロン・マスクは、このサービスを月額4.99ドル(約730円)から月額7.99ドル(約1170円)に値上げして、認証バッジをもらえるというオプションもつけました」(三上氏)

認証バッジとは「本人であること」「著名人であること」「ツイッターのルールを守っていること」などの条件をクリアした人や企業に与えられているマークだ。しかし、今回、サブスクで認証バッジが付与されることには問題があるという。

アメリカのツイッター事情に詳しいテレビプロデューサーのデーブ・スペクター氏が説明する。

「認証バッジ制度は、メジャーリーグのセントルイス・カージナルスの監督になりすました人がヘイトスピーチをしたことが問題になって、作られました。別にステータスのためではないんです。なりすまし防止のためなんです。

お金を払えば認証バッジがもらえるということになると、どこまで本人確認をするのか疑問が残り、簡単になりすましができる可能性がある。認証の信用度が落ちます」

それだけではない。三上氏が語る。

「逆に言えば、お金を払えない人はバッジがつかなくなるわけですよね。例えば、市長が認証バッジを得ようと思ったら7.99ドル払わなければいけない。それを市の予算で出せないとなったら、これまでついていた認証バッジがなくなります。すると、なりすましが出る可能性がある」

一方で、このサブスクが成功する可能性もあるという。デーブ氏が話す。

「イーロン・マスクを甘く見てはいけないのは、彼は電気自動車の『テスラ』や宇宙ロケットや衛星インターネットアクセスサービスの『スペースX』などの企業を大成功させたように先見の明があることです。

今は音楽配信や画像編集ソフトなど多くのサービスがサブスクに移行しています。ひょっとしたらイーロン・マスクは、今後SNSもサブスクが普通になることを予想して、先に手を打っているのかもしれない。

例えば、タレントや企業は宣伝がたくさんできるのならば、オプションで月1000円払っても安いと思うかもしれません。一般の人だって多くの人が見てくれるならお金を払う人が出てきてもおかしくないでしょう」

さらに、ツイッターを進化させる可能性もあると三上氏は言う。

「スーパーアプリ化を考えているかもしれません。スーパーアプリとは、ツイッターにショッピングができるECサイトやPayPayのような決済機能、ウーバーのように出前やタクシーが呼べるサービスなど、いろいろな機能が集約されているアプリのことです。それをツイッターの中に入れ込むことを考えているかもしれません。

LINEやWeChatなどがスーパーアプリですが、アメリカでは強力なスーパーアプリがあまりない。そこで、ユーザー数が多いツイッターをスーパーアプリ化すると莫大(ばくだい)な収益を得られます」

堀江氏も成功の可能性を語る。

「イーロン・マスクは、電子決済サービス『ペイパル』の前身となる『Xドットコム』の創業者で、その会社を売却したお金で『テスラ』と『スペースX』を大成功させました。もともとITの経営者ですから、僕はツイッター社の業績は今後、めちゃくちゃ良くなると思います」

賛否両論があるイーロン・マスクのツイッター改革。成功するのか失敗するのか、まだ先がわからない状況だ。

■ユーザーは残るのか? それとも離れるのか?

では、こうした動きをユーザー側はどう考えるのか。デーブ氏はツイッター離れが起こる可能性があるという。

「アメリカで喜んでいるのは、共和党の支持者だけです。トランプのツイッターアカウントが復活するかもしれないって。それ以外で喜んでいる人はいません。

それに有料化すると一般の人が離れていく可能性はあります。地上波のテレビだってそうじゃないですか。無料だから多くの人が見ているわけで、有料にしたらめちゃくちゃ減りますよね。ツイッターはユーザー数が多いから、広告もサブスクも成り立つわけで、それが減ったら相当なダメージになると思いますよ」

一方、『ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか』(光文社新書)などの著書があるソーシャルメディアに詳しい法政大学社会学部の藤代裕之教授は、すぐにツイッターを離れる人は少ないだろうと言う。

「これまで使い慣れているサービスですし、現在フォローしている人やフォローされている人がいるわけです。それを捨ててまで移るということは考えにくい。

例えば、行きつけのイタリアンレストランのオーナーが代わったからって、すぐに行かなくなるかといったらそうではなくて、何回か行って味が落ちていたら自然と足が遠のくはずです。ですから、すぐにユーザーが減るというわけではないと思います」

最後に日本への影響はどうなのか。三上氏が語る。

「ツイッターユーザー数の1位はアメリカで、2位が日本です。ですから、日本も大きな影響を受けるはずです。

すでにツイッターの日本法人の従業員もクビになったと報道されていますし、今後、誹謗中傷や差別発言、プライバシーを暴露するようなツイートの削除が甘くなる可能性はあります。日本のツイッターも今後しばらくは荒れるんじゃないでしょうか」

イーロン・マスクの買収によって、無法地帯化しそうなツイッター。広告が減り、ユーザーが離れていけば、消滅の危機もある。それでもイーロン・マスクはポリシーを貫くのだろうか。

取材・文/村上隆保 写真/時事通信社

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