現行型登場が6年半前、e−POWER投入が2年前。今なお売れ続ける「日産ノート」人気のワケ

現行型登場が6年半前、e−POWER投入が2年前。今なお売れ続ける「日産ノート」人気のワケ

日産は1月下旬、北海道で雪上試乗会を開催。ノートe−POWERに追加された最新の4WDモデルを試乗した自動車ジャーナリストの塩見サトシ。この試乗会で日産関係者に突撃取材を敢行、人気の秘密を探った

新車販売の絶対王者といえば、プリウスとアクアが頭に浮かぶ。しかし、その2台を蹴散らし、昨年の年間トップに輝いたのは最新モデルでもない、日産ノートだ(軽自動車および海外ブランドを除く)。いったいなぜ? 話題の四駆にも試乗し、その謎に迫った。

■日産ノートが快進撃を続けるワケ

2018年に最も売れたクルマ(軽自動車を除く)はトヨタ・プリウスでもなければホンダ・フィットでもなく、日産ノートだった。販売台数13万6324台。今年1月の販売台数も引き続きノートがナンバーワンを獲得している。そして2位はこれまた日産のセレナ。

17年に発覚して以降、長期にわたって完全に改善されることがなかった完成検査に係る不適切な取り扱いや、昨秋の経営トップの逮捕など、前代未聞のゴタゴタが続く日産だが、開発陣はヒットモデルを生み出し、販売現場は懸命に売っている。

それはそうと、現行型ノートは6年半前の12年9月に登場したクルマである。セレナも発売は16年8月。新車効果が大きい(良しあしよりも新しさが販売を左右する傾向)とされる日本市場で、発売からこれだけの時間がたったクルマがワンツーフィニッシュを記録したのは異例だ。

そもそも現行ノートはどういうクルマなのか、12年までさかのぼって考えてみよう。日産はそれまで最もベーシックなクラスにマーチ、その上にノート、その上のゴルフクラスにティーダをラインナップしていたが、モデルチェンジを機に、ノートをこれまでより立派に仕立て、その代わりにティーダをなくす決断をした。これが12年のこと。この頃から日産はモデルを絞って集中して売る戦略を強めた。

ノートには、トヨタでいえばアクアとプリウスのクラスをまたがって担う使命が課せられ、当時流行したダウンサイジングコンセプトにのっとって3気筒エンジンを搭載。

しかし最初から注目を集めたわけではない。"薹(とう)が立った"というと失礼だが、発売からしばらくたってノートがランキングトップに上り詰めたのは、16年に追加されたe−POWERがきっかけだった。これで一気に人気に火がつき、同年11月には日産車としては30年ぶりに新車月間販売台数首位に立つ。

e−POWERは、ハイブリッドの一種で「シリーズハイブリッド」と呼ばれる。具体的には、エンジンが生み出したエネルギーを駆動に用いるのではなく、いったん電力に変換し、その電力をモーターに伝えて車輪を駆動する仕組み。

モーター駆動に限れば、EV(電気自動車)と同じ仕組みだ。実際、ノートやセレナのe−POWERには、リーフと同じEM57というモーターが採用されている。

EVのリーフは外部から充電した電力を用いてモーターを駆動するのに対し、e−POWERはエンジンが発電した電力を用いてモーターを駆動する。ミラーサイクル化して発電専用に最適化された1.2L3気筒エンジンが搭載され、エンジンとモーターの間にバッファとして小さな容量のバッテリーを搭載するものの、発電した電力をほぼそのまま駆動に用いる。

これの最大のメリットは、日産がノートを"充電のいらないEV"とPRするように、ガソリンを給油するだけでモーター駆動ならではの新しいドライバビリティを味わうことができる点だ。また、エンジンが駆動を担うのではなく発電に徹することで、効率のよい状態を保ちやすく、結果燃費がよくなる。

これらが評価され、ノートは狂い咲き。じわじわ販売台数を伸ばし、冒頭で述べた記録を達成。これだけ世間がEV、EVと騒げば乗ってみたくなるのが人情というもの。だが集合住宅に充電設備はなく、自宅(や会社)でチャージすることができない人はおいそれとは踏み切れない。

だからこそクルマとの付き合い方を変えることなくEVのモーター駆動感を味わえるe−POWERが大ウケしたのではないか。登場以来、ノートe−POWERに何度も試乗し、静かで、継ぎ目のない加速が気持ちよく力強い走行感覚を味わった。

エンジンは発電専用のため、最高出力79PS、最大トルク103Nmにすぎない。だが実際の走りに関係するのは、最高出力109PS、最大トルク同254Nmのモーターのほう。これなら1.2tのノートe−POWERも活発に走る。モーター駆動の特性で発進の瞬間から最大トルクを発するのがよい。

■モーターアシスト式4WDの実力とは?

先月、北海道江別市の特設の雪道で、昨年7月に新たに追加されたノートe−POWERの4WDをテストする機会を得た。アクセルペダルをラフに踏むとスタッドレスタイヤをもってしてもグリップを失ってしまうが、それはどんなクルマも同じ。雪上であるということを意識してマイルドに踏めば雪質にかかわらずスムーズに発進できた。 

e−POWERと組み合わせられる4WDは、プロペラシャフトによってフロントの駆動力をリアにも配分するタイプではなく、リア車軸に独立した最高出力4.8PS、最大トルク15Nmの小型モーターが配置され、発進から30キロ程度に達するまで後輪を駆動するというもの。かつてマーチなどに設定されたe−4WDシステムを流用している。

発進アシストに絞った簡易4WDのため、状況に応じて前後トルク配分を変化させるような複雑な仕組みをもっているわけではない。ドライバーがスイッチで2WDか4WDを選び、4WDモードを選ぶと前輪がスリップしようとしまいと発進から30キロまでリアも駆動する。

したがって高速走行時にスタビリティを高める効果はない。ずっと4WDに入れっぱなしでもわずかに燃費が落ちる以外の問題はない。シンプルな仕組みだが、生活四駆として十分だ。

e−POWERは、アクセルオフ時にモーターの回生によってエンジン駆動車よりも大きな減速Gを得られ、微妙なスピードコントロールをアクセルペダルのオン/オフのみで行なうことができる。いわゆるワンペダルドライビングだが、これが雪上で扱いやすい。

ブレーキペダルへの踏み替えがないということが、こんなにも心強いこととは知らなかった。4WDが追加されたことでe−POWERが雪国の人の選択肢にもなりえるようになったのは喜ばしい。これでノートの販売好調はしばらく続くだろう。

■e−POWERを他モデルにも!

そもそも日産は開発リソースをEVに傾注した時期が長く、大小さまざまな車種へのハイブリッド展開は国産他社に比べて遅れていた。日産はこの10年で世の中がもっとEV時代になると踏んでいたが、そのもくろみが外れた。

そのハイブリッドの遅れを短期間で巻き返すべく開発したのがe−POWERだった。シリーズハイブリッドは目新しい技術ではなく、むしろ他社は採用しなかった策といえる。日産が採用したのは、だから苦肉の策だ。

ところがふたを開ければ"充電不要のEV"は大ヒットした。ノートが息を吹き返したのを見た日産は、エクストレイルに用いるハイブリッドを用いて試作車まで完成させ、発売も近づいていたセレナ・ハイブリッドの開発をストップし、セレナにもe−POWERを与えた。 

ライバルのトヨタ・ノア/ヴォクシー/エスクァイアがハイブリッドを前面に押し出して戦うなか、セレナになかなかハイブリッドが出なかったのはこのためだ。そしてe−POWERを採用した結果、セレナも販売好調に。

まさにe−POWERは日産の救世主なのだ。ただし、100キロを超える高速走行時にはエンジンが生む回転エネルギーを電気エネルギーに変換する際のロスが大きくなり、高速になればなるほど燃費がよくなくなる。このため平均速度が高い市場への展開は難しい。

また、ノートはともかくセレナなど車重のかさむモデルに使った場合、長く続く登坂路でまれに発電が追いつかず、エンジンのパワーだけで走行することを強いられ、著しいパワー不足に陥ることがある(ただしこの問題について日産は、そこまで長い登坂路は日本の公道にゼロではないもののほとんどない。またそういう場面でもきっちり制限速度を守っている限り問題は起きないと主張する)。

もう一点。バッテリー容量が小さいため、長い下り坂ではすぐに満充電となる。そうなるとモーターによる回生が行なわれなくなる。このタイミングでややブレーキフィーリングが変化するのだが、これを嫌うドライバーもいる。

■まだe−POWERは決して万能な技術ではない。

数々のメリットがデメリットを補って余りある。大ヒットはその証拠だ。しかし、ハイブリッドのプリウスとアクアの販売台数を足せばノートの台数を上回る。それに今ではカローラにもC−HRにもハイブリッドがある。厳しい見方をすれば、ノートの販売1位は、トヨタがプリウスだけの販売台数を追い求めるのをやめただけとも言える。 

本来ならマーチにもノートにもジュークにも、そしてなくしてしまったティーダにもe−POWERを採用し、トヨタとの販売全面戦争を繰り広げていくべきだ。ポストゴーン時代の日産には、そういう戦いを期待したい。

取材・文/塩見サトシ 写真協力/日産自動車

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