トヨタ副社長に聞く"スープラ復活後"のスポーツカー戦略「2000GTは復活させないんスか?」

トヨタ副社長に聞く"スープラ復活後"のスポーツカー戦略「2000GTは復活させないんスか?」

1967年に発売された「トヨタ2000GT」 。トヨタ×ヤマハのコラボ作で、今も根強い人気を誇る伝説の名車。はたして復活はあるのか?

5月17日、トヨタの新型「スープラ」発売イベントが開催された。そこで自動車ジャーナリストの小沢コージがトヨタの友山茂樹副社長を直撃。次のコラボやウワサの"1億円超スーパーカー"についてもガツンと聞いてきた!

■マツダとのコラボはあるのか!?

──メチャクチャ面白い発表会でした! だって友山さん、いきなり会場で「スープラ、カッコ悪いと思う人?」って聞いたじゃないですか。スゴい丁半博打(ばくち)に出たなと。

友山 いや、発表前から皆さまがさんざんスープラの悪口を言っていたので、誰か手を挙げると思っていたのに......挙げない。ズルいなぁと(笑)。

──えっと、どういう戦略ですか。実はカッコいいと思ってないとか?

友山 デザインは街でパッと見たときの印象もあるし、長く見たときの印象もあるし、サーキットで見たときの印象もあるし、カスタマイズした際の印象もある。僕は80スープラを所有していて、ハッキリ言ってノーマルはメチャクチャカッコ悪い。

──アメ車ですよね。

友山 そうそう。でもね、長く持ってイジってくるとものすごいカッコよくなってくる。今回もそうなると思います。

──今のままだとカッコ悪いってことですか?

友山 いやいや、80スープラがノーマルで出たときに比べるとメチャクチャカッコいい。スポーツカーデザインとしてはちょっと足りないくらいのほうがいい。素地としてスゴくいいし、僕もぜひ買ってイジりたいクルマです。

──今回の新型に、いわゆるスープラらしさはあります?

友山 そこはチーフエンジニアの多田に聞いてもらいたいけど、やはり直列6気筒エンジン、つまりストレート6でしょうね。それからトヨタの走りがまたひとつ進化したカタチになっています。素性がいいというか、ハンドリングであり、ボディの回頭性も非常にいい。

──発表会でもおっしゃっていましたが、なぜ今、スポーツカーをという声があります。数は出ないし、正直、ビジネス的に難しいですよね。そんな状況下でスポーツカーを売り続けるお覚悟は?

友山 今回スープラを造るプロセスをBMWと一緒にやったのでスゴく勉強になりました。基本的にはウチが企画とデザインをやり、BMWが設計をやったと一般には回答しているんですが、そんなに単純な話ではないんです。

最も驚いたのは実際に物づくりをする前にどういうクルマにするとか、企画の部分をBMWは徹底的に詰める。方針が決まったら次はコンピューターシミュレーションで徹底的に走りをつくる。

ウチってあまり言っちゃいけないんだけど、けっこうなんとなく企画が進行し、どちらかというと、マーケティング主導なんです。だけどBMWは違った。

──ビジョンを煮詰めると。

友山 もちろん売るためのクルマなんですが、どういうクルマを売りたいんだと。そこを徹底的にやり合ったので、50対50の前後重量配分とか、スゴく短いホイールベースとか、2シーターとか、そういうパッケージになった。

──新型と先代のスープラを比較すると?

友山 車体剛性はひとつ前の80スープラより2.5倍いいし、その上にあのカッコが載っているから本当にムダがない。

──結果的にBMWとのコラボはアリでしたか?

友山 ええ。副社長時代の豊田章男が、テストドライバーの成瀬弘(ひろむ)とドイツのニュルブルクリンクに行った際、「トヨタがここで勝負できるクルマは、中古のスープラしかない」と言われた。そのとき、自分が社長になったら必ずスープラを復活させると成瀬さんに約束したんです。

その後、豊田は2009年に社長になりましたが、品質問題とか東日本大震災とかいろいろあったんで、結局13年ですよ、スープラの開発が始まったのは。それから6年、トヨタだけでやったら今のようなスープラはできていないと思う。

──トヨタが自力でスープラを造れなかったワケは?

友山 まずエンジンはV6しかない。プラットフォームも当時のトヨタはスポーツカーを持っていなかったので、パッケージを新型スープラのように徹底的に煮詰めることができない。トヨタだけならもっとマーケティング主導の、ひと目見てカッコいいと思うクルマになったかと。

──新型スープラを出せたのは章男社長の存在が大きい?

友山 新型スープラは社長のトップダウンがなければとてもじゃない、開発に入れなかったし、最後までやり遂げるのも難しかったと思います。

──なるほど。次の開発はどう進めますか?

友山 今、WRC(世界ラリー選手権)もWEC(世界耐久選手権)もそうですが、レーシングカーはセンサーの塊で、コネクティッド技術で情報がリアルタイムに上がってきます。

ドライバーのアクセル、ブレーキ、ステアリング操作情報と画像・センサー情報を組み合わせて解析し、その場で改善していく。今、GRスーパースポーツの開発にはそういうシミュレーション技術が生きていて、車両開発のプロセスとして機能し始めている。

──BMWで学んだシミュレーション技術もありますね。

友山 欧州メーカーはそういうシミュレーションをキチッとやります。同時に実車テストも徹底的にやって、リアルとバーチャルの結果をさらに組み合わせてシミュレーションをどんどん進化させる。

──新型スープラはモータースポーツ直系のスポーツカーブランドGRから出た初のグローバルモデルです。ズバリ、次の商品が出てくるのはいつ頃ですか。というか、まずGRの成果ってどうです?

友山 GRカンパニーが始まって正味2年、成果は非常に大きいです。やっぱりレース部門とかマーケティング部門とか優秀な人材がモリゾウ(豊田章男社長)の下でひとつの部隊となり、トヨタ技術部にはないことができてきた。

──具体的には?

友山 例えばWRC。年間14戦ありますが、1戦やって負けてリタイアしたとします。するとすぐに全データを集めて何が悪かったのか探って修正する。すると1ヵ月たたずに次のクルマができる。つまり、トヨタでは2年かけてやる開発をGRカンパニーだと1ヵ月でやれるように。

──異様な開発スピードだと。

友山 つまり電気のエンジニア、機械のエンジニア、テストドライバー、メカニックなどといった担当別に分かれてなくて、少人数のグループがクルマを走らせながらデータも取りつつ、開発すると。

──大道芸のジャグリングみたいな感じだ。

友山 それが今、トヨタのクルマ造りにインパクトを与えているんです。

──で、次ですよ、次。スープラの次はどんなスポーツカーが出るのかみんな気になってます。トヨタ2000GTは復活させないんスか?

友山(ほほえみながら)広報答えてくれる? ......というのは冗談で、やはりGRはレースやラリーに直結するクルマを造ります。

──1億円突破の"公道を走るル・マン"カー「GRスーパースポーツ」の発売は?

友山 貯金しながら楽しみに待っていてください。

──スバル、BMWに続いて、提携するマツダと一緒にスポーツカーを造る計画は?

友山 面白いですけどねぇ。マツダさんがいやがるんじゃないかなぁ。

──トヨタGRカンパニーはポルシェ、フェラーリになれますか? 本気の独立ビジョンがぜひ聞きたいです。

友山 それはもちろんあります。すでにGRはバーチャルカンパニーとして採算を見ています。例えば最も手軽なGRスポーツは、カスタマイズカーなのでヴィッツのGRスポーツ。

収益は本来ならコンパクトカーカンパニーの利益になりますが、利益の等価金額は見ています。継続的にモータースポーツをやるためにキチッと収益を上げることはやっていますよ。

──スポーツカーが全然売れない。レースで勝てない。だからってGRはやめないってことですよね?

友山 そのとおりです。

■開発責任者激白。「Z4とは違います!」

──続いては新型スープラのチーフエンジニアの多田哲哉さんにお聞きします。スープラがついに日本で復活しました。

多田 赤ちゃんが生まれたような気分ですよ。最初に私が担当したトヨタ86がお兄ちゃん。やっと弟が生まれたみたいな気分ですね。

──86とスープラの間にきょうだいはいなかった?

多田 トヨタのスポーツカープロジェクトってウワサがけっこう流れますが、全部ホントに開発はしているんですよ。ただ、発売までに至らないという。実は86のオープンカーも発売直前まで......。

──そこももっと聞きたいけど、新型スープラの出来や味わいについてのお話を!

多田 最初にイメージしたよりよくできました。トヨタの味わいもちゃんと出たなと。

──トヨタの味? BMWの味じゃなくて?

多田 そこなんです、問題は。小沢さんにも誤解されている。

──でもエンジン、ギアボックス、サスペンション、フロアはZ4と同じですよね?

多田 2台並べてよく見てくださいよ。外装と内装パーツを数で比べるとスープラとZ4では9割違いますから!

──要するに下回り以外の上屋部分は全然違うと。

多田 そうです。そもそも最初の試作車ができたのが14年末で、その後はBMWとはまったく別個に開発していますから。

──5年間も別に開発していたと。そりゃスゴい。

多田 例えばね、足回りのチューニングだけトヨタのテストドライバーがやったんじゃそうはならないです。全部やったから味が違うんですよ。

エンジン特性もトランスミッション特性もボディのねじれ方とかも、そもそもトヨタのマスタードライバーの成瀬さんの直弟子の外国人テストドライバーが味つけをした。必要なテストがあったら延々とBMWのテストコースに通い詰めてチューニングしました。そりゃ味も変わります。

──スープラとZ4は別物?

多田 そもそもボディ剛性にしたってクーペとオープンですから全然違いますよ!

──失礼しました。ところで、次のスポーツカーも多田さんが造るんですよね?

多田 トヨタはチームでノウハウ伝承みたいなことをやっているので私でなくとも問題ありません。

取材・文・撮影/小沢コージ 撮影/本田雄士 写真協力/トヨタ自動車

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