マツダの「スカイアクティブX」は究極のガソリンエンジンか? マツダ3試乗で徹底検証してみた

マツダの「スカイアクティブX」は究極のガソリンエンジンか? マツダ3試乗で徹底検証してみた

11月18日に箱根・十国峠で開催されたマツダの試乗会に突撃。スカイアクティブXを搭載したマツダ3 ファストバックのAT、そしてMTを乗り倒した

マツダが誇る次世代エンジン「スカイアクティブX」を搭載したモデルがついに発売された。ということで、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員でジャーナリストの塩見智(しおみ・さとし)が、その実力に迫ってみた!

■ガソリンとディーゼルのイイトコ取り!?

電気電気とやかましい自動車業界だが、内燃機関も話題がないわけではない。マツダが理想の内燃機関とうたい、開発を続けてきたスカイアクティブXエンジンがついに実用化を果たしたのだ。

ガソリンエンジンとディーゼルエンジンのイイトコ取りといわれるこのエンジンが載ったマツダ3を市販前に公道でテストすることができた。

そもそもマツダ3とはいったいどんなクルマか。マツダの後に数字の3がつくだけ。3が車名? マツダは「マツダ3」が車名だと説明する。これまで日本でアクセラと呼んできたモデルを、今回のモデルチェンジを機に海外での車名に合わせてマツダ3へと変更したのだ。

デビューは昨年5月。極太Cピラーやボディサイドをえぐったスタイリングが話題を呼んだ。ハッチバックとセダンがあり、エンジンは当初1.5L直4と2L直4のガソリン、1.8L直4ディーゼルターボの3種類で発売された。

ボンネットが低く、獲物に襲いかかる直前の野生動物のようなスタイリングは問答無用にカッコいい。元より評判の高いシャシー性能も備わるグッドカーなのだが、発売前から「本命は後で追加されるスカイアクティブXエンジン搭載モデル」という触れ込みだったため、まだ神髄には触れられていない気がしてモヤモヤしていた。

しかも、なかなか追加されないために「マツダが求める性能に達していないのではないか」と推測するメディアもあったが、無事に12月5日に発売されたわけである。

スカイアクティブXが用いる火花点火制御圧縮着火技術とは何か? 通常、ガソリンエンジンはガソリンと空気の混合気を燃焼室へ送り、圧縮したところに火花を飛ばして燃焼させる。これに対しディーゼルエンジンは燃焼室へ空気だけを送ってひたすら圧縮。圧縮されて加熱した状態の空気に軽油を噴射して自着火させ燃焼させる。

ガソリンは静かで振動が少ない代わりに効率が低く、ディーゼルはうるさく振動が多い代わりに効率が高いなど、相反するメリットとデメリットを持つ。

長年、ガソリンをディーゼルのように自着火できればイイトコ取りできるのでは、と研究されてきたが、ガソリンを自着火できれば理論的には素晴らしい効率を得られるものの、現実的には圧縮途中で異常燃焼が起き、うまく性能を発揮できないといわれてきた。

そこでマツダは自着火にこだわるのではなく、スパークプラグを使って燃焼室に火花点火による小さな燃焼(爆発)を発生させ、その圧力によって燃焼室の他のゾーンで圧縮着火(自着火)を起こすことに成功したのだ。

■スカイアクティブXはハイオクを推奨

試乗スタート。走り始める前にエンジンを吹かしてみる。確かに回転フィーリングはガソリンエンジンのようにスムーズで、ディーゼルエンジンのような振動はない。ガソリンともディーゼルとも異なる、低音が強調されたエンジン音がした。

Dレンジに入れて発進。駐車場を出て加速する。高回転までストレスなく回る。スルスルと加速し、いつの間にか十分な速度に達している感じだ。悪くない。悪くないが、"理想の内燃機関"とまでいわれると期待したくなるのが人情というもの。遅くはないのだが、加速にさほどパンチがなく、拍子抜けした。

スカイアクティブXはマイルドハイブリッド(通常のオルタネーターの代わりにスタータージェネレーターが備わり、加速をアシストしたり減速時に回生したりする)が備わるため、アイドリングストップからの再始動がウルトラスムーズだ。でもそれはマイルドハイブリッドのよさ。

エンジン自体のよさはどこかを探りながら試乗を続ける。従来のガソリンエンジンよりは全域でレスポンシブだ。打てば(踏めば)響く(即座に加速する)。体感的なパワーは最高出力180PS、最大トルク224Nmのスペックなりのもの。高回転まで回せば最高出力156PSの従来型ガソリンよりややパワーがある。

また、従来型ガソリンに対してほぼ全域で1割増しのトルクを得ているという。とはいえ最大トルク270Nmのディーゼルほどの迫力ある加速を得られないのも事実。ダメなところはない。けれども「ここがずぬけて素晴らしい」とひと言で説明するのも難しい。

試乗後、執行役員の中井英二パワートレイン開発本部長に素直にそのことを伝えたところ、「確かに高回転まで伸びやかな加速が続くことの気持ちよさや、ほぼ全域でのレスポンスのよさ。

それに10〜20%の燃費のよさなど、どれもカタログを彩るような派手な高性能ではないため、お客さまに丁寧に説明をする必要はあると思います」という答えが返ってきた。

実際そうなんだよなぁ。全方位的に少しずつよい。今回は燃費を計測するほどの距離を走ることはできなかったが、実燃費が20%向上しているのだとしたら、これは少しではなく見事だ。ただこれもディーゼルでも得られるし、他社はハイブリッドで獲得している性能だ。

どこも実用化に至っていない技術を日本のマツダが成し遂げたことに対し、本来ならもっと大喜びしたいのだが、引っかかるのは価格だ。売れ筋のLパッケージで比較すると、スカイアクティブG(2L)が269万8055円、スカイアクティブDが297万3055円なのに対し、スカイアクティブXは338万463円。ガソリンに対し約68万円、ディーゼルに対し約41万円も高い。

さらにスカイアクティブXはハイオクガソリン推奨だ。推奨とはレギュラーガソリンを入れても問題ないが、その分燃費も落ちるので節約にならず、であればより高性能を得られるハイオクを薦めるということ。

となると燃料代はレギュラーや軽油に対して割高。20%の好燃費を得られたとしても、価格差を燃料代の差で取り戻すのは至難の業だ。現時点での正直な感想を述べるなら、音と振動面でやや不利ながら約22万円安く、よりトルクにあふれるディーゼルのほうが魅力的だ。

中井本部長はスカイアクティブXには効率の面で伸びしろがあるという。そして価格は量産が進めば下がるはず。従来型ガソリン並みの価格とは言わないが、ディーゼルと迷うくらいの価格になればがぜん魅力を増す。Xというだけあって将来性は未知数だ。現時点では未完の大器かなと。

断っておかなければならないのは、マツダ3は非常によくできたクルマだということ。鳴り物入りで追加したスカイアクティブXに対してこそ奥歯に物が挟まったような言い方しかできなかったが、ハッチバックであろうとセダンであろうと世界中のCセグメント車の中でもトップクラスの実力、魅力をもつ。

2Lガソリンは没個性的であり、ガソリンを選ぶなら1.5Lを選んで安くあのスタイリングを手に入れるべきだと思うが、ディーゼルエンジンはかなり魅力的だ。欲を言えば先代が搭載していたよりパワフルな2.2L版が欲しいが、1.8Lも悪くない。

ただ、現状のスカイアクティブXも、MTとの組み合わせならレスポンシブさが際立ち走らせて楽しい。エンジン回転を完全にドライバーのコントロール下に収めたいといった"通好み"の走りが可能。発明級の新技術が万人を喜ばせる日も近い......と思いたい。

●塩見 智(しおみ・さとし)
1972年生まれ、岡山県出身。関西学院大学文学部卒業。1995年に山陽新聞社入社。『ベストカー』編集部を経て、04年に二玄社『NAVI』編集部に入社。09年『NAVI』編集長に就任。11年に独立。執筆媒体多数。ラジオやイベントの司会なども手がける。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。公式Twitter【@Satoshi_Bagnole】


取材・文/塩見 智 撮影/本田雄士

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