中国でのビジネスの秘訣を“爆勝ち”する日本企業から学ぶ「中国人は日本人がごまかさないことをよくわかってる」

中国でのビジネスの秘訣を“爆勝ち”する日本企業から学ぶ「中国人は日本人がごまかさないことをよくわかってる」

「中国ビジネスで成功するポイントのひとつは、優秀な中国人を、時に日本人の上司の給料よりも高い給料で雇えるかどうかなんです」と語る谷崎光氏

巷(ちまた)では「中国限界説」が、まことしやかにささやかれている。いわく、バブル崩壊後の日本と同じ道をたどるハズだ、と。しかし経済は、いくつかのパターンに分類できるほど単純ではない。

そんな見方に、日本人の「願望」が透けて見えると言うのは、中国と30年以上関わり、北京で16年間、執筆活動を続ける作家の谷崎光(ひかり)氏だ。『本当は中国で勝っている日本企業』で彼女はこう書く。

「日本人の、中国に対する見方―つまり一部の富裕層はいるだろうが、まだ日本より下のハズだ、貧しい国だ、(そうあってほしい)という思い込みが市場を逃す」

歴史をふり返れば、学者の分析よりも、作家の感覚が正しかった例はいくらでもある。「あと10年は、日本は中国で稼げる」と断言する谷崎氏が、中国で目下「爆売れ」中の日本製品の舞台裏に迫った。

* * *

―この本には、キユーピーマヨネーズや無印良品、三菱電機など、中国の経済成長の波にうまく乗った日本企業の話が書かれています。もう中国の時代ではない、といった見方がいかに一面的な見方かわかりますね。

谷崎 中国は確かに山のように問題を抱えています。ただ、政府も一応、社会をコントロールはできている。だから、事実は崩壊に向かっているどころか、今もどんどん成長しています。これまで海外に出ていっていた有能な中国人も国内に残るようになりました。

日本企業が中国に進出して、ボロ負けしているという報道も見聞きしましたが、それは中国経済の問題ではなく、ほかにも問題があったんです。日本企業の中には、数千億円から1兆円の売り上げを上げて、爆勝ちしているところがたくさんある。私の感覚では、中国にはまだ日本の2.5倍の市場がある。少なくともあと10年、技術が追いつかれるまでは、日本企業は中国で儲けることができると思います。そのチャンスを逃す手はないと思うんです。

―これまで数多くの中国関係の本をお書きになられていますが、やはり、日本における中国経済の報道のされ方には違和感がありますか。

谷崎 ある編集者の方に、「中国がダメだって聞くと気持ちがスッとするので、そういう本を書いてくれませんか」と言われたり……。読者にとっては、それが快感なんでしょうね。

―今、中国に進出すべき日本企業は、どんな業種の企業だと思われますか。

谷崎 昔は、私も日本に帰国するたびに化粧品やシャンプーや、文房具やストッキングなどの日用品を爆買いしていました。今はネットで日本からなんでも買えるようになりましたが、女性を中心に日本から中国向けの商品の売り上げはまだまだ伸びています。

加えて今後は下請け部品メーカーなども伸びるでしょうね。トランスミッションとか特殊な素材とか。トヨタ自動車の下請けであるアイシン精機などは中国でも好調です。日本では下請けというと、商品の価格も大手の言いなりですが、中国では、マネできない商品には会社の大小にかかわらず、適正な値をつけてくれる。

海外進出を図ると技術が盗まれるなどのリスクはありますが、中小企業がもっと積極的に中国に出ていき、そして勝つことができれば、日本の産業構造そのものが変わるかもしれない。

―中国に進出して失敗した日本企業は、具体的には何が原因だったのでしょうか。

谷崎 現地で政府から開発地を紹介されたはいいが、地盤が悪くて工場を建てられず、資金が消えてしまったとか、昔はそういう詐欺まがいの契約が結構多かったんです。あと、商品を売ってもお金を支払ってくれないとか。今もそういうケースが完全になくなったわけではないですが、かなり減ったことは確かです。

―中国人と交渉するのは、精神的にしんどくないですか?

谷崎 私は昔、ダイエーと中国の合弁会社で衣服の輸入に携わっていました。その頃は、中国人とケンカばかりしていたんです。「もっとちゃんと作ってくれ」とか。でも、会社を辞めた時、仕事で知り合った中国人が、5、6人ぐらいだったかな、すぐに転職先を紹介してくれました。

そこには行かなかったけど、深く付き合ったら、そういうよさも見えてくると思います。ただ、私が北京でカフェを開くとしたら、レジを任せられる中国人の知り合いはふたりぐらいかな(笑)。ほとんどの人がお金をごまかすと思うので。

―この本の中で、中国における無印良品の成功例が紹介されていますが、中国においてユニクロと無印良品は、その戦略も違ったのでしょうか。

谷崎 お店を出している場所は同じだし、日本よりも割高なのも同じ。ただ、無印良品のほうが日本製であることを売りにしていました。化粧品なども出しているせいでしょうが、中国人は「日本の商品は安全だ」という意識が強いので安心して買うことができる。その点、ユニクロは日本の服だという認識は低いと思います。

―本の中に「中国人は自国人を信用しない」と書かれていましたね。

谷崎 例えば、ハイテクな工業製品などと違って、化粧品は中に何を入れたってわからないじゃないですか。半分は良心を売っているようなもの。中国人は、日本人はごまかさないということをよくわかってるんです。

薬なんかも日本製は信頼が高い。中国の医療制度は相当ブラックですから。日本製のカラーコンタクトレンズはよく、お土産にされています。ユニ・チャームの生理用品やオカモトのコンドームなども中国では人気があります。

―逆に、日本にはない、中国人社会の魅力はどのような点だと思われますか。

谷崎 個人主義の国なので、個人の能力をすごく認めてくれる。だから、力を持っている人が力を発揮しやすいのだと思います。逆に日本は、持っている力を出し切れていない人が多い。日本では人の2倍、仕事をしても、給料は2倍にはなりませんよね。それだと挑戦なんかせずに、失敗するリスクを恐れるのは当然です。

こちらに進出して成功するには、優秀な中国人を、時に日本人の上司の給料よりも高い給料で雇う必要があります。それに抵抗感を覚えるようでは、こちらではやっていけない。そういうやり方に順応できていたら、こんなに日本企業は撤退していなかったと思いますね。

(インタビュー・文/中村 計)

●谷崎光(たにざき・ひかり)







作家。ダイエーと中国の合弁商社に総合職として5年間勤務。退職後、商社時代の中国でのビジネスをコミカルに描いた『中国てなもんや商社』(文春文庫)を発表し大ヒット。松竹で映画化もされる。2001年からは北京大学経済学部に留学。以来、北京在住で執筆・創作活動を行ない、現在17年目となる。近刊に『国が崩壊しても平気な中国人・会社がヤバいだけで真っ青な日本人』(PHP研究所)など。

■『本当は中国で勝っている日本企業』







(集英社 1400円+税)







複雑な政治状況に左右されがちな日中関係。中国から撤退する企業も多い一方で、商品が「爆売れ」して勝っている日本企業も実は数多く存在している。無印良品、キユーピー、三菱電機、富士電機、伊勢半などの企業はなぜ、中国で成功できたのか? 大ヒット商品誕生の舞台裏にはどんなドラマがあったのか? 中国ビジネスで泣いて、笑って、最後に勝った日本人ビジネスマンたちの熱き挑戦を描いたドキュメント







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