安倍首相が否定する「モーレツ社員」って何? どうして撲滅できないの?

安倍首相が否定する「モーレツ社員」って何? どうして撲滅できないの?

「モーレツ社員」って何? どうして撲滅できないの?(アフロ)

 「モーレツ社員の考え方が否定される日本にしていきたい」という安倍首相の発言が話題となっています。政府は長時間労働を是正するため、残業時間に対する規制を検討しており、首相の発言もこの流れを受けたものとなります。働き方改革にはプラスになると評価する声がある一方、抽象的な話に終始してしまい、労働環境の改善につながらないのではないかとの指摘もあります。そもそもモーレツ社員というのはどのようなことを指しているのでしょうか。

そもそも「モーレツ社員」とは?

 モーレツ社員とは1970年代によく使われた流行語で、私生活を顧みず、会社のためにすべてを捧げるサラリーマンを揶揄したものです。バブル崩壊以後、かつてのようなハードワークはなくなったといわれていますが、それでも日本人の働き方はまだまだモーレツといってよいかもしれません。

 厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、日本人の1カ月あたりの総労働時間は過去10年で6.1時間ほど減少しています。しかし、所定外労働時間、つまり残業はむしろ増加傾向です。日本では労働基準法などで法定労働時間というものが決められており(1日8時間、週40時間)、原則としてこの基準を超える仕事をさせてはいけないことになっています。しかし労働者と企業が協定を結んだ場合に限り、法定労働時間を超えて仕事をさせることが可能です(いわゆる36協定)。

終身雇用がよいか残業がよいか?

 法定労働時間を骨抜きにしてしまうような制度がなぜ存在しているのかというと、それは正社員の終身雇用を守るためです。法定労働時間を厳密に適用してしまうと、企業は好景気の時にはたくさん人を雇い、景気が悪い時には解雇するという形で労働力を調整することになります。諸外国はほとんどこのようなやり方を採用していますから、日本のような残業はありませんが、景気が悪い時には解雇されるリスクが出てきます。

 一方日本では、景気がよい時は、全員が残業して業務をこなし、景気が悪い時に、正社員のクビを切らなくても済むようにしています。日本企業の多くで慢性的に残業が行われているのはこのためです。政府も事実上こうした経営手法を後押ししており、これが法律という形で具現化したのが36協定ということになります。

 日本ではすでにサービス業が主な産業となっていますが、サービス業の売上高は過去10年でほとんど変わっていません。しかしサービス業に従事する従業員数はむしろ増えており、企業の生産効率は年々低下しています。日本企業の生産性は極めて低く、これが賃上げをできない元凶ともいわれていますが、終身雇用を最優先する以上はやむを得ない面があります。

 日本人はモーレツなのではなく、正社員の終身雇用を守るために残業をガマンしているというのが実態ですから、一部のブラック企業対策を除けば、残業時間を規制するという政府の方向性は少しピントがズレているかもしれません。


(The Capital Tribune Japan)