円高でも日経平均が底堅い動き 日銀ETF買い入れ増額のほか2つの要因とは?

円高でも日経平均が底堅い動き 日銀ETF買い入れ増額のほか2つの要因とは?

9月5日、3カ月ぶりに日経平均株価は1万7000円台に。(写真はイメージ、提供:Rodrigo Reyes Marin/アフロ )

 USD/JPYが100近傍で停滞しているわりには日経平均株価が底堅い動きをみせており、最近はそれが話題となっています。

 2010年以降の日経平均とUSD/JPYの関係に基づくと、USD/JPYが100の時、日経平均は1万4000円程度まで下落することが整合的なのですが、足元の水準はそれを3000円程度も上回っています。日本株はなぜ円高に持ち堪えられるようになったのでしょうか。考えられうる3つの要因について、第一生命経済研究所のエコノミスト・藤代宏一さんが解説します。

要因1 日銀のETF買い入れ増大が日本株を下支え

 まず1つめの要因として考えられるのが、日銀によるETFの買い入れです。日銀は7月29日の金融政策決定会合でETFの買い入れペースを従来の3.3兆円から6兆円に増額しました(同時に日銀は年間0.3兆円のペースで日本株を売却しているためネット購入額は5.7兆円)。

 それが日本株を下支えしているとみられます。この6兆円という数値は、株式時価総額である500兆円の1%強に相当し、2016年入り後の外国人投資家の売り越し額である6.8兆円の大半を吸収する規模です。

 日銀は(基本的に株価が下落している日に)1日あたり700億円強の買い入れを実施していますが、これは最近の東証一部の売買代金が2兆円弱であることから判断すれば相当な規模と言えるでしょう。単純計算すれば、一日の売買のうち4%弱が日銀ということになりますから「官製相場」とやゆする声が大きくなるのもうなずけます。

要因2 日本企業が円高に慣れてきた

 2点目としては、日本企業が円高に対する耐性を増したことが評価されている可能性が指摘できます。2008年から12年にかけて円高を経験した日本企業は、為替変動が業績に与える影響を抑える目的もあって、国内生産・輸出で稼ぐビジネスモデルに区切りを付け、海外現地生産への切り替えを進めてきました。実際、製造業の海外現地生産比率はすう勢的な上昇基調にあります。

 また、国際収支統計で資金フローを確認してみると、海外子会社の稼ぎに相当する直接投資収益が増加基調にあり、連結決算でみた日本企業(≒親会社)の利益に貢献していることが見て取れます。直接投資収益は2000年代半ばと比較して約3倍に膨れ上がっています。これは「産業の空洞化」という負の効果をもたらすと同時に、為替変動に強い日本経済を作り上げるという2つの構造変化を生じさせました。

 こうしたなか注目されるのは輸出の動向です。輸出を実質輸出という(数量に近い概念で付加価値を反映する)ベースでみた場合、最近の円高にもかかわらず、足元ではむしろ増加基調にあることが目を引きます。

 かつて、日本経済は円高になると輸出競争力低下に苦しみましたが、それを教訓に日本企業は成長の源泉を価格競争力ではなく製品の差別化、すなわち高付加価値化に求めるようになりました。こうした過去数年のビジネスモデル変更を経て、最近は円高になっても受注が減少しないような製品が輸出の主力となりました。それが奏功して輸出が減少しにくくなっている可能性が指摘できます。この「減らない輸出」が株式市場で評価されているのでしょう。

 なお、2013年〜15年にかけての円安局面で輸出がさほど増えなかったことは、これと裏返しの関係といえます。(※ただし、円高が日本企業にとって打撃であることに変わりはありません。数量ベースの輸出が減らなくても金額ベースの輸出は減りますし、海外子会社の株式等、外貨建て資産の価格は円ベースで減少します。ここでの議論は過去との比較において円高に強くなっているとの指摘です)

要因3 日本株が高利回り資産になっている

 そして3点目は、日本株が有数の高利回り資産になったことです。日本株の配当利回り(TOPIX、先行き12カ月予想)はこの1年程度2.5%±0.3%で安定していますが、ここで日本の長期金利が一時20年ゾーンまでマイナスとなったことや、米国債の10年金利が僅か1.5%程度まで低下していることを思い出してください。

 ほかの先進国に目を向けるとユーロ圏の短期金利が▲0.4%となっているほかスイス、デンマーク、スウェーデンが軒並みマイナス金利、英国も7年ぶりの利下げを経てゼロ金利に近づいています。こうした世界的低金利の下で、投資家が2〜3%の利息・配当収入を獲得したいと考えた場合、10年国債であればタイ(S&Pの格付けBBB+)、ハンガリー(BB+)、ポーランド(BBB+)、ポルトガル(BB+)といった比較的格付けが低い国々まで触手を伸ばす必要があります。欧州債務問題の際に7%を超えていたイタリア、スペインの10年金利が今や1%程度まで低下したことが象徴するよう、投資家は“利回り探し”に苦労しています。こうして考えると、やはり日本株の配当利回りは非常に魅力的であると考えられ、投資対象としてリスト上の位にきているのでしょう。減配リスクの低い銘柄を中心に“イールド・ハンティング”の買いが入っている可能性が指摘できます。

 以上3点が最近の日本株の底堅さを説明していると考えられます。

(第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)

※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。