SNSなどでも株価が変動 「適時開示」以外にも注意したい情報源とは?

SNSなどでも株価が変動 「適時開示」以外にも注意したい情報源とは?

適時開示以外の情報でも株価が大きく変動することがある(写真はイメージ、提供:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 「株価は適時開示で動く」と考えて頂いてまず問題ないのですが、実はごくたまに適時開示以外の情報で株価が動く場合があります。

 今回は株価に影響を与える適時開示以外の情報について考えてみたいと思います。(解説:事業創造大学院大学准教授 鈴木広樹)

「飛ばし」に注意 適時開示に先行したマスコミ報道

 上場会社の重要情報が最初に世の中に示されるのが適時開示であり、マスコミ報道の多くも適時開示をもとにしたものです。しかし、適時開示が行われる前にその情報が漏れて、マスコミによって報道されてしまう場合があります。

 9月15日の日本経済新聞の朝刊に、三菱商事がローソンを子会社化するという記事が掲載されたのですが、それに関する適時開示は未だ行われていませんでした。適時開示に先行したマスコミ報道があった場合、企業は通常、まず「本日の一部報道に関して」といったタイトルの適時開示を行うのですが(「報道された事実は現在検討中であり、決定次第お知らせいたします」といった内容)、三菱商事とローソンも、同日、同じ午前9時5分に「本日の一部報道に関して」を開示しました。

 なお、朝刊の記事に対して、午前9時5分に開示を行うというのは、ものすごく迅速な対応ですが、以前、日本経済新聞のある記者の方に聞いたところ、そうした報道を行う場合、直前に企業に対して「載せますよ」と伝えるらしいです。

 そして、翌16日の11時に、三菱商事は「株式会社ローソン株式(証券コード2651)に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ」を、ローソンは「三菱商事株式会社による当社株式に対する公開買付けの開始予定に関する意見表明及び業務提携契約の変更のお知らせ」を正式に開示しました。

三菱商事の株価(http://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/detail/?code=8058.T)

 三菱商事の株価に特に大きな変動は見られなかったのですが、ローソンの株価は大きく変動しました。14日の同社株式の終値が7410円だったのに対して、15日は一時7980円まで値を上げました(安値も7740円。16日は高値が8090円、安値が7800円)。15日のローソンの株価の変動は、日本経済新聞の記事に反応したものだと思われます。

 ただし、この三菱商事とローソンに関する報道の内容は正しかったようですが、適時開示に先行したマスコミ報道がすべて正しいとは限りません。いわゆる「飛ばし記事」の事例は結構ありますので、注意が必要です。

ローソンの株価(http://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/detail/?code=2651.T) 

うわさ話だけとは限らない「SNSへの書き込み」

8月14日、「ピーシーデポコーポレーションから高額な解約料を請求された」という書き込みがSNSにあり、それに反応するように、同社の株価が下落しました。12日の同社株式の終値は1450円でしたが、下がり続け、9月14日には625円まで値を下げることとなりました。

 SNSが株価に大きな影響を及ぼした事例といえますが、SNSを通じて同社のブラックなイメージが拡散した結果、同社の株価が下落することになった、というわけではないと思われます。マイナスな情報がSNS上で流通している企業はほかにもありますが、そうした企業の株価が、ピーシーデポコーポレーションの株価と同様に変動しているわけではありません。個人投資家が多数派の新興市場ならばいざ知らず、ピーシーデポコーポレーションが上場している東証一部市場でイメージだけで株価が大きく変動するとは思われません。

 高額な解約料が問題とされた同社の「プレミアムサービス」という事業は、同社の業績向上の牽引役だったのですが、そのビジネスモデルに問題があるということに、今回の件で投資家が気付かされたのです。

 同社が8月17日に開示した「弊社プレミアムサービスご契約のお客様対応に関するお知らせ」の添付資料にも同事業の料金体系が記載されているのですが、短期間で解約すると、高額な解約料がかかってしまう(利用しない場合でも、すぐにはやめられない)サービスなのです。そうした事業の将来性に疑問符が付されたのでしょう。

 ピーシーデポコーポレーションの株価の変動にはそうした要因があり、SNS上のすべての情報に株価が反応するわけではないことに注意する必要があります。

ピーシーデポコーポレーションの株価(http://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/detail/?code=7618.T)

鵜呑みにせず、内容を精査すべき「空売り投資家のレポート」

 「会計不正の番人かオオカミ少年か−空売り投資グラウカス日本進出どう見るか」で取り上げた米国のグラウカス・リサーチ・グループ(以下「グラウカス」といいます)は7月27日、伊藤忠商事の会計処理に関するレポートを発表しました。

 これに対して、伊藤忠商事は7月27日に「当社の会計処理に関する一部報道について」と「当社の会計処理に関する一部報道について(その2)」を、8月1日に「当社の会計処理に関する一部報道について(その3)」を開示し、グラウカスに反論しました。

 26日の伊藤忠商事株式の終値は1262円だったのですが、グラウカスのレポートが発表された後、27日は一時1135.5円まで値を下げました。しかし、その後は回復し、9月5日には26日の終値を上回る1273.5円まで値を上げ、最終的にグラウカスではなく伊藤忠商事の見解が投資家に支持される形となりました。

伊藤忠商事の株価(http://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/detail/?code=8001.T)

 結局、今回のグラウカスのレポートは、「会計不正の発見」ではなく「異議申立て」だったようです。今後も、グラウカスやほかの空売り投資家が、同様のレポートを発表してくるかもしれません。しかし、彼らの「声の大きさ」に惑わされず、そのレポートの内容を冷静に見極める必要があるでしょう。

(事業創造大学院大学准教授 鈴木広樹)