ネットの経済ニュースはなぜわかりにくいの?初心者こそ新聞を読むべき理由

ネットの経済ニュースはなぜわかりにくいの?初心者こそ新聞を読むべき理由

ネットの経済ニュースが理解できないのはなぜ?(写真はイメージ、提供:アフロ)

 なぜリテラシーが高いエリート層に、経済ニュースをネットではなく「紙」で読む人が多いのでしょうか。新聞は見出しを読むだけで内容が理解でき、記事の大きさや取扱いによって、ニュースの重要性がわかるため、時間に追われるエリートの情報収集活動に最適だからと説明をしてきました。

 エリートに選ばれている情報源、紙の新聞は経済ニュース初心者にこそ、大いに活用してほしいと思います。今回は経済の初心者がネットニュースより「紙」を読んだ方がいい理由について、さらに深く考えてみましょう。(解説:報道イノベーション研究所 松林薫)

経済や経営の知識を学びながら、情報収集ができる“紙”の新聞

 経済ニュースを本当の意味で理解し、活用するには、まず「経済が動く仕組み」や「動きのパターン」を知っておく必要があります。初心者が記事を読んで「何が起きているかはわかったけど、本質を理解した気がしない」と感じるのは、多くの場合、そうした基礎知識がないことが原因です。単に「暇つぶし」や「一喜一憂するため」に読むならともかく、一段、高い次元からニュースを観察するには、まず経済の全体像を俯瞰できる目を持つ必要があるのです。

 実際、やみくもに記事を読んでも、理解が自然に深まっていくことはありません。経済用語や雑学的な知識は増えていくでしょうが、それらが頭の中で相互に繋がって、応用がきく形に変わるにはとんでもない時間が必要だからです。経済ニュースを「読みこなす」ためには、少し遠回りに見えても、経済の「仕組み」や「流れ」をまとめて勉強しておく方がいいのです。言い換えれば「体系的な知識」を獲得する必要があるわけです。

 そうした知識の体系としては「経済学」や「経営学」があります。大学などでこうした学問の基礎を学べば、ニュースを理解する上でも大きな助けになるでしょう。ただ、一般の人が独学で経済学を一から学ぶのは大変ですし、実際に記事を読む上で必要とされるのは経済学の体系の中のほんの一部です。記事を読むためだけに経済学を勉強するのはあまりにも非効率でしょう。そう感じる人にとって、次善の策として手軽なのが、新聞で経済の「仕組み」や「流れ」について学ぶ方法なのです。

“紙“の新聞記事がわかりやすいのは「記事と記事との連携」が貫かれているから

 ただ、経済ニュース自体はネットにも掲載されています。紙の新聞で読むのと、何が違うのでしょうか。

 先ほど経済を読み解くには「体系的な知識」が必要だと書きました。実は、ニュースを体系的に読もうとしたとき、紙の新聞の方が便利な点がたくさんあります。もちろん、これから新聞社の情報発信がネット中心になっていけば改善されていくと思いますが、現時点では「教科書」として使うなら、紙の方に軍配があがるのです。

 まず、経済分野に限らず、紙の新聞はニュースを「順を追って説明していく」という形になっています。例えば「日銀によるマイナス金利の導入」というニュースが発生した場合、第一報として決定の内容についての概要を報じます。同じ日の紙面では「解説」「用語解説」「専門家の見解」などが、1面から順に「総合面」「経済面」へと続いていきます。これら一つ一つの記事の内容は、事前に調整されて重複がない形にまとめられ、順番に読むことで効率的に理解できるように編集されています。

 これに対し、ヤフー・ニュースなどのポータルサイトでは複数の媒体から記事をピックアップして転載しています。新聞からの転載であっても、概要は時事通信の速報、解説は産経新聞、といったように「つまみぐい」になるケースが多いでしょう。読む順番も、読者の選択に任されています。

 もちろん、記事をピックアップする編集者はニュースの全体像がわかるように記事を選ぶはずです。しかし、説明の順序や、それぞれの記事に盛り込まれているファクト(事実)には整合性がなくなります。重複が生じたり、逆に重要なポイントが抜け落ちたりする可能性があるのです。もちろん、関連記事をネットで読みまくれば「抜け」は防げるかもしれませんが、決して効率的な読み方とは言えないでしょう。

 紙の新聞の場合、こうした「記事と記事との連携」が貫かれているのは、ある1日の紙面の中だけではありません。数日から数カ月にわたる報道の中でも、前の記事とのつながりが意識されているのです。

 ほとんどの人は意識したことがないと思いますが、新聞のニュース報道は「連載」になっています。新聞小説と同じように、読者が前の回を読んだことを前提に、次の記事が書かれているのです。ちなみに、担当記者も1〜3人程度にほぼ固定されています。新聞社は大きな組織ですが、特定のニュースについて記事を書いているのは意外に少人数で、しかもそのチームは「キャップ(キャプテンの略)」と呼ばれるチームリーダが仕切っています。こういう体制なので、第一報、続報、解説などが連続性を持って掲載されていくのです。

 これは裏返すと、中長期にわたって報じられるようなニュースの場合、途中の記事を読んでいないと、「流れ」が見えなくなる可能性があることを意味します。連載小説でも、1〜2回、読んでいなかっただけで展開がわからなくなることがあります。これと同じで、面倒でもニュースは同じ銘柄の新聞を朝刊、夕刊、朝刊……と続けて読んだ方がいいのです。

 途中を飛ばすと、知識の偏りも生じます。紙面は有限なので、ニュースがたくさんある日などは、どうしても1本あたりの制限字数はタイトになります。記者が「本当はこの事実は重要なので書きたいんだけどなあ」と思っても、書けないことは頻繁にあります。その場合は、「翌日以降の記事」に盛り込むことで、つじつまを合わせるのです。

 SNSに流れる記事の感想を見ていると「重要な論点が抜けている」といった批判をよく目にしますが、実は別の記事で書いているというケースはたくさんあります。言い換えれば、新聞記事はそうした「セット」として読まなければ、本当の価値はわからないのです。

 逆に言えば、「続き物の記事」を一部だけピックアップしたポータルサイトを利用していると、得られる知識はどうしても断片的になってしまいます。毎日読んでいれば問題ないのではないか、と思われる方もいるでしょうが、実は媒体によって同じニュースでも続報の内容や報じる順序はけっこう違うものです。少なくとも体系的にニュースを読もうと思えば、同じ銘柄の新聞を続けて読んでいった方がずっと効率的です。そして、「仕組み」や「流れ」を理解することが重要である経済ニュースの場合、この点はとくに大きな差になってくるのです。

【連載】ネットで経済ニュースを読むのはおやめなさい(報道イノベーション研究所・代表取締役・松林薫)