証券口座もマイナンバー提示義務付け 周知進まず戸惑いも

証券口座もマイナンバー提示義務付け 周知進まず戸惑いも

[イメージ写真]2016年1月以降に証券口座を開設した場合はマイナンバー提示が義務付けられている(アフロ)

 個人を識別するため、日本に住む人全員に割り振られた番号「マイナンバー(個人番号)」の通知が始まって10月で一年。自分の「個人番号カード(マイナンバーカード)」を申請、交付を受けた人も多いでしょう。しかし、実際マイナンバーを活用して何ができるのか、情報流出の不安はないのかなど疑問の声も根強くあります。

 その中で、株取引に必要な証券口座について、マイナンバー提示が義務付けられていることは、あまり知られていないかもしれません。

2019年以降も提出しない場合は口座停止の可能性

 証券口座をめぐっては、すでに2016年1月以降に新規口座を開いた人には申し込みの際、マイナンバーの提示を求められています。また昨年末までに口座開設の手続きをした人についても、2018年12月までに届け出なければいけません。証券各社はこれまでに口座を開いていた投資家に対して順次、マイナンバーの提示義務付けを案内し始めていますが、「“初めて知った”とか、“まだ交付を受けていないが、今すぐ提出しないといけないのか”などの問い合わせが少なからずある」(大手証券会社担当者)と戸惑いの声が出ているといいます。

 マイナンバーは、市町村などからその住民に指定される12桁の番号。昨年10月に通知が開始され、2016年1月以降、主に「徴税」「社会保障」「災害対策」を対象として使用されることになっています。企業などには13桁の法人番号が割り振られます。

 希望者は無料で、マイナンバーカードというICカードの交付を受けることができ、カードは身分証明書を求められたときに提示できるほか、住民票の写しや印鑑登録証明書を取得するときにも利用できます。一方で、証券口座の新規開設や生命保険への新規加入の際、また公営住宅への入居申し込みなどをする場合、マイナンバーの提出を求められます。

 証券口座の場合、2015年12月末までに口座開設の手続きをしていれば3年間の猶予期間を与えられているため、今すぐにマイナンバーの登録をする必要はありませんが、2018年12月までにマイナンバーを証券会社に提出することが義務付けられています。このため2019年以降もマイナンバーを提出しない場合、証券口座の取引が停止される可能性があるといいます。

 日本証券業協会では昨年12月にマイナンバー提供を求めるポスターなどを制作、今年8月になって内閣府などとともにパンフレットを公表するなどしていますが、「証券会社の投資家への周知は各社がそれぞれ行っている」といい、コスト面なども考慮して証券口座の残高情報を通知する際に同時にマイナンバー提出について告知するなどしているため、投資家の戸惑いの声が出る遠因になっているようです。

国民にとっての利便性を高める議論が必要

 大和総研金融調査部の是枝俊悟研究員は、「マイナンバーだけで個人情報のすべてを引き出せるシステムにはなっておらず、税務当局などがこの情報だけで何かができるわけではない」と指摘した上で、「仮に住所変更や結婚などで性が変わった場合、こうした情報の変更が遅れた場合でも、マイナンバーが提出されていれば税務当局にとって申告漏れなどを把握しやすくなる」などと利点を挙げました。

 一方で、「現状は投資家にとってマイナンバー導入によるメリットはなく、今後、マイナンバーを活用して個人投資家などの利便性を高める議論が必要だ。現在のところ、投資家は複数の証券会社に口座を持っている場合、損益通算するためには確定申告をする必要があるが、マイナンバーを使えば税務当局が各口座の情報を合算でき、投資家の手間は減らせるはず」と話しています。

 マイナンバーについては2018年から預金者に対して銀行への登録を求めることも始まります。こちらは今のところ任意で、義務ではありませんが、今後国会では2021年をめどに預金口座についてもマイナンバー提出の義務化を議論していくといわれています。

 マイナンバーで預金口座をひも付けできれば、財産を隠して生活保護を受給していないかなど不正をチェックしやすくなるほか、銀行などが破たんした場合、同名義人が複数の支店などに預金している額を合算する「名寄せ」などもスムーズに進むという面がありますが、国による国民の資産管理強化につながるという声も出ています。是枝研究員は「預金口座へのマイナンバー導入義務化は金融機関の事務負担も大きく、何より生活に身近な問題であり、無風で進んでいくことは考えにくい。金融所得課税の一体化への活用など、証券口座と同様に個人にどのような利便性があるのか具体的に示す議論が求められる」と見ています。