マンション市場は在庫の山 中古の1割引きも見られるように

バブルが続く首都圏のマンション 在庫過剰で中古マンションから値崩れが始まったとも

記事まとめ

  • 首都圏のマンションは局地的なバブルが続き、新築のみならず中古の価格も高騰している
  • 住宅ジャーナリストの榊淳司氏はバブルを「限界」と指摘、中古の値崩れが始まるという
  • マンション市場は新築も中古も在庫だらけで、中古を売り急いで1割以上値引きあるとも

マンション市場は在庫の山 中古の1割引きも見られるように

マンション市場は在庫の山 中古の1割引きも見られるように

いよいよ都心の不動産バブルも限界に近い?

 首都圏のマンションは局地的な不動産バブルが続き、新築のみならず中古の価格も高騰しているが、「それも限界に達してきた」と指摘するのは住宅ジャーナリストの榊淳司氏だ。新築の完成在庫が増え、中古の値崩れが始まる──いよいよマンション市場は“踊り場”にさしかかっているのかもしれない。

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 マンション購入に悩む人々から「新築と中古のどちらが良いのか」ということをよく聞かれる。しかし、そこに明解な答えはない。新築の場合は一見ピカピカだが欠陥建築である可能性がある。管理組合の運営がどうなるのかも分からない。

 一方、中古のほうが価格は安く、現物を見て決められるため選択肢も多い。しかし売り主が個人の場合は保証が付かない場合がほとんど。また購入する際には仲介手数料が発生する。

 結局、新築と中古のどちらが良いということよりも、物件次第ということになる。

 ただ価格面だけを考えると、中古になる。従来、新築と中古の価格差は都心ではほんの僅かしかなかった。東京都港区の青山あたりだと中古のほうが高くなったりもした。

 この価格差は都心から離れれば離れるほど広がっていく。現在、埼玉県なら大宮以遠、千葉県なら千葉市以遠のエリアでは、新築マンションの開発事業が成り立たなくなっている。その理由は新築と中古の価格差があり過ぎるので、新たにマンションを開発しても販売できる見通しが立たないからだ。

 現在新築マンションを建設するためには1戸あたり2000万円超の建築コストがかかる。しかし、郊外遠隔地に行くと築10年ほどの中古マンションが数百万円から1000万円程度で流通している。そういう所で、販売価格が安くても2000万円台中後半の新築マンションを販売しても、なかなか売れない。だから開発もされていないのだ。

 この新築と中古の価格差が現在、都心エリアにも及んできた。理由は、いうまでもなく局地バブル的な地価の高騰と、高止まりした建築費だ。

 分かりやすい例を挙げてみよう。東京都港区元麻布で販売が続いている、とある新築の超高級マンションは、1戸約157平方メートルで5億1800万円。坪単価にすると約1086万円。目の玉が飛び出るような高値だ。

 一方、同じ港区元麻布エリアで過去1年に売買された中古マンションを調べてみると、同番地の築17年・121平方メートルは1億9300万円、坪単価525万円。隣番地の築10年・112平方メートルは1億7200万円、坪単価504万円。坪単価で比較すると新築の約半分だ。

 現状、港区内の中古マンション市場は、人気の高いエリアでも築10年前後は坪単価にして500万円から600万円が相場観である。しかし、まだそれほど多くはないが坪単価が1000万円を超える住戸を含んだ新築マンションが販売されている。さらに言えば、市場の目には触れないが、坪単価2000万円を超える新築マンションも、富裕層のインナーマーケット向けに販売されている。

 都心における新築マンション市場では、もはや経済的合理性ではまったく説明できない水準まで価格が高騰してしまったのだ。そして、この傾向はまだ当面続きそうだ。

 ただ、このような高額な新築マンションが飛ぶように売れているわけではない。建物が完成した後でも長く販売が続き、最後はこっそりと大幅値引きしたうえで売却されることも多い。

 そういう住戸が表立って値引きを始めたら、いよいよバブル崩壊だろう。ただ、今のところそういった兆しはない。また、これから新たに販売が開始される物件では、さらに価格が上がっている可能性が高い。

 都心エリアの土地価格は今も上昇が続いている。高値で買う企業や富裕層がいるからだ。企業の中身はマンションデベロッパーやホテル開発業者。インバウンドは今後も増加するので、ホテル業界は強気だ。

 マンションデベロッパーも、土地を買わなければ事業が展開できないので、高くても買っている。「マンションの価格が高くなっても売れるだろう。市場は何とか付いてきているから」という思惑だろう。

 ただ、現状を見ると都心の不動産バブルはとっくに限界に達している。特にマンション市場は新築も中古も在庫だらけだ。

 私はここ10年ほど都心のマンション市場を細やかに眺めてきたが、新築マンションの在庫が今ほど滞留していた光景を知らない。また、個人投資家が値上がり狙いで購入した新築未入居のマンションが大量に売り出されている。そして、その動きは極めて鈍い。

 今後、崩れ始めるとしたら中古マンション市場からだろう。現に売り急いだ売り主たちは、売却希望価格から1割以上値引きをしてでも成約に持ち込もうとしている。2015年頃に外国人に“爆買い”されたと思われる物件の売りも目立つようになってきた。

 そうでなくても不動産業界の周縁はスルガ銀行やTATERUを巡る騒動でキナ臭くなっている。業界関係者の様子を見ていても、以前ほど強気は見られなくなった。

 中古市場が崩れても、新築マンションの販売価格は下がらない。高止まりか、わずかながらの上昇もありそうだ。その理由はホテル業者による強気の土地購入が続きそうであり、もう一方の原価である建築コストも下がる気配がない。建設現場はどこも慢性的な人手不足だ。その解消策も見えていない。

 そして、中古市場の下落が始まれば新築マンションとの価格差はさらに広まる。当然、今以上に売れなくなる。マンションデベロッパーは新築マンションの開発がさらにやりにくくなるはずだ。

 ただし、日本人には新築信仰ともいうべき傾向がある。一部の富裕層は、たとえ中古の2倍以上の価格でも新築マンションを買うだろう。だから、数年後には新築マンションは、一部の富裕な好事家向けに供給される趣味的な商品形態となっているかもしれない。

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