ジーユー試着専門店 実店舗が多い巨大チェーンに必要なのか

ジーユー(GU)が『試着専門店』を11月オープン ZARAも期間限定で試着専用店を出店

記事まとめ

  • ジーユー(GU)が東京・原宿へ今年11月に『試着専門店』をオープンさせることを発表した
  • 『試着専門店』には全型商品が揃い、気に入った商品をその場からネットで注文できる
  • 重い荷物を持って帰らなくて済むが、すぐにでも着たい人は間に合わず、一長一短を指摘

ジーユー試着専門店 実店舗が多い巨大チェーンに必要なのか

ジーユー試着専門店 実店舗が多い巨大チェーンに必要なのか

ネット通販の波で店舗のショールーム化は進むか

 低価格のカジュアル衣料品を販売するジーユー(GU)が、“試着専門店”(購入はスマホアプリなどを経由して注文)を東京・原宿にオープンさせると発表した。近年、若者を中心に洋服もネットで購入する層が増えているが、果たして実店舗のショールーム化によって消費者の利便性は高まるのか。ファッションジャーナリストの南充浩氏がレポートする。

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 ジーユーが今年11月にオープンさせると発表した試着専用のショップ。全型商品が揃っていて、店内で触ったり試着したりして気に入った商品をその場からネットで注文し、自宅や最寄り店舗などで受け取る仕組みとなります。

 古くは「クリック&モルタル」と呼ばれ、最近だと「オムニチャネル」と呼ばれる形態ですが、ネット通販に慣れていない人からすると、まだるっこしく、何がすごいのか分からないと感じられると思われますが、最近流行りのネットとリアルの融合した形です。

 目に見えるメリットとしては、たくさん買っても重い荷物を持って帰らなくても良いということぐらいでしょうか。しかし、他方、明日すぐにでも着たいという場合は間に合いませんから、一長一短はあります。

 著者は現時点に限れば、ジーユーにはこのシステムは必要ないと思います。結論から言ってしまえば、今回の出店は将来に向けたテストパターンでしょう。この店舗だけで絶大な効果があるとは考えられませんし、利便性が飛躍的に向上するとも考えられません。中長期的な視点に立った布石だと見るのが適切でしょう。

 そもそも、ネット通販での購入が前提となる「試着専用店」という形態は、ジーユーが開発したものではありません。

 すでに今年5月9日~8月29日まで、ZARAも六本木に期間限定店として試着専用店を出店しています。ではZARAが考え出したアイデアかというとそれも間違いで、元はアメリカ・サンフランシスコに本社を置くネット販売専用ブランド「エバーレーン」が設けたのが最初です。

 では、どうしてネット通販専用ブランドに試着専用店が必要だったのでしょうか。そのメリットとデメリットを考えてみましょう。

 ネット通販のメリットは、インターネット接続されているパソコンかスマホがあれば、いつでもどこでも商品を購入できるのが最大のメリットです。慣れるまではちょっと大変かもしれませんが、慣れてしまえば、電車の中からでも買い物ができます。早朝や深夜でも買い物ができます。

 一方、デメリットは「触ることができない」ことです。これはどんな商品でも同じ条件ですが、とくに肌触りや触感、サイズ感などが重要になる洋服にとっては最大のデメリットになります。

 例えば、ジーンズが画面上に並んでいたとします。ジーンズに限りませんが、Tシャツにしろ、セーターにしろ、各ブランドでそれぞれ生地の厚さが異なります。薄いのもあれば分厚いものもあります。しかし、画面で見る限りでは、その特徴はあまり分かりません。また肌触りも分かりません。生地をたくさん触ったことのある人は何となくそれらを推測できますが、生地に詳しくない人はさっぱり分からないでしょう。

 また、ブランドやデザインによってもサイズ感は異なります。同じMサイズでもピチピチになってしまうブランドもあればダボダボになるブランドもあります。これらはどんなに画像をたくさん載せて言葉で説明しても完全には伝わりません。そのため、実店舗があるブランドとは異なり試着専用店が必要になるというわけです。

 しかし、現時点ではZARAも今回のジーユーもネット通販に特化した試着専用店を増やす必要はないでしょう。なにせ、ZARAは日本国内に約100店舗、ジーユーは300店舗以上あります。どちらもある程度の地方都市にまで店舗があります。どうしても商品が見たければ、店舗まで足を運べば済むことです。

 一方、販売業者側からするとネット通販には、実店舗にないメリットがあります。それは大幅にコストダウンできることです。実店舗だと月々の家賃、光熱費、人件費などが必要になります。10坪や20坪の小型店ならその金額も知れていますが、ZARAもジーユーも大型店がほとんどですから、家賃や人件費は莫大なものになります。ネット通販だとそれらが大幅に削減できます。ですから、各ブランドはネット通販に力を入れるわけです。

 とはいえ、完全にネットに特化した販売でZARAやジーユーのような巨大ブランドが支えられるかといわれれば、それは不可能です。今期2000億円を突破するジーユーはネット通販のみではとてもその売上高は維持できませんし、ZARAとて同じです。

 実店舗が完全に不要かというとそうではありません。でなければ、どうしてネット通販で絶大な猛威を振るうAmazonが米国で実店舗を出店する必要があるのでしょうか。これはネット通販だけでは成長に限界があるからです。

 大きな売上高を獲得するためには、実店舗+ネット通販という組み合わせが必要不可欠。実店舗でここまで巨大になったからこそZARAやジーユーもこれ以上の成長を目指してネット通販の強化が必要というわけです。ネット通販を強化できるのは、実店舗が大量にあるジーユーだからこそともいえるのです。

 今後、ZARAもジーユーも不採算の実店舗を閉鎖し続け、その穴埋めをネット通販で行うことを考えているのでしょう。日本国内でそれを早くもテストしているのが、ジーユーと同じファーストリテイリングが展開する巨大ブランド「ユニクロ」です。

 国内のユニクロ売上高は増え続けており、すでに8000億円を越えています。しかし、その一方で、店舗数はジワジワと減っており、直近だと784店と800店を下回ってしまいました。ピーク時は834店舗ありましたから50店舗減少したことになります。

 店舗数が減少しているのに売上高が増え続けている理由は、各店舗の売上高が増えているか、ネット通販が増えているかのどちらか、またはその両方を実践しているとしか考えられません。

 今後はさらに不採算の実店舗を減らし、その分、ネット通販を強化すると考えられます。それによって売上高を拡大すると同時に、収益性を高めることを狙っているのでしょう。同じ会社ですから、ジーユーに対しても同じ方針を取るはずです。今回の試着専用店の出店はそのための布石ということでしょう。

 ZARAは「売り切れ御免」が代名詞であるように商品の型数・品番数が多くあります。当然、全型数を展開できない店舗も珍しくありません。ZARAほど型数は多くはありませんが、ジーユーにもそれなりに型数が多くあります。今春展開し、9月14日より再度展開するキム・ジョーンズとのコラボラインのように「超大型店」や「旗艦店」にしか入荷しない特別な商品もあります。

 超大型店や旗艦店が近くにない人は、ネットで購入するほかないのですが、いくら低価格品といってもサイズ感や生地の触感を知りたいという人は多数いますから、全型数がそろう試着専用店の必要性はジーユーでもそれなりにありますし、ZARAにもそれなりにあります。

 ただ、原宿や六本木に来られるような人はわざわざ試着専門店に行く必要もなく、東京都心の超大型店や旗艦店に行けば済むので、やっぱり試着専用店での売上高というのはそれほど多くは見込めないと考えられます。

 一方、ジーユーとユニクロがZARAよりも遅れている部分もあります。ここを解決しないことにはいくら試着専門店を作ったとしても利便性に満足はできません。それは店舗とネット通販の在庫が一元化できていないことです。

 どういうことかというと、ネット通販で見られる在庫と、各店頭に残っている在庫は別なのです。例えば、「ユニクロUのカラフルなマルチボーダー柄Tシャツの赤」が欲しかったとして、ネット通販では在庫切れになっているのに、実店舗には残っているということが珍しくありません。逆もまた珍しくありません。

 これはジーユーも同じです。そうなると、ネット通販で買おうと思っても在庫切れになっているので、近隣で在庫が残っている店舗に探して買うことになります。これではいくら今後各地に「試着専門店」を作ったところで、ネット通販の売上高は思うように拡大しないことになります。

 今後、ファーストリテイリングは、ネット通販と各店頭の在庫を一元化する必要性に迫られます。本来のネット通販には在庫切れになっているが、〇〇店には残っているからそちらから商品を取り寄せて送付する、そういう管理が必要になります。試着専門店よりもむしろそちらを急ぐべきではないかと個人的には考えます。

 試着専門店と在庫の一元化、この2つがそろってようやくネット通販売り上げの飛躍的な拡大が可能になります。ジーユーの試着専門店はそれらの課題も見据えたうえでのテストケースといえるでしょう。

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