日本でベンチャー精神が根付かない理由を大前氏が解説

日本でベンチャー精神が根付かない理由を大前氏が解説

農業×ITには大きなビジネスチャンスがある 共同通信社

 今や企業を取り巻く競争環境や顧客ニーズは激変した。新しい技術や新しいコンセプトが続々と登場し、これまでの「成功の方程式」が全く通用しなくなっている。そんな時代に、ピラミッド組織の「ミドルマネジメント(中間管理職)」は無用の長物となっていると大前研一氏はいう。そして、同氏は従来型の企業にいるビジネスマンこそ社内起業家になるべきだと指摘する。

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 日本ではなかなか社内起業のカルチャーが育たないし、そもそもベンチャー精神が根付かない。なぜか?

 アメリカのベンチャーキャピタルに匹敵するようなものがない上、成功したアントレプレナー(起業家)たちが会社に居座り続け、将来有望な若いアントレプレナーを見つけて「母乳を与える」というフェーズに移行していないからである。

 一方、アメリカでは成功したアントレプレナーはさっさと会社を売却してベンチャーキャピタル側に回る。

 代表的な例は、Webブラウザのモザイクとネットスケープを開発したマーク・アンドリーセンとシリコンバレーのカリスマ投資家ベン・ホロウィッツが共同創業者となって設立した「アンドリーセン・ホロウィッツ」だ。同社はアンドリーセンとホロウィッツが自分たちの経験や人脈を生かしてフェイスブックやツイッター、エアビーアンドビーなどに早くから投資し、巨額のリターンを得ている。

 そのようなベンチャーキャピタルが存在しない日本では、人材・資金・技術・ノウハウを持っている大企業が社内起業を奨励・推進したほうがよいと思う。

 ただし、日本企業は社員が成功した時、それに報いる仕組み作りができていない。ノーベル賞を受賞するような画期的な発明をしてもわずかな報奨金しか出さなかったり、子会社を設立しても株式を持たせなかったりしている。

 だが、会社は社員を単なる「employee(従業員)」として見てはいけない。社員が次々と社内起業で新規事業のトップになって“新しい卵”を産んでいく仕組みを作るべきである。

 事業計画ではなく社員が「事業家」として新しい分野を切り開くという気風と仕掛け作りこれが今、停滞した大企業に求められている。そこでは階層社会におけるミドルマネジメントはむしろ障害物、と考えるくらいの発想の転換が必要だろう。

※SAPIO2016年10月号

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