新業態「処方箋なし薬局」に対し行政や病院による猛反発

"処方箋なし薬局"に病院反発

新業態「処方箋なし薬局」に対し行政や病院による猛反発

新業態「処方箋なし薬局」に対し行政や病院による猛反発

処方箋なし薬局は広がっていくのか?

 病院に行って診察を受けないと「きちんとした薬」はもらえない──そんな“常識”に一石を投じる薬局が登場している。実は、基本的に病院で診察を受けないと手に入らない「医療用医薬品」には、医師の処方箋が必須の薬と、そうではないものがある。薬の添付文書をよく見ると、そのことがわかる。

 例えば血が固まるのを抑える抗凝血薬「ワルファリン錠」の場合、規制区分に「処方箋医薬品」と書かれている。一方、風邪薬として処方される「PL配合顆粒」は医療用医薬品であるものの、規制区分には「処方箋医薬品以外の医薬品」と書かれている。

 そのため、こうした薬は処方箋なしでも買うことが認められているのだ。本誌が確認できた限りでは、「病院で出す薬」が買える薬局は全国に6店あった。

 新潟市にある「薬局アットマーク」は、2001年から処方箋なし薬局の業態を始めている。だが、代表の荒居英郎氏に話を聞こうとすると、開口一番「あまり目立ちたくないんです」とした上で、こう続けた。

「開局当時、薬局の許可は保健所ではなく県が管轄で、県のほうからいろいろいわれました。ほとんど閑古鳥が鳴いているような状態の時に職員の方が来られて『いいかげん、こんな薬局はやめればいいじゃないですか』といわれたりとか……」

 大阪市に今年2月に開業した「アリス薬局」は、市販薬に加えて100種類ほどの医療用医薬品も扱っている。薬を販売する際に時間をかけて利用者の病状などを聞き取り、薬の販売だけでなく体質改善指導などを行なうことで顧客増につなげているが、開業当時は苦労の連続だったという。

「オープン直前に『処方箋なしで病院の薬が買える薬局』という看板を出したところ、保健所の職員に『この看板は下ろしなさい』『こういう販売はしないと念書を書きなさい』と指摘を受けました。

 そのあとも5月までに9回、保健所の職員が店に来ました。『こういう業態は倫理的におかしい』といったことをいわれて、法律に違反しているわけではないと説明しても、なかなかわかってもらえなかった。店を潰すわけにはいかないので、お客さんが来た時の応対を見てもらったりもしました。今ではきちんとこの業態を評価してもらえていると思う」(アリス薬局・代表の石井結衣氏)

 どの店舗も行政側とのやり取りに苦労したと証言する。昨年8月に薬局「池袋セルフメディケーション」をオープンした長澤育弘代表はこうもいう。

「保健所との調整にも苦労しましたし、一番大変だったのは卸業者を見つけることでした。卸業者さんにとって病院や医師は大口の取引先です。大手は軒並みダメで、僕が普通の薬局に勤めていたときのツテなどをたどって、やっとお付き合いしていただけるようになったんです」

 ここで浮かび上がってくるのは、行政や病院といった既存の医療をかたちづくる者たちが、新しい業態の薬局を歓迎していないという構図だ。

 元経産官僚で政策コンサルタントの原英史氏はこう解説する。

「処方箋なしで医療用医薬品を売る店が出てきたら、多くの医師にとっては受診しに来る患者が減るので困ります。薬剤師としても処方箋を受け付けることで発生する調剤基本料を受け取る機会が奪われる。新しい業態の薬局の登場は望ましくないわけです。

 役所にとっても今の仕組みは都合がいいはずです。法律で定められていないことを役所が通達などで指導する仕組みは、“OKかどうか”を役所の裁量で決められる状態であり、行政が大きな権限を保持できている状況なのです」

“薬をどう売るか”を巡っては、一般用医薬品(市販薬)のネット販売解禁を巡って医師会や薬剤師会が強硬に反対してきた経緯も記憶に新しい。もちろん、命や健康にかかわる問題だからこそ、慎重な考え方も必要だろう。

 ただ、現行の仕組みや規制は、患者のためのものになっているのか。新たな業態の薬局が投げかける問いの意味は大きい。

※週刊ポスト2017年6月30日号

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